カテゴリー別アーカイブ: 彫刻科

彫刻科 2023年度新学期開始!

こんにちは!彫刻科の小川原です。

新たな気持で新学期スタートです。この1年、より効果的に上達の波に乗っていくために、昼間部では基本的な課題に力を入れたカリキュラムで制作を開始しています。

大事なことはやり方を学ぶことではなく、大前提として自分自身で「リアリティ」について深く考え、常にその上限を突破していくことに関心と喜びを感じられる状態に体質を変えていくことです。
美大受験も「学び」によって合格を達成するということは他の学問とさして変わりないことなのですが、「学び方」については違うと思います。「自分自身がどう考えるのか、自分自身が良いと思ったものが客観的にどのような評価を受けるのか」そしてこのレベルを上げていくことが重要です。「こうするといいらしい」とか、「こうしないといけない」みたいなかんじで、受動的な姿勢では成長しないし、そもそも制作している本人が絶対に楽しめないはずです。

主体的に作品を良くしていくこと!「魅力」に敏感になって、作品やモチーフに感動していくこと!これです。
僕ら講師は生徒の伴走者として全力で支えていきます!

それではこの1週間での預かり作品を紹介します。

昼間部生の作品。
最初は椰子の実の模刻からスタート。なんてことないモチーフと思いきや、自然物であるがゆえ、整合性の取れた構造を持っていたり、内側から張り出してくる強い緊張感もあり、表面には個性がある。しっかり作ろうとするならば、まずは理解しなければなりません。


表面を作り始める前にすでに緊張感のある形がベースとして表現できていました。べーすがよかったのでマチエールの表現が無駄なく最後まで効果的に完成度を上げてくることができました。


全体の形態感がよく表現されています。加えてこの椰子の実の細部の特徴も印象良くまとめられました。


コロッとした感じ、また硬い質感がよく出せています。割れの表情もリアルです。


シワの多い個体で難しかったと思いますがよく作り込めたと思います。表情にリアリティがあります。

次の課題は束ねた大根の素描です。ただ形や色を写していくだけでなく、モチーフの質や状況、空間のリアリティまで考えて表現を深めていきたいです。

どーんと大きく構図を取りました。迫力があって魅力的な作品です。描き出しからそのものらしさによく反応して手を動かせていました。


丁寧に大根の質感に迫れています。物が台に置かれれた状況の客観性も感じられて良いです。


おおらかな表現ですが、大根の質がよく出せていると思います。作者の視点も感じられるデッサンです。


丁寧な描写が目を引きます。新鮮な大根の表情がよく捉えられています。

続いて牛骨の素描です。牛骨そのものが形として洗練されていてかっこいいモチーフです。実物の魅力に負けないように画面に再構築したいところです。


床面から立ち上がる牛骨の存在感にリアリティを感じます。光の当たり方も美しいです。


繊細な調子で完成度を上げてきました。床面におちる影の印象も良いです。構図もよく考えられています。


生命感を感じさせる表現が魅力的です。特に上顎の完成度は高く、形に抵抗感が感じられます。

次は夜間部生の作品です。


形のつながりをみっちりと感じながら丁寧に詰めきれている所が良いです。光源の捉え方にも意識の高さが伺えます。


荒削りではありますが、ヘルメスの印象に食らいつき、かなり似せてこれています。回り込みや形のつながり部分の表現について、少し意識するだけでさらにに向上しそうです。


丁寧に、また実直に印象や状況を構築していきました。出だしですでに構図や印象、全体の設定が自分の中で整理できていたので安心して見ていられました。


現役生ですが昼間部の課題を6時間で挑戦してもらいました。短い時間ですが、これだけいい作品を出してこれる意識や技術の高さに驚かされます。受験としてのデッサンの枠を超えて本当に「作品」と言えるものを目指している成果だと思います。

 

以上です。皆制作に気持ちが入っていて良いです。とはいえそれがこの世界では当たり前だし通常モードなので、ここをさらに突破していけるように常に理想を高く(無限大)もって取り組んでほしいものです。

1年後、全部やりきった成果を入試にぶつけよう!!

彫刻科2023年度スタート!

彫刻科の新妻です。春ですねー。

2022年度、新美在籍からは1名芸大に受かりました。後日再現作品を作ってもらいました。

デッサン、塑像ともに気負いなく、モチーフの魅力を自然に味わい、客観的な目で判断を下しながらの責任感ある仕事でした。

合格後この1年を振り返っての感想を聞いてみると、マンネリにならずに美術の楽しさを自分の中でどう維持しながら気持ちをあげて行ったか、実技の改善点を自分なりに考え実験しながら改善に向かっていったりなど、彼女の中での戦いを経て、以前よりも大人になった印象を改めて受けました。本当におめでとうございます!!これからの大学生活楽しんで下さい!

そしてもう今年の受験も始まっています。春期講習は受験の1年の中で最も自然体で制作ができる時期かもしれません。

ここからまたがんばりましょう!最近の作品を紹介します。

気合の入った良いデッサンですね!

ほぼ未経験ながらとても自然にモデルさんをとらえています!

このリアリティー!形に対するこだわり!いいですよー!

素描として、見えたものに自然に反応した感性が好印象です!

ポーズのリズム、決まっています!

今回は以上です!

 

彫刻科 入試間近!

こんにちは!彫刻科の小川原です。今年も芸大入試目前となってきました。ここにきて「やってやるぞ!」と気合を入れている人もいるかもしれませんが、受験においてはそれだといい事ないです。入試はいかに「普段通り」にこなせるかが一番重要なので、いつもと違う感覚や感情で試験に臨んでもただただミスを誘発するだけでメリットはないですね。
試験当日にいつも以上の力が発揮できてそのまま合格してしまうというミラクルもないわけではないですが、そう言うのは意識して出る物ではないです。
普段通りにできる事が一番良い事だと思って落ち着いてやるべきことをやってきて欲しいです。
要は「自分をしっかり持つこと」それだけですね。作品の行く末は全て自分で決める物です。一つ一つの仕事に責任を持ってください!

さて、それでは直近の預かり作品を紹介します。
昼間部生の作品

光源設定がすっきりとしていて見やすいデッサンです。顔も似ていて良いですね!調子の質感についてはさらに魅力を高めたいところです。

特に光側の仕事が明快でよいです。逆に影側はもっと反射光を思い切って入れて空間をすっきり見せたいです。


かっちり作り込んで欲しいところがちゃんとやり切れているところがよいです。メリハリの効いた作品ですね。背中や腰のあたりはやや形が曖昧になったのでさらに分析を深めましょう。


地山に対して意思を持ってしっかり立っている印象がよく出せています。顔も似せられていますね。


パジャントの厚みや量をしっかり打ち出せています。描写は時間ギリギリだったので、完成度に関しては間に合うよう常に意識してください。


描写の印象が良いです。影側にもう少し空間的な抜けがあるとなお良いです。


斜めから見上げたパース感が自然でとても良いです。描写も冴えています。


炭の質が自然に形にフィットしています。空間的に魅力ある作品です。


ジョルジョの模刻は難しいですが、安定して印象を引き出せています。ある程度できていきた時点でむしろ完成を急がず確実に攻めて行ければ良いです。


一見シンプルなモチーフであってもいつもと違う構図のバランスになる時は一層気をつけるべきです。そうしたポイントにも振り回されずに進められました。


グッと詰まった感じの抵抗感が良いですね。グデアくらいのサイズ感の模刻では、みんな顔を作り込みに走りがちなんですが、頭部やターバンの形態感もしっかりおさえていきましょう。


顔もしっかり似せられているし、炭使いも魅力的です!

顔の作り込みが素晴らしいです。引きつけられます。


足にかける体重を微妙に左右変えました。そうした工夫も魅力です。

次は夜間部生の作品です。

アムールの動きや厚みが自然に捉えられています。


大きな形態感に関してはさらに追求していきたいところですが、ぱっと見の印象がとてもよいです。


細部の作り込みが光る作品です。遠目にも映えて目立ちます!


炭使いにまだ拙さは残りますが、とてもよくバランスが取れました。


ラオコーンの伸びの印象がよく出せています。角材は少し黒いかもしれません。


細部の作り込みの魅力もさることながら、地山の見せ方にも気を使っていてとても良いです。

最後に基礎科の作品紹介です。


本をめくる手です。本のたわみや手のニュアンス的な魅力が強く伝わってきます。


手と軽やかな形態(空気のような)です。手のリアルな作り込みもすごいですが、形態のデザインセンスも素晴らしいです。構成全体が魅力的です!


初めて手を作ると言うことでシンプルに手と球で構成してもらいましたが、ものすごい造形力に驚かされました。うまいです!


手とロープです。手を伝ってヒューっと伸びていくロープの構成に緊張感を感じます。

 

以上です。
ここまでそれぞれいい感じで実力を高めてこれました。体調、メンタルを整えて自然体で入試に臨めるよう最後の調整をしましょう!

彫刻科 入試直前講座

こんにちは!彫刻科の小川原です。

共通テストも終わり、いよいよ入試本番に向けて本格始動しています!ぼーっとしてるとあっという間に時間が過ぎてしまうので、それぞれ意識を高く持って臨んでほしいです。
浪人生だった時の僕は1年通して「どうしたらより向上できるか」について寝てる時以外はずっと考えてるくらい考えていました。日々理論立てての挑戦を繰り返し、結果として成功しようが失敗しようがそれを元にさらに考えを深めることができてとても楽しかったです。
入試直前にインフルエンザに罹ってしまい、しばらく休むことになるというアクシデントもありましたが、僕としては入試が不安というより研究が進まないことの焦ったさがずっと上回っていました。再び予備校に行けたのが入試二日前でしたが、久しぶりに描いたデッサンはめちゃくちゃ楽しかったのを覚えています。

周りの人は作品の評価に一喜一憂し、試験日が近づくにつれてナーバスになっていきましたが、結局入試って自分がやってきたことの結果でしかなく、できれば受かるしできなければ受からないというただそれだけのことなので、そういったことに意識を割くのはとてももったいないことだと考えていました。
入試が実技でなく抽選で決まるとしたら僕もドキドキしただろうし、ナーバスにもなったと思います。自分の責任でない要素で合否が決められるとしたらそれはきついですよね。
しかし実際はきちんと実力が評価されるのでただひたすらポジティブに突き進めると一番いいですよね。人によって上達のスピードは違うので、それを比べて落ち込む人もいるかもしれませんが、入試で問われていることは基礎基本でしかないので練習すれば必ず上手くなる事です。ならやるしかない。絶対に合格したいなら尚の事やるしかない。
合否を決めるのは自分でもライバルでも、僕ら講師でもない。大学の教授たちです。だから今、自分の作品がどうだからと気持ちが揺れていてはダメです。
それじゃああなたの魅力が作品で最大限伝わるように突き詰めていくしかないですね!前へ 進め!

というわけでここ最近の秀作を紹介します。
昼間部生の作品


状態に量的魅力がさらにほしいですが、客観性を持って仕上げられている点がさすがです。


ぱっと見の冴えが良いです。逆にもっと粘って「リアリティ」について駆け引きをしていきたいです。ややあっさりかな。


武蔵美対策です。出だしから危なげなく安心して見ていられるプロセスでした。上手い!


やや顔の細さが気になりますが、全体には動きの連動を合わせられていて良いです。


顎下に余計な量が感じられ、ややスッキリ感は不足していますが、全体に丁寧にかけていて良いです。光源を考えると脇はむしろ明るくしたいですね。

夜間部生の作品。

まだバサバサした質感が(特に頭部)気にはなりますが、動きの設定やバランスがよくとれています。

基礎科生も頑張っています。


素晴らしい完成度です。流れるような布の表現もうまいです!


布の表現がとても難しかったですが、ここまで形にできたことに実力の高さを感じます。


7時間弱で描きました。まだ受験生ではないのにほぼ試験時間でこれだけの作品を描けるのはすごいです!


高校生デッサンコンクール1位の作品。
ヘルメスの正面位置は難しいですが、自然体で捉えられています。制作過程を見ていましたが、もはやデモンストレーターかなというくらいうまかったです!


高校生デッサンコンクール3位。
光の存在を魅力的にかけています。1位の作品とはまた違った魅力がありますね。体の形を正面から見た様子を想像するとやや狂いがありそうです。しかし違和感を上回る良さがこの作品にはあります。

以上です。
あと1ヶ月と半分。この短い期間が人生において最も成長できた時間にできるよう応援します!

小川原

彫刻科:冬期講習始まりました。

講師の新妻です。寒くなってきました〜。クリスマスも彫刻科は通常営業!灰色の粘土を朝からこねております!

自分は最近アトリエでの制作時に加えて仕事の通勤時もラジオをよく聴いています。自分からは手を出さない音楽や、その時々の季節感を感じられたり、一定の親しみやすさと礼節を持った距離感で流れてくるパーソナリティの話やリスナーさんのメールを聞いていると、いろんな人が同じ時間を生きてるんだなぁと、当たり前のことを感じて過ごすことができて良いものです。スマホが便利すぎて自分の好きなものはすぐ見つかりますが、偶然自分のテリトリーの外からやってくる情報に心を動かされることの方が良い刺激になります。

受験生の皆さんは作品を作っているときにどのくらい心が動いていますか?やらなければいけないタスクで頭がいっぱいいっぱいになっていませんか?

普段の日常生活って何をするにもそこまで感受性を解放して過ごしてはいないと思うんです。疲れちゃうし。でも作品を作るって行為はただ段取りを組むだけではなく、常に心を動かしながら取り組む方がモノ自体も活き活きしてきますよね。そこが楽しい部分でもあるし、大変な部分でもあります。受験のための勉強を始めてからの知識だけでなく、今まで生きてきた20年近くの体験や感覚も大事にものづくりを楽しんでほしいです。そうすることで彫刻がよりスリリングなものになるはずです!

では最近の生徒作品の紹介に移ります。

 

 

暗がりへ射してきた光がモチーフを照らす様が魅力的です。一番目線を持っていきたいのが牛骨とのことだったので、もっと画面の視線誘導を作り込んでしまっても今回みたいな作品の場合は良かったかもしれません。

モチーフ同士の関係性や取り巻く空気を意識して素描できました。この感覚をどんな時も大切に!

正面からのルックが印象的な構成です。狙いは伝わるので、電球ソケット周りの接点の緊張感や横アングルからの見え方が単調にならぬよう気を配りましょう。

円盤投げという彫刻のもつ立体的な関係性を絵の中で合わせていくことが出来ました。部分の絵画的な描写の詰め込みよりも全体の設定を噛み合わせることに熱くなれるとgoodです!

上のデッサンを経ての組み石膏デッサン。良い感じです。モーゼの向かって右上のマスクの淵の処理がやや線的なのとマスク自体の厚みがもう少し感じられるとなお良いです。

基礎科生の作品です。今までよりも空間や奥行きを意識したやりとりが出来ていていいですね!向かって右の目が若干はずれて見えますが作品作りとしてとても良い取り組みです。

夜間部生の作品です。3つのモチーフを組み合わせて塑像板の上に新しい流れや関係性を無理なく表現出来ました。構成の方向が見えてきてからはどんどんモチーフらしさを汲み取っていきましょう!

 

今回は以上です、ではまた。