カテゴリー別アーカイブ: 彫刻科

彫刻科です

彫刻科講師の氷室です。
梅雨があけ、いよいよ夏の到来を感じる暑さが続いていますね。
1学期も終盤です!
彫刻科では学期末コンクールがあります。まずは1学期の成果を自分で冷静に見つめる機会にしたいですね。そして夏期講習に備えてください!

話は変わりますが、最近、ヘンク・フィシュと言うオランダの作家さんの展示を見にいきじんわりと感動しています。
(ワコウ・ワークス・オブ・アートにて14日まで開催されています)
人体彫刻をその固体だけでなく、空間を必然的に巻き込んで表現し、発する何か”をその場で感じられる、そんな作品を作る事ができたらいいなと感じました。
久しぶりにアメリカのジョージ・シーガルやイギリスのアントニー・ゴームリーが改めて気になってきました。

ある本に、アーティストの可能性のひとつに、触覚・視覚・思考をユニークな形で全部つなぎあわせていく
と書いてありました。
私の中で色々なことがつながって、納得のいく作品に辿りつけるといいなと思う今日このごろです。

さて、話を戻しまして、最近の優秀作品を3点紹介させてもらいます!

もうとにかく、奴隷をこの様にしっかり作れることが、どんなに凄いことか…と感じます!
大きいですし、ミケランジェロの作品に迫ることの難しさと言ったら、単に写すだけの領域を越えて行かねばなりません!レベルの高い模刻です!


首から上がやや押さえられていますが、円盤の特徴を素直に良く感じ、描けています!
そして、形と色味にも反応出来ており、その強さゆえつい絵を眺めてしまいます。


本人の勢いを感じる1枚ですね。逆光ですが、貪欲に形を追っていく姿勢が強くて魅力があります。円盤を持っている動きが想像できる彫刻科らしい視点がいいです!

今回は以上です。

これからが、1番伸び時です!
これだけ目標がはっきりしている中で、集中して勉強が出来る環境は本当に貴重だと
振り返っていつも感じます。
インプットしてアウトプットする!!
充実の夏期講習を迎えましょう!!
夏期講習までの休みの期間にも、是非積極的に、展示や美術館にも足を運んでみてください!

石膏デッサン考 Part3

?今日は、全科総合部です。今回は、工芸科主任の高澤先生をお迎えしました。

?進行(阿部):東京芸術大学工芸科の実技一次試験では、石膏デッサンが課せられますが、
他の科と違った何か特徴みたいなものはあるのでしょうか?

?高澤先生:そうですね、基本的には他の科と同じ“形”“動き”“構造”というのはもちろ
ん求められています。工芸科に特化したのものでよく言われるのが“抵抗感”
です。像に触れる感覚で、できれば質感が感じられるぐらいの完成度は、欲
しいところです。

また、描く紙も他の科とは少しちがう紙を使用するのも工芸科の特徴かもしれ
ません。ハクゾウ紙と思われる紙は、目が細かく和紙っぽい繊細な紙で描くの
で、その紙に反応し、合う鉛筆の調子を見出さなければなりません。素材を大
切に扱う工芸の世界とも似ているところがあります。それともう一つは、構図
に関しても他の科よりも厳しいかもしれません、ベーシックな意味で。

?進行(阿部):昨年、全科全学年対象の石膏デッサンコンクールを新美で開催しましたが、
1番が工芸科の方でした。

?高澤先生:どの科でも、わりと基本的なところで共通していたと、いう結果ではないでし
ょうか。“形”や“動き”“構造”は、はずせない石膏デッサンの要ということです。
最近の芸大工芸科での傾向としては、少しデザイン科よりになってきた印象が
あります。というか、そういう受験生が増えてきたようですね。

?進行(阿部):確かに、その感じわかります。

?高澤先生:しかしデザイン科とどうしても違うのは、光線の具合ですね。芸大工芸科では、
試験を実地する教室の環境がデザイン科とは違うのですよ。自然光というより、
いろいろな光のあたり方をする場合が多く、光を追っていくと迷うようなこと
もあります。なので、光がどうであろうと絶対的な形を追っていく必要があり、
むしろ光は自分でコントロールできないと厳しいと思います。

?進行(阿部):それが工芸科の特徴の1つになるわけですね。

?海老澤先生:そういえば、日本全国の高等学校教育では、光(調子)より形のほうを優先する傾向があることを思い出します。

?進行(阿部):という、いいところですが、続きはスペシャル・サマー・セミナーにてお願
いします。ありがとうございました、お疲れ様です。

引き続き、スペシャル・サマー・セミナーでお楽しみください。

お申し込みは、こちらから!!

?

7/8(日)推薦入試説明会

こんにちは。
7/8(日) 16:30より、新宿校にて「美大 推薦入試説明会」を行います。

近年、美術大学でも多くの学科で推薦入試やAO入試が実施されています。
推薦入試の内容は多岐にわたります。場合によっては一般入試よりも難易度が高いこともあり、正確な情報をもとに、早い段階から準備することが求められています。
新美では、一般入試と並行して推薦入試対策に取り組み、これまで多くの受験生を指導してきました。

当日は全体説明と個別での相談にもおこたえします。
また合格者の作品ファイル(ポートフォリオ)の展示も行います。
受験生、保護者様、高等学校教員の皆様を対象としています。
申し込み不要ですので、ぜひご来場ください。

石膏デッサン考 part 2

こんにちは、全科総合部です。
今回は、彫刻科の先生と油絵科の先生、スパー講師とレジェンド講師の対談です。
石膏デッサンについて、それぞれの見解をそれぞれの立場で語ってくれました。
今までにない貴重なテキストです。永久保存版です。

「 石膏デッサン考対談 」 小川原先生 vs 海老澤先生

?小川原先生:先天的に、石膏デッサンが最初から上手な人がいます。でもそれは稀で、ほとんどの
人が“上手くない”から始めます。なので芸大入試の石膏デッサンにおいてもごく一
部の受験生を除いて“上手くない”から描き始めますが、最後まで“上手くない”
人は、構図・形がズレているまま描き進めてしまっています。

?進行(阿部):入試の場合、決められた時間の中で仕上げないといけないので、焦ってそうなって
しまうのでしょうね。

?小川原先生:ほっといても受かる人はどの科にもいるのでしょうけど、ほとんどの合格者は他者と
競って受かっていきます。受かる人と落ちる人の差がどこに
あるのか?その一つに
「描き出し」があるのではないかと考えます。

?進行(阿部):そこでクロッキーに行きつくわけですね。

小川原先生:そうです、受かる人はクロッキー的に石膏像をとらえています。デスケル(デッサ
ン・スケール)を覗いて点をとってつなげて形をとってい
る人は、形も合わず、直す
力もつきません。

?海老澤先生:デスケルを使用したからといって、上手くなることはないですね。デスケルで形を合
わせるのは理論上で、デッサン力とは違います。

?小川原先生:細部にとらわれ過ぎず、シンプルに形体をとらえるにはクロッキー力を鍛えるのが一
番。そのことにより大きな構造感を意識することができるように
なります。むしろ細
部は、全体感ができるまで描かないつもりでもよいかと
思います。どれだけ視野を広
げてクロッキー力をつけ、他者に差をつけるこ
とが合格につながるのではないでしょ
うか。

?

進行(阿部):「描き出し」には欠かせないのが構図をとることですが、海老澤先生はどうお考
でしょうか?

?海老澤先生:石膏デッサンの歴史の中で決まっている「構図」というのがあります。その意味から
理解しないと勉強になりません。そうしないと、自身の作品等に応用もできません。
例えばフェルメールという画家の作品では、人物が小さく描かれていてもリアルな大
きさは感じられます。メイプルソープとう写真家は大理石の彫刻を撮った作品もあり
ますが、クローズアップして彫刻の魅力を出しています。特に油絵科の場合、石膏像
の模写ではなく、「あなたの感性で、石膏像を描きなさい」という意味合いで入試に
出されることが多いようです。ルールどおりだと、かえって主張が弱いとまで思われ
るふしもあるくらいです。
でも、決められた構図もいい構図のひとつであることも確
かです。
 

?小川原先生:彫刻科の入試でも、思いがけず構図が小さくなってしまったものは論外ですが、敢え
て小さく入れたものでも、力があれば認められると思います。
石膏像に他のものを組み合わせたりしたモチーフが時々でたりしますが、そうなると“石膏デッサン”というより、“静物デッサン”として構図をとります。なので、石膏像の台座まで入れることが多いです。むしろ入れないと「彫刻的」でないとみなされて、減点の対象になります。

?海老澤先生:油絵科の入試で何が大事かと問われれば、ハートが大事ではないかと私は考えていま
す。そうなると、構造が大事とも細部が大事とも調子が大事ともい
えるし、どれもいえないともいえます???要は、人それぞれ違うのです。たとえば、雰囲気が大事な人は、形を出しすぎると損なわれることもあるので、形を犠牲にすることもあります。

?小川原先生:それに比べると彫刻科はストイックですね。調子でいうと、明るさの中の形も白くと
ばしたりはせず、形を追っていきますし、暗さの中も潰さず追って
いきます。

?進行(阿部):とはいえ、彫刻科にも感性的なところもあるとお聞きしたことがあります。

?小川原先生:そうですね、敢えていうなら、石膏像が写真のようにそっくりでなくても良い点です
かね。形のくるいの中でも、あっても良いくるいとダメなくるいが
あります。わざわざくるっているのが良いというわけではありませんが、構造からくるくるいは許せません。

?海老澤先生:わかります、ロダンの彫刻を思い出しました。ロココ調の彫刻は綺麗ですが、いまい
ち表面的な場合が多い。その一方、ロダンは構造的な形は言い切りが
強く、説得力があります。表面的なくるいではなく、良いくるいですよね。クロッキーもしかり。

?進行(阿部):奥深くなってきましたが、今回はこのぐらいで、続きは「スペシャル・サマー・セ
ミナー」石膏デッサン強化ゼミでお願いします。有意義な意見いただきました、ありがとうございま
した。

?お疲れ様でした。

まだまだつづく、
7月15・16日、スペシャル・サマー・セミナー「石膏デッサン強化ゼミ」の申し込みはこちらから!
是非、おまちしております!

こんにちは、彫刻科の新妻です。
今年度が始まってもうすぐ3ヶ月、怒涛の夏期講習が近づいてきましたね!
じっくりと時間をかけて作品を作る事ができるこの時期は、基本的な実技力と取りこぼしている要点をおさえる事が大切だと思います。また浪人生ほどたくさん実験と失敗を繰り返して実技の引き出しの幅を広げましょう。夏を迎える前に、出来てることと理解が足りていないことの確認をし、現段階での自己ベストを夏前のコンクールで叩き出せるといいですね!

それでは最近出た預かり作品を一部紹介します。塑像3連続!

自刻像

印象を捉えるのが得意な作者でしたが、雰囲気だけではない作りこみまでじっくり調整出来たことで、よりスキのない作品になったと思います。粘土でできてるけど爽やかさがありますね!

静かな表情の中に強い意志を感じる佇まい。。いいですね。地道な形の観察と、目や髪の毛などの表現がうまくまとまっています。

続いてブルータスの模刻

作り始めから完成までの間であらゆる要素を気にしながら短い時間で印象を近づけていく模刻課題はシンドイ作業ですが、安定して対象に迫りながら高いレベルで仕上げられています。

 

着実に力をつけていっていますね!そして、まだ切羽詰まっていないこの時期に、是非色んな作品を観て作品を作る人としての見聞も広げていってほしいと思います。そこで最近観て面白かった展示を一つ紹介します。

六本木、complex665にある小山登美夫ギャラリーで開催されている菅 木志雄展。「もの派」(※1)と呼ばれる動向の初期から活躍されている作家です。
一般的な意味でのいわゆる技巧的な凄い作り込んである?!という表現ではなく、むしろ素材の持つ特性を活かすために加工は最小限に留め、モノとモノとの関係性、空間との関係性を突き詰めていく作品を思考されていると感じます。しかし特に予備知識がなくても、その場に展開されているコンポジション(※2)に身を委ねるだけでも面白い展示です。芸大二次試験の彫刻1の課題に苦手意識がある人は、「構成」について深く考えるヒントがあるかもしれません。

※1・・・60年代末から70年代初頭にあらわれた日本美術の動向。作家たちは石、木、紙、綿、鉄板といった素材をほぼ未加工のまま提示し、ものの存在自体、あるいはものと周囲との関係に意識を向ける作品を制作した。もの派最初期の作品として68年に関根伸夫が制作した「位相ー大地」などが有名。
※2・・・「構造、組立」を意味する言葉であるが、美術用語としては「構図」とされる。語源はラテン語の「構造(Compositio)」。

菅 木志雄
広げられた時空
小山登美夫ギャラリー 2018年5月25日~6月30日.日曜月曜祝日休廊
11:00~19:00  入場無料
http://www.tomiokoyamagallery.com

上記であげた展示に限らず、「こんな彫刻表現もあるんだ!」という経験をたくさんする事で、「では自分は何を表現するのか?」という問いが生まれ、日々の制作に、より鋭敏な感覚が足されていくのではないでしょうか。
というわけで、、、
手前味噌ではありますが、現在新妻もグループ展に作品を出品しております!「日常にアートを届ける」をテーマにした小品展で参加作家41名、総作品数100点越えのバラエティに富んだものになっています。お近くにお越しの際は是非お立ち寄り下さい!

「small works 2018」
ガレリアグラフィカ
6/18?6/30.日曜祝日休廊
11:00?19:00(最終日17:00まで) 入場無料
http://www.galleriagrafica.com

そしてそして、さらにその翌週から同じく彫刻科講師の氷室先生の参加する、いりや画廊でのグループ展も始まります。
いりや画廊はその名の通り台東区入谷にある、彫刻家の展示を多く企画しているギャラリーです。こちらも楽しみですね。

「壁11㎡の彫刻展Ⅲ」
いりや画廊
7/2?7/14.日曜休廊
11:30?19:30(最終日16:00まで) 入場無料

https://www.galleryiriya.com

暑かったり寒かったり雨降ったり体調を崩しやすい気候が続きますが、よく食べよく動きよく寝ましょう!
それではまた!