カテゴリー別アーカイブ: 彫刻科

彫刻科生徒作品紹介

こんにちは、彫刻科講師の新妻です。

5度以上気温差がある天気が断続的に続いていますが体調崩していませんでしょうか?一学期も中盤に差し掛かり少しずつ夏が近づいてきましたね。昼間部生は日頃の生活に自分なりの楽しみを見出しつつ日を跨いだ課題だからこその骨太な名作を目指して、夜間部生はひと課題ごとのポイントをチェックしつつ夏期講習に向けて制作に取り組んでいきましょう。

先日行われた石膏胸像クロッキーゼミでは短い時間でしたが、初動で何を気にして(関連づけて)捉えると形が狂いにくくなるかを彫刻科主任の小川原先生とレクチャーしながら解説しました。初めの1枚からラストまでの数枚だけでも、参加してくれた皆さんの捉え方がかなり深まったのが印象的でした。自分の技術になるまで是非いっぱい描いて欲しいと思います。

わかるように教わることはもちろん大切ですが、それと同じくらい、実感を伴うところまで食い下がって量をこなすことも大事なことだと思います。予備校の課題は地味な反復練習のようでいて、今後大学、社会に出た後、美術とどういう態度で付き合っていくのかがすでに問われている側面もあるのではないでしょうか。長い芸術人生の中で今しかできない鍛錬の仕方があるはずです。時間を大切に使ってください!

では生徒作品の紹介に移ります。

美しいデッサンです!彫刻自体の持つ量感を鈍く重たい炭ではなく洗練された光の印象をもって表現できています。しつこい描写とスッキリとした絵作り、見事です。

 

背景とのコントラストが効いていますね。像の持ってる大きな空間とボリュームが伝わってきます。みちみちに描いてるわけではないけど割れ肌部分の石の表現もリアルです。

 

構成塑像課題「マスクを使って自由に彫刻を作りなさい」

面白い表現です。やっている構成自体はシンプルですが、古い表面のマチエールの処理や、破けた膜のはがれ方のリズムなど一つ一つこだわって制作されています。

マスクとの相性が良いモチーフを選択していて、マスクの顔の振り向きの方向と布のたなびき方が良い対応感になっています。陰影もうまく利用していますね。

以前にも同じアイデアで構成塑像を作っていた作者でしたが、何回か試行錯誤していく中で作品が洗練されてきました。一つの案を何度も検証することも物を作るうえで大事なことですよね。そうしてできたものは単なる自己模倣とは一線を画します。

続いて夜間部生、高2生の作品です。

いままでのデッサンでは形のとらえ方に少し硬さや淡泊さがありましたが、とても自然にゆったりとした動きや量感に反応できています。指針になる一枚が描けました!

マスクの造形的なキャラクター性と自由に想定した溶ける造形がマッチしています。模刻要素も頑張っています。

構造的な違和感のなさもさることながら、自然と作品として美しいポージングを選択しているのが印象的でした。ほぼ初めてとは思えない出来です!球も時間延長してこだわれました。

うまーい!今は受験がどうとかは二の次で、目の前の作品に自分が一番感動できるようにどんどん欲張って制作してもらいたいです!

大学での制作ではさらに月単位、年単位で自分の作品と向き合うことも多くなります。扱う素材やモチーフが変わるだけで、「どこまで自分の作品に向き合えるか」という部分は変わらないはずです。

今回は以上です、ではまた!

彫刻科GW明け秀作!

こんにちは!彫刻科の小川原です!

GWが明けておやすみ気分が抜けていない人はいませんか?まだ1年の序盤。ここでしっかり基礎力を高めておけないと後々苦しくなってしまうのでガンガン攻めて行って欲しいです!
新美彫刻科は昼間部も夜間部も熱気あるアトリエ空間で指導にも力が入りますね!いいことです。これが持続したらきっといい成果が出せると思います。一緒に頑張りましょう!

それでは預かり作品を紹介していきます。

昼間部生の作品。

破綻なくかっちり動きや構造のはまりを捉えてきました。さらに印象の捉えに関して、見方が硬くなる前にじっくり探っていけると良いです。

ジョルジョの難しい表情までかなりの精度で合わせて来れました。とても良いです。今回高められた密度が普通くらいに思えるよう意識してください。

形のつまった緊張感が良いです。ジョルジョに合っていると思います。前半の仕事で動きやバランスの根幹となる部分の意識をより高めましょう!

最終的に人物像として自然にまとめられました。出だしでの量のコントロール(ややしぼむ)に十分気をつけてください。

ゆったりと自然なポーズ感がとても良いです。固有色や質感の違いにも反応できている完成度の高い作品になりました。

意外に難しいポーズですがよく捉えられています。完成度も高い!やや表情はまだ位置のズレ(正中線)を感じるので気をつけましょう。

今回は手と自由なモチーフで作ってもらいました。石と毛糸。面白いですね。よく浮いてるなと思います。そう思わせられたということは狙いがうまく行ったのだと思います。

モチーフに対しては短い時間だったと思います。よく完成できました。こういう感じで作り慣れないものにどんどん挑戦していくのはいいですね!

バットの一直線の緊張感が伝わってきます。地面も含めていい表現ですね!

奴隷の量感や動きの魅力がとてもよく出ています。この時期これだけ描けたら十分いいラインに乗っていると思います。頼もしいです!

魅力的な炭の発色ですね!動きの自然さもとても良いです!あごが少し小さいかなと思いますが、顔も似ています!

気合を入れた1枚です。これこれ!これでいいんだよ!という1枚になりました。調子も美しく、全体に自然な空気感が感じられます。これがふつう。くらいになったらいよいよ合格が見えてきます!

上げてきました!まだまだ空間性はもっと出していきたいところですが、すべての要素がいいラインに到達させることができました!この調子です!

基礎科生の作品。

うーん。素晴らしい出来です。現時点でこれだけの作品が出せるというのは本当に良い眼を持っているのだなと思います。この勢いでいきましょう!

 

以上です。皆順調に伸びています。何より日々の制作を楽しんで、上達の喜びを感じて欲しいと思います!

 

彫刻科:4月の授業 

こんにちは、 彫刻科です。
今年度からお世話になります。講師の坂下です。

新年度から1ヶ月経ちましたが皆さん生活リズムは慣れてきたでしょうか。
自分の中での調子よく過ごすことができるルーティンを見つけることができると、気持ちに余裕が生まれて視野を広く持つことができると思います。

では生徒作品から一部紹介します。

「白菜を使用した構成」
4分の1カットの白菜と生徒自身がモチーフを設定し組み合わせて制作しました。


「白菜と手と布」の構成。3つのモチーフの質の違いとそれぞれの構成内での役割を意識して作れています。

「白菜とガッタメラータのマスク」の構成。とてもシンプルな構成です。ゆえにベースの仕事や接地し合うところは気を使う必要がでてきます。

「牛骨素描」


骨の生っぽさ、触覚的な仕事をひしひしと感じますね。

たんたんと描いてるように見えて複雑に入り組んだ形を光の印象と組み合わせてかっちり描いています。

こちらは基礎科の生徒による作品。台までしっかり描くことで角先から顎周りの空間が綺麗につくれています。

「手とヤシの実」の構成。
先日の入試でも出題されていた手はポージング次第で様々な表情・意味合いを生み出します。
なので、なんとなくで作ってしまうと観る側に『?』が生まれてしまい中途半端な印象になりかねません。気をつけましょう!


似た物量のなかでも絶妙な角度調整でリズム感をもって作れています。ヤシの実は張りを強く見せる粘土づけを意識できるといいです。


こちらは両手をうまく使って空間を広くみせてます。関節の曲がる表情をいかすポージングをどこかに加えても良かったかもしれません。


奥から手前に倒れるような・向かってくるような構成で影が特徴的です。力んでない手の表情が構成の中に時間を想像させますね。

「ジョルジョ」


描き出しのベース作りの段階でらしさが出始めてました。影に重みと説得力がありますね。


左右の肩、動きの差はもう少し出したいところですが、この位置のジョルジョの視線の印象など「ぽさ」がだせています。


ハッチングや表情がキツい箇所もあるのですが、頭部や首などの形態を掴んでいく感覚はとてもいいと思います。

最後は夜間部生の作品から!
「ヘルメス」


目鼻口などの顔のパーツの表面の描写に走らずに量のイメージのまま当て込んでいくことができました。これって結構むずかしいんです。
ヘルメスのくの字型の空間づくりも頭部と頬の光を捉えることで自然にできてきました。

GW明けからもがんばっていきましょう!!

彫刻科:新学期スタート!素描の春

こんにちは、彫刻科講師の新妻です。今年度もよろしくお願いします。

今年は以前無料体験で来てくれた人、基礎科生だけど一足先に受験科に混じって制作に取り組む人、今年度からの新入生、昨年からの経験豊富なベテラン勢とフレッシュ現役生と、彫刻科のアトリエは例年になく春から活気づいております。

春期講習から新学期はデモストを見てもらいながら、何に気をつけながら作ったり描いたりしてるのかを伝えつつ、それぞれの制作に取り組んでもらう機会が多いです。基本の確認と共に、今の時期だからこそできるチャレンジや価値あるものを目指して制作するマインドを育んでいきましょう!

 

春は特に総合的な素描力の向上を重視したカリキュラムになっています。対象がどんなものであったとしてもその魅力を引き出し表現する力は作品を作る上で大切だと思います。

では生徒作品の一部をご紹介します。

「自分の靴を描きなさい」

コンバースの生地のヨレ感やソールの溝、靴紐の重なりなどじっくり迫っています。

エナメルの光沢が伝わってきます。黒の色幅の引き出しがふえましたね!

まさかの下駄!構造は単純ですが、色味の幅や接点、質感など欲しい情報の見え方が適切です。

「コーヒー樽と綱」

序盤で形の修正をしっかりしたおかげで後半の描写でグイグイ絵が魅力的になりました。

各モチーフのあらゆる箇所に気遣いとこだわりを感じます!重さまで伝わってきます。

「鳩」

動物は常に動いているので、見て形を描く意識だけでなく、観察した情報からそのものらしさや骨格理解を自分で紙の上に再構成することが求められます。鳩の自然な佇まいが無理なく表現できています。

「ブルータス」

描き出し特訓の中の一枚です。この段階でブルータスをビンビンに感じる秀作です!

観察したものを余すことなく描いてやるという気概を感じます。見えない後頭部へとつながっていく形態の自然さと、衣の中の身体を感じさせられるとよりgoodです。

表情ハマってます。掘りかけのの頭部のはつりあとや、曖昧になりやすい衣同士の接点なども横着せずとらえていて好感がもてます。やや右肩が落ちるタイミングが早い感じがするのと、強い黒の采配をもう一段調整できるといいですね。

自主的に夜間残って描いた背景付きラオコーン。去年よりも自由に使える時間が増えた分貪欲にやりたい課題にチャレンジしてほしいです。ネックだった顔の印象も改善しましたね!

ここからは夜間部生(高3、高2生)の作品です。

「薪の束と針金」

今までなかなか踏み込めなかった細部描写やカリッとピントを合わせる仕事ができました!持ち前の形態感の強さや探りも効いています。

高2でこんなにいろんなことのバランスをとりながら描き上げることができるのが驚きです!アドバイスをこまめにメモする姿勢も貪欲でナイスです!

 

最後は昼間部生の1人、すっかりルーティンとなった人物クロッキーの一部を。

線が走っていますね〜!昨年から段々と捉え方や表現が洗練されてきました。デッサン、塑像にも確実に良い効果をもたらしています。

続けること。単純なことのようで小さな積み重ねが大きな気づきと自信へと繋がっていきます。

今回は以上です。気温差が激しいので体調崩さぬように!

彫刻科 芸大合格者入試再現と合格体験記

こんにちは!彫刻科の小川原です。

新学期が始まり、皆エネルギッシュに制作に取り組んでいます!一つ一つ確実に身につけていきましょう!

twitterでも紹介しましたが、前回の芸大入試の合格者入試再現作品が完成しているので作者の合格体験記とともに紹介します。

ちなみに入試課題はデッサンは「ヘルメス」塑像は「自身の手を与えられた紙袋と組み合わせて内と外というテーマでつくりなさい」でした。

私は別の予備校で4浪しました。もういいと受け入れ、他の大学に1年入学しましたが、そこでもまたいろんな思いを感じることになりました。

やっぱり諦めきれない思いを抱き、環境の変化に弱い自分への対策として、試験3週間前に新美に行きました。いきなり来た自分に対して新美の先生は温かく受け入れて下さり、そして熱く、冷静に私の不十分だった箇所を指導してくれました。

課題ごとに合わせた先生方の論理的な指導は、私の中の散乱してしまっていた思考を少しづつシンプルでより強いものにしてくれました。

受動的ではなく、能動的に、当たり前のことを当たり前にできるようになって、今までとは少し違った気持ちで本番に臨めました。

結局、傾向と対策をきちんと自分の中で立て直すこと、何かを選んだ際にその他の選択肢を全て捨てて、選んだことだけに淡々と集中すること、新美の先生が教えてくれたこれらが本番で自分の支えとなり落ち着いて作品を作ることができた理由なのだと思います。

私の沢山の拗らせた思考を整理するのに新美はぴったりの場所でした。5浪してもなお理解が乏しい箇所を見逃さず指摘し、わかりやすく基本的な事を教え直してくれた先生の方々に本当に感謝しています。ありがとうございました。

 

「浪人生活を楽しむ」これは私が去年、予備校とそれ以外の実生活を互いに豊かにしていきたいと思い立てた目標でした。私は結果的に満足のいく形で受験を終えることができましたが、それまで多くのものに支えられてきました。ここではその過程で感じたことを書こうと思います。

まず環境の大切さです。新美の環境で良かったと思うのは、生徒が比較的少人数で、他者とその作品に距離を感じないことです。色んな作品や感性を身近に感じられることが楽しく、新美での浪人生活においてそれが何よりも私を前に進ませました。新美ならではの手厚く寄りそった指導も、自分と作品をいやがおうにも向き合わせます。芸術を志し、美大を目指す人に囲まれて制作するのは、そうでない人たちと制作するよりも有意義で濃密です。新美に通うことで、”やはり藝大を目指したい”という気持ちは強くなっていきました。

予備校外での実生活においては、受験生であるということより日々をどう楽しく過ごすか、つくりたい作品のイメージや純粋に彫刻とどう付き合いたいかを考えていました。今にして思えば、制作した時間というより関わってきた時間が私にとってとても大事なものだったように感じます。私は面倒くさがりでしたが、ただ興味さえ尽きなければそれが良い作品に繋がりました。

また、私は高3の直前まで進路に悩みましたが、興味のあった彫刻科へは高2の講習中から受験科にお世話になっていました。数をこなすだけでは上手くなりませんが、その積み重ねは確実に実力に繋がります。浪人中、彫刻ともっと早く関われていればとよく思いました。

最後に、一人で制作しているだけでは私は絶対にここまで来られなかったと思っています。他者あっての自分の作品であり、制作の中で同じ学年の人のみならず先輩や後輩、尊敬する先生方からも多大な影響を受けていると思い知らされました。今は新美で学べてよかったと心から感じています。常に親身になって上達の手助けをしてくれた先生方、飽きっぽい私を前進させてくれた予備校の方々、私のやりやすい環境を整えてくれた家族や友人にとても感謝しています。今まで本当にありがとうございました。

 

サボる事へ向けての努力を常に続ける。

塑像課題の前日の夜に粘土を練っていた事

朝早く来て場所取りをしていた事

夜間残って課題をこなしてた事

果ては毎日休まず予備校に通った事等々

これらは「サボる」ために行っていた。

朝に粘土を練りたくない

描きたくない位置でデッサンを描きたくない

入試直前で形の狂いを残したくない

全ては浪人生活を今年で終わらせたいの一心である。全ての行動の原点は「面倒くさい」なのだ。

近道は無いが、かといって遠回りする必要もない。泥臭く、かつ悪賢く頑張っていこうと思う。

 

 

合格者3名とも、なんとなく予備校に来てなんとなく課題をこなしてきたというわけではなくて、それぞれ自分の中に「芯」を持って受験と向き合ってきたのだなということが伝わってくる体験記でした。僕ら講師はどんな生徒であっても全力で教えます。しかし本人がどのようなスタンスでそれを受け取ってくれるかということが僕は一番重要だと思っています。
受験は講師と生徒の二人三脚です。皆さんがついてきてくれさえすれば、合格は見えてきます!がんばりましょう!