カテゴリー別アーカイブ: 彫刻科

彫刻科 –夏期講習も残り1週間–

昼間部講師の氷室です。
いよいよ夏期講習もあと1週間になりました。今年は、デッサンを集中的に改革していく1週間があり、その後には模刻を強化する1週間が盛り込まれており、着実に重要な実技のレベルを上げることに繋がった様に思います。
濃密な課題を、粘り強くこなし、確実に成長して行く皆さんの姿が、本当に頼もしく感じました!

模刻強化での1週間は、まず、出だしで意識するべき項目の説明を行い、粘土の付け方、動かし方、荒付けまでの段階を、各課題ごとに、主任がデモンストレーションして下さいました。
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その結果が実ったレベルの高い2点の塑像作品を紹介します
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陰影や表情の印象がとても良く、ゲタ独特の内部から感じられる張りをしっかり意識できています。これぞ彫刻の醍醐味ですね!上手いです!切り口にもきちんと気を使えていますね。

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こちらもアムールの表情が良く捉えられています。髪の毛の表現も全体感を損なわず作り込めており、また、しっとりした顔の印象や地味に難しい構造、全てに意識が行き渡っています!バランス感覚が素晴しいです!

さらにデッサンと素描を1点ずつ紹介します
こちらは、現役生のデッサンです
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とても丁寧に描写できており、作者の見ていた視点や空間を、確実に伝えられています。自然にかつ言い切りも強く、その両者を同時に説得出来る完成度の高い1枚です。自然に魅せる様に、知識や感覚を使って組み立てていく、1番大切な事を気づかせてもらえるデッサンです!

外国人素描です
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作者の意気込みを感じます。最初にモデルさんから受けるイメージを着実に絵にしてくる行程には、感心させられました。彫刻の大切な要素のひとつである空間。どこからかモチーフを取り巻く空気が絵に現れて来る瞬間があります。その空気感が見えてきたら、それはもう立派な作品だと感じます。良い素描ですね!

今回の作品紹介は以上です。
まだ夏期講習も1週間残っています。ぜひ、自分に納得のいく実技を目指して、走り切って下さい。

彫刻家の土谷武さんは、こう書かれています。
ものを作るということはー
才能ではなく、選択であり、欲求であり、自分の決意で彫刻家になるのです と。
皆さんも、ここで頑張っているということは、選択してきた道のはずです。
粘り、踏ん張り、自分の明確になった課題に、しっかり向き合って行きましょう!!

最後に、実技以外の一コマを!
新美から見える夕日は、とても綺麗です
その夕日を、課題終了後に眺めてみるー貴重なひとときです。
改めて自然の壮大さに元気をもらいます!
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次回の更新は、稲小川原先生の担当です!お楽しみに!

彫刻科 石膏デッサン集中特訓。

こんにちは。彫刻科の小川原です。もう暑くて暑くて、自分の制作場所はエアコンがないので、暑さとの戦いですが、予備校のアトリエは冷暖房完備で快適でいいな?。大学に行くと彫刻科はそうもいかないので、根性を鍛えておかないとダメですね。

さて、新美彫刻科の夏期講習は石膏デッサン集中特訓コースに入っています。ここまでの作品でなかなかいいなと思ったものを紹介します。割りと数があったのですが、今回はバリエーションということで2人づつ違う人のを見てもらおうと思います。

ヘルメス。
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ドラマチックな光源設定が格好良いです。顔もよく似せて来ていますね!切断面の形が単調になってしまっているのが惜しいところですが、実力を感じさせる1枚です。

1現役生の作品です。粘り強い探りが魅力的です。探ってできた表情がヘルメスによくあっていますね。頭部の空間がもう少し背景に抜けてくれると更に良かったと思いますが、現役生らしからぬ完成度の高さに驚かされます。

ジョセフ。
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上手いです。ここまでくると特に言うことはないです。この作品がどうこうと言うより、このレベルで安定出来れば回りは絶対追いついてこれないと思います。がんばろう!

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この人だから描けるこのデッサン。という感じの個性のあるデッサンです。実際に触っていくような探りが見ている側も触覚的な感覚で見させられます。どんな像でも最終的には「魅力」があるかどうかが大事なので、見失わずモチーフと向き合って下さい。

さて、僕もまた描きました。ブルータス。
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描き出しでは徹底して構図やプロポーション、動き、全体の印象、明確な光源設定を心がけましょう。上手い人ほどこれらの要素を同時に高いレベルでコントロールできます。逆に慣れないうちは多くのことを同時に考えるのは難しいですが、何かが抜けている状態で進めてしまうのではなく、上の項目がきちんとできているかは一つ一つ確認しましょう。出だしがうまくこなせるかこなせないかがほとんど全てだと思います。

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ガーゼを使って空間を出していきます。ベースとして全てがザラ目では奥行きが出ないので、場所に応じておさえ方を変えながら質を変えていきます。

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ガーゼでつくったベースの上にどんどん形を構築していきます。顔は100%似せましょう!顔はデッサンの命です!顔がショボいと評価する側も萎えてしまいます。僕はこの段階で光と陰が響き合いを持つように心がけています。あと、これは自分の作品の方向性として、見ているモチーフはあくまで石膏像なのですが、描いている作品は本物の大理石のブルータスをイメージして描いています。「リアリティ」に対する考え方として、目の前にあるものが答えではなく、もっと上のものを目指しているのです。
ちなみに本物のブルータスを見たことはありません!!  笑

完成
完成です!隙のない完成度を目指します。製作時間は3時間です。最近描く速さが以前より速くなり、かつ正確になりました。手の動きは音速を越えようとしています。 笑

さて、夏期講習も折り返しです!夏の暑さに負けず、どんどん上達していきましょう!受験は夏が勝負です!

彫刻科 夏期講習会はじまる。

こんにちは!彫刻科講師の稲田です。今週から夏期講習会がはじまりました。
まだ、天気は良くない日が続いていますが彫刻科はみんな元気に制作に取り組んでいます!!
普段、昼間部と夜間部はなかなか一緒に制作する機会はないですがお互いに刺激し合いながら夏が終わる頃には「夏の思い出は新美の彫刻科で制作」と胸を張って言えるように講師共々制作に打ち込みましょう!!
講習会初日は、小川原先生によるデモンストレーションからはじまりました。

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デッサンの大切な要素の確認、いろいろな見方からなる進め方等講師の僕もなるほどという内容でした。生徒のみんなにはどのくらい伝わったでしょうか。

こちらは授業風景↓
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講習会はじめの課題は「奴隷」木炭デッサンでした。中でも質の高いデッサンが出来上がってきたので紹介します。
昼間部生の石膏デッサン「奴隷」

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作者は立ち上がりから完成が見えているように段階ごとにどんどん奴隷の印象を引き出して描き進めていた姿が頼もしかったです。
しっかりとそこにある形を描きながらも空間を損なわず、奴隷の持っている構造、動き、量感に反応出来ています。作者の持ち味が遺憾無く発揮された一枚ですね!

今回紹介するのはこの1枚だけですが、生徒全員が1学期末のデッサンよりも成長を実感出来た課題になったのではないかと指導していて感じました。
この後の課題も絶えず、挑戦していきましょう。そして失敗しましょう!失敗がないというのは一見いいように感じますがそれは違います。自分にとって未知の領域へ踏み出すときはどんなに綿密に計画を立てても失敗は付き物です。失敗の先にしか成功はありません。今から守っていては駄目ですよ!

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失敗繋がりですが、この画像の作品は僕が今制作している木彫の作品です。わかりにくいですが頭部の荒取りを失敗して寄木しています。完璧だと散々シュミレーションして荒取りをチェーンソーでしていくのですが毎回どこか失敗します‥僕の見切りの甘さといってしまえばそれまでなのですが、、ただ、毎回何かしら新しいことを取り込んで前回とは違う作品を作っていくということを大学を出てから自分の作品制作の1つの目標にしています。今回は失敗するんじゃないかと何回も頭に浮かびます。実際失敗します、ですが大抵1日経てば立ち直ります。新鮮さと失敗はセットだと思います。
自分の作品にいろんな意味でドキドキしながら制作出来ると最高ですね。

 

 

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最後に展覧会のお知らせです。東京都美術館で「木々の対話 再生をめぐる5つの風景」という展覧会が開催されます。会期は2016年7月26日(火)ー10月2日(日)です。木を素材に制作されている5人の作家さんが出展されています。彫刻科の学生にとっては彫刻の作品にふれる良い機会です。夏期講習会で忙しいですが時間を作って是非みにいきましょう!!

では、今回はこの辺りで失礼します。次回は小川原先生です。お楽しみに!!

彫刻科 1学期も残りわずか

彫刻科の氷室です
いよいよ1学期も残りわずかになりましたね。夏期講習に入ると、さらにカリキュラムが濃密になり、受験まであっという間だなという印象があります。
新美では色々な課題に挑戦してきました。その成果もあり、1学期後半から昼間部生も夜間部生も、実技が1歩伸びている様に感じます。
今週末に行われる合同コンクールもその成果を出せる機会なので、みなさん頑張ってください!

ここで1つ、舟越保武さんと佐藤忠良さんの対談集から、面白いなと感じた文を紹介したいと思います。

舟越さんー
後ろがたいてい、いい加減になってしまうという傾向が僕はもともとあったから、最近は人の顔を作る時には後ろを先に決めちゃう。前にかかると、どうしても後ろがおろそかになっちゃうからね。後ろから見て、ああ、似ているな、と思うように作る。
だから街の中の雑踏で、知らない人の後頭部を見て、今作っている首の人に良く似たおじさんだな思ったりすることがあるんだ。後頭っていうのはそんなに意識の中では記憶にないはずだけど、この後頭は今作っている男と首と同じだな、と思ったりする。後ろには目も口も鼻もなにもなくて、ただ凹凸だけあるけれども、無意識の中によく見てるもんだね。前へ回ってみると、だいたい同じ様な顔をしている。
省略
佐藤さんー
彫刻っていうのは終始デッサンだけで組み合わせていってるだけと言ってもいいと思うんだ。塑像の場合は土でデッサンをしている。とったりつけたりの自由がきく分だけ試行錯誤の繰り返しも多いが、色彩頼みのできない分だけ粘土の不愛想さと闘うよりしょうがないものな。

という内容です。
みなさんがまさに、予備校で直面している、また考えなければならないことを、お二人も真剣に考えていらっしゃったのだなと、また、巨匠と呼ばれる方を身近に感じた瞬間でした。

さて、ここからは作品の紹介です。今回は3点あります。

グレー色の紙に白い描画材を基本に使い、石膏デッサンをしました。
普段描く石膏デッサンとは逆で、光が1番強くあたっている形から描き起こしていきます。普段は残しておく部分にもしっかり形があることが分かりますし、光がどの様に当たっているのかを別の角度から再度認識することができます。
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粘り強く丁寧に、形に反応して追うことが出来ています。しっとりと、そこにある形を感じます。印象も似ていますし、このデッサンを見ながら、模刻が出来そうです。

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アムールは、動きが静かでなかなか難しい像だと思うのですが、動き、構造、量感 この3大要素をしっかり感じさせる彫刻的な眼で捉えた、優秀な1枚です。寡黙に像の力強さを語っています。

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この作品は現役生の作品です。模刻、字のごとく、です。まずは、しっかり観察して見えた様に作ってみる。知識も大切ではありますが、色々な角度から見て、そこにあるモチーフに素直に反応していく。この基礎が最後にはものを言います。どんなに慣れてきても、どんなに作れる様になっても、いかに新鮮に対象を見ていくか。そこに見る人は反応するのではないでしょうか。
このブルータスの模刻も、作者の真剣さを感じますし、とても魅力があります。知識量では浪人生にかないませんが、素直に見てここまで作れるパワーには頭が上がりません!

今回は、以上です。

次回のブログ更新の時にはもう夏期講習に突入していますね!夏期講習が、1番伸びる時期です。
新美では、模刻における心棒の作り方や、見方などはもちろん、様々な課題に於いて、再度基礎を確認し、必ず上達できる夏になる様にカリキュラムを作りました。
夏期講習は、7月20日からのスタートです。
(各課題の底上げ実力アップを目指し、6期に分かれてカリキュラムが組んであります。詳しくは新美のHPで確認できます)

ここで一気に上達すべく、攻めの夏にしていきましょう!!

次回のブログ担当は稲田先生です。

彫刻科、1学期後半へ!

こんにちは!彫刻科の小川原です。新たに1年始まるって時は入試まで長く感じたりしますが、実際始まってみるとあっという間に時間が過ぎていってしまいますよね。そんなにすぐに上達するわけではないので焦りだす頃でもあります。新美彫刻科では今年の目標を「見る力を鍛える」に照準を合わせ、4月から集中的に練習してきました。その成果が徐々に出てきた感じが見て感じられるので、これからの成長が更に楽しみになってきました!昼間部はさすがの実力を見せてくれますが、夜間部も今年は素晴らしいです。課題を追うごとにメキメキ上達していてこちらも指導していて面白いくらいです!この調子で1学期後半戦も気合を入れて頑張っていきましょう!

さて、今回の優秀作品の紹介です。
昼間部、自刻胸像。この課題は物量に対して短い時間設定でしたが内容の濃い作品も出てきました!
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凛とした雰囲気が魅力的な作品です。日常の1コマを感じさせるようなポーズの選び方も良いです。

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シンメトリックな構成で、静かなイメージに表情もよくあっています。作者の内面も感じ取れそうです。
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動きのあるポーズですが、人体として自然に作れているところがとてもよいです。顔の造形感も形態感に反応できています。
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自分というテーマに向き合って、これから何かを乗り越えていく意志の強さを感じる作品です。この作品にかける思いも感じ取れます。

それでは夜間部生の作品です。
ヘルメス。
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現役生とは思えないレベルの高さを感じます。モチーフに対する素直な見方と、それを画面に置き換える技術と、その両方に対して妥協すること無くやりきっていることに好感が持てます。

自刻像。
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初めての自刻像です。人間として自然な形になっている以上に生身のリアルさも感じ取れます。髪の毛の扱いも魅力的です。

自画像。
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この作品は制作中後ろから見ていて飽きさせない進め方をしていたのが印象的でした。何が面白かったかというと、とにかくメチャメチャ乗りに乗ってかぶりつくように描いていたことです。自らどんどん魅力を発見し、それを画面に詰め込んでいく行程に楽しさを感じて取り組めていました。技術の高さも作品を高める重要な要素を持っていることに変わりないですが、それ以上に「自分のこうしたい、を形にすることを素直に目指す。作品をつくるってこういうことだよね。」って改めて感じさせてくれた、そんな作品です。この感覚を大事にしながら成長していって欲しいです。

今回僕はヘルメスを描いてみました。今回はいつもと違う描き方をしています。どんなテーマで描いたかというと、「調子で形を模刻する」です。受験で石膏デッサンを学ぶと、セオリーから入って、ベースの形の重要性について説かれます。短時間で描き切るにはそれが一番手っ取り早いし、間違ってはいないですが、じゃあ最初から大きな構造も細部も全てベースとして描いていったらどうなのかなと言うのと、(ベースの作業を形式的に単純化せず、はじめから見た目通りうに描いていく)できるだけタッチに頼らず、色の変化を利用して形に起伏を作っていく(模刻するように)という考え方で描きました。
1段階目。描き出しでは慎重に印象を捉えていきたいです。
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2段階目。日なた、日陰を分けて、調子を乗せていく計画を立てます。
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3段階目。色幅を増やして実際的な印象に近づけていきます。
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4段階目。ガーゼやサッピツ、消し具はとりあえず置いておいて、細部も含め、調子を乗せ切ります。スカスカしないように詰める感じで。この段階で1回完成させる気持ちです。できるだけ短時間で。
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5段階目。ガーゼで奥行きに差をつけます。
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6段階目。どんどん描き込んでいきます。
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7段階目。そのまま描き込んで完成。
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まだまだこれからですが、4時間で区切りました。いきなり大きく変化したところは無かったと思います。常に今やっている作業の延長に次の作業が生きてくる積み重ねの感覚で描きました。基本的には特別なテクニックがあるわけではなく、よく見てよく描くというだけなのですが、ちゃんと一つ一つの作業が印象に反応して手が動いているということが重要です。
去年辺りにこの考え方で実践してみているのですが、いわゆる受験的なデッサンの描き方の延長で描いていた頃に対して、同じ時間で完成度がより上げられるようになりました。
とりあえずこの描き方は「受験的」ではないので、まずはセオリーをしっかり理解し、こなせるようにしておいて欲しいです。最終的にはどんな描き方であれ、自分なりに明確な理論に基づいたプロセスを手に入れて欲しいです。

さ、1学期後半に向けて頑張りましょう!