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彫刻科:新学期スタート!素描の春

こんにちは、彫刻科講師の新妻です。今年度もよろしくお願いします。

今年は以前無料体験で来てくれた人、基礎科生だけど一足先に受験科に混じって制作に取り組む人、今年度からの新入生、昨年からの経験豊富なベテラン勢とフレッシュ現役生と、彫刻科のアトリエは例年になく春から活気づいております。

春期講習から新学期はデモストを見てもらいながら、何に気をつけながら作ったり描いたりしてるのかを伝えつつ、それぞれの制作に取り組んでもらう機会が多いです。基本の確認と共に、今の時期だからこそできるチャレンジや価値あるものを目指して制作するマインドを育んでいきましょう!

 

春は特に総合的な素描力の向上を重視したカリキュラムになっています。対象がどんなものであったとしてもその魅力を引き出し表現する力は作品を作る上で大切だと思います。

では生徒作品の一部をご紹介します。

「自分の靴を描きなさい」

コンバースの生地のヨレ感やソールの溝、靴紐の重なりなどじっくり迫っています。

エナメルの光沢が伝わってきます。黒の色幅の引き出しがふえましたね!

まさかの下駄!構造は単純ですが、色味の幅や接点、質感など欲しい情報の見え方が適切です。

「コーヒー樽と綱」

序盤で形の修正をしっかりしたおかげで後半の描写でグイグイ絵が魅力的になりました。

各モチーフのあらゆる箇所に気遣いとこだわりを感じます!重さまで伝わってきます。

「鳩」

動物は常に動いているので、見て形を描く意識だけでなく、観察した情報からそのものらしさや骨格理解を自分で紙の上に再構成することが求められます。鳩の自然な佇まいが無理なく表現できています。

「ブルータス」

描き出し特訓の中の一枚です。この段階でブルータスをビンビンに感じる秀作です!

観察したものを余すことなく描いてやるという気概を感じます。見えない後頭部へとつながっていく形態の自然さと、衣の中の身体を感じさせられるとよりgoodです。

表情ハマってます。掘りかけのの頭部のはつりあとや、曖昧になりやすい衣同士の接点なども横着せずとらえていて好感がもてます。やや右肩が落ちるタイミングが早い感じがするのと、強い黒の采配をもう一段調整できるといいですね。

自主的に夜間残って描いた背景付きラオコーン。去年よりも自由に使える時間が増えた分貪欲にやりたい課題にチャレンジしてほしいです。ネックだった顔の印象も改善しましたね!

ここからは夜間部生(高3、高2生)の作品です。

「薪の束と針金」

今までなかなか踏み込めなかった細部描写やカリッとピントを合わせる仕事ができました!持ち前の形態感の強さや探りも効いています。

高2でこんなにいろんなことのバランスをとりながら描き上げることができるのが驚きです!アドバイスをこまめにメモする姿勢も貪欲でナイスです!

 

最後は昼間部生の1人、すっかりルーティンとなった人物クロッキーの一部を。

線が走っていますね〜!昨年から段々と捉え方や表現が洗練されてきました。デッサン、塑像にも確実に良い効果をもたらしています。

続けること。単純なことのようで小さな積み重ねが大きな気づきと自信へと繋がっていきます。

今回は以上です。気温差が激しいので体調崩さぬように!

彫刻科 芸大合格者入試再現と合格体験記

こんにちは!彫刻科の小川原です。

新学期が始まり、皆エネルギッシュに制作に取り組んでいます!一つ一つ確実に身につけていきましょう!

twitterでも紹介しましたが、前回の芸大入試の合格者入試再現作品が完成しているので作者の合格体験記とともに紹介します。

ちなみに入試課題はデッサンは「ヘルメス」塑像は「自身の手を与えられた紙袋と組み合わせて内と外というテーマでつくりなさい」でした。

私は別の予備校で4浪しました。もういいと受け入れ、他の大学に1年入学しましたが、そこでもまたいろんな思いを感じることになりました。

やっぱり諦めきれない思いを抱き、環境の変化に弱い自分への対策として、試験3週間前に新美に行きました。いきなり来た自分に対して新美の先生は温かく受け入れて下さり、そして熱く、冷静に私の不十分だった箇所を指導してくれました。

課題ごとに合わせた先生方の論理的な指導は、私の中の散乱してしまっていた思考を少しづつシンプルでより強いものにしてくれました。

受動的ではなく、能動的に、当たり前のことを当たり前にできるようになって、今までとは少し違った気持ちで本番に臨めました。

結局、傾向と対策をきちんと自分の中で立て直すこと、何かを選んだ際にその他の選択肢を全て捨てて、選んだことだけに淡々と集中すること、新美の先生が教えてくれたこれらが本番で自分の支えとなり落ち着いて作品を作ることができた理由なのだと思います。

私の沢山の拗らせた思考を整理するのに新美はぴったりの場所でした。5浪してもなお理解が乏しい箇所を見逃さず指摘し、わかりやすく基本的な事を教え直してくれた先生の方々に本当に感謝しています。ありがとうございました。

 

「浪人生活を楽しむ」これは私が去年、予備校とそれ以外の実生活を互いに豊かにしていきたいと思い立てた目標でした。私は結果的に満足のいく形で受験を終えることができましたが、それまで多くのものに支えられてきました。ここではその過程で感じたことを書こうと思います。

まず環境の大切さです。新美の環境で良かったと思うのは、生徒が比較的少人数で、他者とその作品に距離を感じないことです。色んな作品や感性を身近に感じられることが楽しく、新美での浪人生活においてそれが何よりも私を前に進ませました。新美ならではの手厚く寄りそった指導も、自分と作品をいやがおうにも向き合わせます。芸術を志し、美大を目指す人に囲まれて制作するのは、そうでない人たちと制作するよりも有意義で濃密です。新美に通うことで、”やはり藝大を目指したい”という気持ちは強くなっていきました。

予備校外での実生活においては、受験生であるということより日々をどう楽しく過ごすか、つくりたい作品のイメージや純粋に彫刻とどう付き合いたいかを考えていました。今にして思えば、制作した時間というより関わってきた時間が私にとってとても大事なものだったように感じます。私は面倒くさがりでしたが、ただ興味さえ尽きなければそれが良い作品に繋がりました。

また、私は高3の直前まで進路に悩みましたが、興味のあった彫刻科へは高2の講習中から受験科にお世話になっていました。数をこなすだけでは上手くなりませんが、その積み重ねは確実に実力に繋がります。浪人中、彫刻ともっと早く関われていればとよく思いました。

最後に、一人で制作しているだけでは私は絶対にここまで来られなかったと思っています。他者あっての自分の作品であり、制作の中で同じ学年の人のみならず先輩や後輩、尊敬する先生方からも多大な影響を受けていると思い知らされました。今は新美で学べてよかったと心から感じています。常に親身になって上達の手助けをしてくれた先生方、飽きっぽい私を前進させてくれた予備校の方々、私のやりやすい環境を整えてくれた家族や友人にとても感謝しています。今まで本当にありがとうございました。

 

サボる事へ向けての努力を常に続ける。

塑像課題の前日の夜に粘土を練っていた事

朝早く来て場所取りをしていた事

夜間残って課題をこなしてた事

果ては毎日休まず予備校に通った事等々

これらは「サボる」ために行っていた。

朝に粘土を練りたくない

描きたくない位置でデッサンを描きたくない

入試直前で形の狂いを残したくない

全ては浪人生活を今年で終わらせたいの一心である。全ての行動の原点は「面倒くさい」なのだ。

近道は無いが、かといって遠回りする必要もない。泥臭く、かつ悪賢く頑張っていこうと思う。

 

 

合格者3名とも、なんとなく予備校に来てなんとなく課題をこなしてきたというわけではなくて、それぞれ自分の中に「芯」を持って受験と向き合ってきたのだなということが伝わってくる体験記でした。僕ら講師はどんな生徒であっても全力で教えます。しかし本人がどのようなスタンスでそれを受け取ってくれるかということが僕は一番重要だと思っています。
受験は講師と生徒の二人三脚です。皆さんがついてきてくれさえすれば、合格は見えてきます!がんばりましょう!

 

 

彫刻科 ラストスパート!

こんにちは!彫刻科の小川原です。入試直前講座もあっという間に試験間近になりました!

入試に向けての意識も最高潮に高まり、身につくものも多くなっています。逆に集中が過ぎて視野が狭くなることでのケアレスミスも気になるところです。最後は「良いもの」に対する素直な姿勢が重要です。取り組むことに一生懸命になり過ぎて、制作が「作業」になってしまわないように気をつけてください!

完成した作品が全てです!オートマティックに作り上げた作品が美術的な観点で魅力的なものになるわけがありません。自分自身が、モチーフも自分の作品も「いいぞ!いいぞ!」と実感しながら重ねた仕事が「魅力的な作品」として結実します。

描く。つくる。ということに捉われず、「より良いもの」「より魅力的なもの」を目指しているのだということを忘れないでください。それが作家の力の源泉であり、入試で求められている最重要の観点です。

それではこれまでの預かり作品の紹介です。

昼間部生の作品

調子が美しいですね。もう少し形としての実感が伴えると言うことないです。

厚みがよく出せています。やや腰が太いのと、もう少し黒が消化できるとなお良いです。

夜間部生の作品

見上げの視点を感じる作品です。顔は似ているので頭部により繊細な表現が入って来るとより良いです。

昼間部生の作品

自然に調子を使って表現できています。欲を言うとさらに質感なども感じられると良いです。ミロのビーナスはピタッとした印象が強いです。

表現がややざっくりしていますがそれでも良いと感じさせるリアルな質の魅力があります。

夜間部生の作品です

丁寧に描き切りました。完成度が高いです。さらに質のリアリティを目指してください。

昼間部生の作品

自然な動きの連動感が良いです。頭部にやや表現のかたさがあります。

夜間部生の作品

印象がとても良いです。さらに反射光の魅力を研究していきましょう。

昼間部生の作品

3次元的な動きのハマりがとても良いです。陰の見え方も最後で調整できました。最終的に見えかたがぬるくならないように気をつけましょう。

感覚的に印象が良く引き出せています。作り込みもこのくらいで良いので常に印象の良さを優先しましょう。

生き生きと奴隷が表現できています。魅力溢れる1枚です。実感を持って取り組めるとこのように良い作品が描けるので、毎回意識してください。

ピタッと調子を形に合わせているところが良いです。顔が微妙に動きにあっていないのでさらに精度を上げたいです。

印象よく描けています。大きな単位での断面の印象にさらに迫っていけると良いです。

夜間部生の作品

顔が難しい位置ですが良く似せられています。同時にこの位置は体の厚みを出すのが難しいですが、最終的によく反応できています。

昼間部生の作品

素晴らしい安定感です。かっこいい見映えのする状態まで持ってこれて良いですね。

光の印象が良く捉えられています。そこまで描写を徹底していなくても良く見えるのは良いことです。

ややざっくりしていますが、一つ一つの表現に言葉を感じるので作品としてはとても充実して見えます。

夜間部生の作品

ラオコーンの脇の張りの表現がとても良いです。布のシワも積極的に表現できていて魅力があります。モーゼにさらに印象の安定感が加わると良いです。

存在感の強く感じるデッサンです。この位置は顔が命なので、徹底的に似せていきましょう。

昼間部生の作品

手の骨格感を良く理解しながら進められました。より腕の部分の説得力が求められます。

 

皆実力が高まってきました。ここからは気持ちの安定が一番重要になります。どんなに上手くても、気持ちが不安定だとできるものもできなくなってしまいます。いかに普通の状態で取り組めるか。ある意味入試はそれを問われていると思った方が良いです。

冒頭にも書きましたが、みんなは「美術」の道を選んで学んでいます。「美術で一番大事なことは、単純に「いいもの」を目指していくことです。ここに曇りがあったり、他のことで頭がいっぱいであれば当然「いいもの」は目指せません。受験で合格するために今までやってきたわけですが、そのために不安になってもいいことは一つもないです。「いい作品」を目指してあらゆる工夫を考えてみたり、全力で向き合ったりすることそのものが楽しく、心地よく、充実感を与えてくれます。僕はそんな気持ちで浪人時代を過ごした思い出があります。気づいたら「あ、もう明日は本番なんだー。ワクワクしてきたな!」くらいな感じです。

みんなみんな。楽しんで走り抜けて欲しいです!

彫刻科:預かりザクザク!!

こんにちは。轟木です。

入直が始まりました!もう入試までノンストップですね。アトリエも活気付いています!
試験が迫ってくると焦りが出てきますが、やるべきことは変わらないので冷静に。

最近の預かり作品紹介です。

伸び感を丁寧に観察しています!反射光側の抜けもキレイ!

明るいハーフトーンの中で、一つずつしっかり形にしていけてます!丁寧でいい!

首の動きをしっかり捉えています!顔もいい!シブい!

体の厚みに反応しながら引き込まれる色味で描けてます!目が引き付けられる!

 

絵画のようなデッサンです!炭が生き物みたいだ!ねじれを感じる!

ブルータスのドンとした印象を感じます!最高!

組み立てがしっかりしていて見やすいデッサンです!すてき!

責任感と熱量を絵から感じます!大人!

背骨のS字を感じるデッサンです!彫刻的!

余白が空間になってます!ハグしたら背中を感じれそう!

箱の意識と動きに伴う筋肉の連動を感じます!構造感サイコー!

全光と逆光の描き分け、頭部の印象がいいです!ナイス!

胸の張りと背中の反り、挟み込みながら構築できてます!地力あります!

立脚のボリュームと肩の引きが噛み合ってます!さすが!

モチーフ単体で見たときのクオリテイーと二つの関係が表現されています!狙いがわかる!

正面位置で捉えるべきポイントを抑えています!頭部の光もGOOD!

う〜〜ん、ジョルジョ!パッと見でジョルジョに見えるのはスゴイ!

上下半身のねじれと連動してくる首・頭部をしっかり感じます!安定してる!

炭の発色や色味を操作しています!とてもとても見やすい!

シンプルににキレイです!見上げ感とビーナス感!

作者の視点がわかる誠実なデッサンです!実直〜!

形の大きな角に入ってる炭が効いてます!めちゃレベルアップ〜⤴︎⤴︎

滑らかなミロビの特徴的な形を描きあげられていますね〜!

シンメトリーの構造の強さがしっかり出てます!構造感!!

良い密度ですね〜!古代エジプト・プトレマイオス朝の王妃の貴賓!

私大対策です!床とフォーンの関係が分かり易いですね!グイグイいけてる!

そつなく全体に手を入れれています!アベレージが上がっていますね!

一つ一つ噛み合わせながら組み立てられています!

ターバンが含んでいる空間性を孕んでいます!

こちらはなんと基礎科の学生!!信じられないクオリティー!!!これからが楽しみです!

 

今回はここまでです。
ここから集中力がより高まって、実力がどんどん上がっていきます!
一つ一つの課題を大切にしてくださいね。

彫刻科 冬期講習後半の預かり作品。

こんにちは!彫刻科の小川原です。このブログが公開されている頃、学生のみんなは共通テストを受験しに会場に向かっている時間ですね。落ち着いて、集中して頑張ってください!

入試は早くも入試直前です!皆だいぶ実力がついてきて、ここから一気に仕上げていきたいところですね!一人一人課題を見極めて、徹底的に指導していきます!

さて、今回は冬期講習後半の預かり作品の紹介です。

昼間部生の作品
印象よく安定した完成に持っていけました。手前脇のあたりの処理の荒さと、髭と首の境目の線が気になります。ちょっとしたことでも作品の印象に影響するので気を付けましょう。

明解な表現が気持ち良いです。体に比べて頭部の表現が色寄りで、具体的な形の抵抗感が弱めです。これが一致してきたらいうことないです。

表面的に作業を偏らせることなく印象を持ってこれました。実際完成度は十分です。よくをいうと髪の毛の印象は部分的にもう少し一つ一つの形を追っても良いかもしれません。

顔の長さに関して、微妙に正中線を境に左右の幅が違いそうですが(向かって右が短い)全体的に印象が良いです。体と頭部で調子の強さの印象が一致しないのですが、この場合もう少し体に入っている陰に反射光を入れたほうが自然です。

表現に柔らかさが出てきました。とても自然に表現できていて良いです!

描き出し解説後の描き出し練習です。短い時間で必要なことを詰め込めました。

同じく描き出し練習です。きれいな調子の扱いが良いですね。

モデル首像です。最初から印象がよく似ていました。頭部(髪の毛)の造形にさらにこだわりを持って研究していきましょう。

印象がとても良いです。やや黒が似ているので自然に空間に馴染んでくるとなお良いです。

綺麗に印象が描ききれています。やや色っぽいかなとも思いましたが、ヘルメスの質感には合っているかもしれません。よくをいうと頭部の構造は弱いです。

続いて夜間部生の作品です。

堂々とした描きっぷりがとても良いです。胸の面の奥行き表現が弱いのと、顔の小ささが少し気になります。が、それを上回る魅力があります。

よくコントロールして持ってこれました。印象が良いです。顔はかなり良いので、もう少しそれ以外に形の押さえが効くとさらに良いです。

土付の印象が形を強く見せてくれていて良いです。やや口元が似てないかなという印象です。徹底的に合わせていきましょう。

少し小さめで、ボリューム的にもう少しだけ大きくても良いかなという印象がありましたが、内容はとても良いです。気持ちが宿っているようです。

 

以上です。ここから先は体力とメンタルが最も重要です!それさえ維持してくれれば実力は入試に間に合うようにそれぞれ鍛え上げていくので、しっかりついてきてください!がんばりましょう!