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彫刻科 入試間近!

こんにちは!彫刻科の小川原です。今年も芸大入試目前となってきました。ここにきて「やってやるぞ!」と気合を入れている人もいるかもしれませんが、受験においてはそれだといい事ないです。入試はいかに「普段通り」にこなせるかが一番重要なので、いつもと違う感覚や感情で試験に臨んでもただただミスを誘発するだけでメリットはないですね。
試験当日にいつも以上の力が発揮できてそのまま合格してしまうというミラクルもないわけではないですが、そう言うのは意識して出る物ではないです。
普段通りにできる事が一番良い事だと思って落ち着いてやるべきことをやってきて欲しいです。
要は「自分をしっかり持つこと」それだけですね。作品の行く末は全て自分で決める物です。一つ一つの仕事に責任を持ってください!

さて、それでは直近の預かり作品を紹介します。
昼間部生の作品

光源設定がすっきりとしていて見やすいデッサンです。顔も似ていて良いですね!調子の質感についてはさらに魅力を高めたいところです。

特に光側の仕事が明快でよいです。逆に影側はもっと反射光を思い切って入れて空間をすっきり見せたいです。


かっちり作り込んで欲しいところがちゃんとやり切れているところがよいです。メリハリの効いた作品ですね。背中や腰のあたりはやや形が曖昧になったのでさらに分析を深めましょう。


地山に対して意思を持ってしっかり立っている印象がよく出せています。顔も似せられていますね。


パジャントの厚みや量をしっかり打ち出せています。描写は時間ギリギリだったので、完成度に関しては間に合うよう常に意識してください。


描写の印象が良いです。影側にもう少し空間的な抜けがあるとなお良いです。


斜めから見上げたパース感が自然でとても良いです。描写も冴えています。


炭の質が自然に形にフィットしています。空間的に魅力ある作品です。


ジョルジョの模刻は難しいですが、安定して印象を引き出せています。ある程度できていきた時点でむしろ完成を急がず確実に攻めて行ければ良いです。


一見シンプルなモチーフであってもいつもと違う構図のバランスになる時は一層気をつけるべきです。そうしたポイントにも振り回されずに進められました。


グッと詰まった感じの抵抗感が良いですね。グデアくらいのサイズ感の模刻では、みんな顔を作り込みに走りがちなんですが、頭部やターバンの形態感もしっかりおさえていきましょう。


顔もしっかり似せられているし、炭使いも魅力的です!

顔の作り込みが素晴らしいです。引きつけられます。


足にかける体重を微妙に左右変えました。そうした工夫も魅力です。

次は夜間部生の作品です。

アムールの動きや厚みが自然に捉えられています。


大きな形態感に関してはさらに追求していきたいところですが、ぱっと見の印象がとてもよいです。


細部の作り込みが光る作品です。遠目にも映えて目立ちます!


炭使いにまだ拙さは残りますが、とてもよくバランスが取れました。


ラオコーンの伸びの印象がよく出せています。角材は少し黒いかもしれません。


細部の作り込みの魅力もさることながら、地山の見せ方にも気を使っていてとても良いです。

最後に基礎科の作品紹介です。


本をめくる手です。本のたわみや手のニュアンス的な魅力が強く伝わってきます。


手と軽やかな形態(空気のような)です。手のリアルな作り込みもすごいですが、形態のデザインセンスも素晴らしいです。構成全体が魅力的です!


初めて手を作ると言うことでシンプルに手と球で構成してもらいましたが、ものすごい造形力に驚かされました。うまいです!


手とロープです。手を伝ってヒューっと伸びていくロープの構成に緊張感を感じます。

 

以上です。
ここまでそれぞれいい感じで実力を高めてこれました。体調、メンタルを整えて自然体で入試に臨めるよう最後の調整をしましょう!

彫刻科 入試直前講座

こんにちは!彫刻科の小川原です。

共通テストも終わり、いよいよ入試本番に向けて本格始動しています!ぼーっとしてるとあっという間に時間が過ぎてしまうので、それぞれ意識を高く持って臨んでほしいです。
浪人生だった時の僕は1年通して「どうしたらより向上できるか」について寝てる時以外はずっと考えてるくらい考えていました。日々理論立てての挑戦を繰り返し、結果として成功しようが失敗しようがそれを元にさらに考えを深めることができてとても楽しかったです。
入試直前にインフルエンザに罹ってしまい、しばらく休むことになるというアクシデントもありましたが、僕としては入試が不安というより研究が進まないことの焦ったさがずっと上回っていました。再び予備校に行けたのが入試二日前でしたが、久しぶりに描いたデッサンはめちゃくちゃ楽しかったのを覚えています。

周りの人は作品の評価に一喜一憂し、試験日が近づくにつれてナーバスになっていきましたが、結局入試って自分がやってきたことの結果でしかなく、できれば受かるしできなければ受からないというただそれだけのことなので、そういったことに意識を割くのはとてももったいないことだと考えていました。
入試が実技でなく抽選で決まるとしたら僕もドキドキしただろうし、ナーバスにもなったと思います。自分の責任でない要素で合否が決められるとしたらそれはきついですよね。
しかし実際はきちんと実力が評価されるのでただひたすらポジティブに突き進めると一番いいですよね。人によって上達のスピードは違うので、それを比べて落ち込む人もいるかもしれませんが、入試で問われていることは基礎基本でしかないので練習すれば必ず上手くなる事です。ならやるしかない。絶対に合格したいなら尚の事やるしかない。
合否を決めるのは自分でもライバルでも、僕ら講師でもない。大学の教授たちです。だから今、自分の作品がどうだからと気持ちが揺れていてはダメです。
それじゃああなたの魅力が作品で最大限伝わるように突き詰めていくしかないですね!前へ 進め!

というわけでここ最近の秀作を紹介します。
昼間部生の作品


状態に量的魅力がさらにほしいですが、客観性を持って仕上げられている点がさすがです。


ぱっと見の冴えが良いです。逆にもっと粘って「リアリティ」について駆け引きをしていきたいです。ややあっさりかな。


武蔵美対策です。出だしから危なげなく安心して見ていられるプロセスでした。上手い!


やや顔の細さが気になりますが、全体には動きの連動を合わせられていて良いです。


顎下に余計な量が感じられ、ややスッキリ感は不足していますが、全体に丁寧にかけていて良いです。光源を考えると脇はむしろ明るくしたいですね。

夜間部生の作品。

まだバサバサした質感が(特に頭部)気にはなりますが、動きの設定やバランスがよくとれています。

基礎科生も頑張っています。


素晴らしい完成度です。流れるような布の表現もうまいです!


布の表現がとても難しかったですが、ここまで形にできたことに実力の高さを感じます。


7時間弱で描きました。まだ受験生ではないのにほぼ試験時間でこれだけの作品を描けるのはすごいです!


高校生デッサンコンクール1位の作品。
ヘルメスの正面位置は難しいですが、自然体で捉えられています。制作過程を見ていましたが、もはやデモンストレーターかなというくらいうまかったです!


高校生デッサンコンクール3位。
光の存在を魅力的にかけています。1位の作品とはまた違った魅力がありますね。体の形を正面から見た様子を想像するとやや狂いがありそうです。しかし違和感を上回る良さがこの作品にはあります。

以上です。
あと1ヶ月と半分。この短い期間が人生において最も成長できた時間にできるよう応援します!

小川原

彫刻科:冬期講習始まりました。

講師の新妻です。寒くなってきました〜。クリスマスも彫刻科は通常営業!灰色の粘土を朝からこねております!

自分は最近アトリエでの制作時に加えて仕事の通勤時もラジオをよく聴いています。自分からは手を出さない音楽や、その時々の季節感を感じられたり、一定の親しみやすさと礼節を持った距離感で流れてくるパーソナリティの話やリスナーさんのメールを聞いていると、いろんな人が同じ時間を生きてるんだなぁと、当たり前のことを感じて過ごすことができて良いものです。スマホが便利すぎて自分の好きなものはすぐ見つかりますが、偶然自分のテリトリーの外からやってくる情報に心を動かされることの方が良い刺激になります。

受験生の皆さんは作品を作っているときにどのくらい心が動いていますか?やらなければいけないタスクで頭がいっぱいいっぱいになっていませんか?

普段の日常生活って何をするにもそこまで感受性を解放して過ごしてはいないと思うんです。疲れちゃうし。でも作品を作るって行為はただ段取りを組むだけではなく、常に心を動かしながら取り組む方がモノ自体も活き活きしてきますよね。そこが楽しい部分でもあるし、大変な部分でもあります。受験のための勉強を始めてからの知識だけでなく、今まで生きてきた20年近くの体験や感覚も大事にものづくりを楽しんでほしいです。そうすることで彫刻がよりスリリングなものになるはずです!

では最近の生徒作品の紹介に移ります。

 

 

暗がりへ射してきた光がモチーフを照らす様が魅力的です。一番目線を持っていきたいのが牛骨とのことだったので、もっと画面の視線誘導を作り込んでしまっても今回みたいな作品の場合は良かったかもしれません。

モチーフ同士の関係性や取り巻く空気を意識して素描できました。この感覚をどんな時も大切に!

正面からのルックが印象的な構成です。狙いは伝わるので、電球ソケット周りの接点の緊張感や横アングルからの見え方が単調にならぬよう気を配りましょう。

円盤投げという彫刻のもつ立体的な関係性を絵の中で合わせていくことが出来ました。部分の絵画的な描写の詰め込みよりも全体の設定を噛み合わせることに熱くなれるとgoodです!

上のデッサンを経ての組み石膏デッサン。良い感じです。モーゼの向かって右上のマスクの淵の処理がやや線的なのとマスク自体の厚みがもう少し感じられるとなお良いです。

基礎科生の作品です。今までよりも空間や奥行きを意識したやりとりが出来ていていいですね!向かって右の目が若干はずれて見えますが作品作りとしてとても良い取り組みです。

夜間部生の作品です。3つのモチーフを組み合わせて塑像板の上に新しい流れや関係性を無理なく表現出来ました。構成の方向が見えてきてからはどんどんモチーフらしさを汲み取っていきましょう!

 

今回は以上です、ではまた。

彫刻科 12月頭の預かり作品。

こんにちは!彫刻科の小川原です。

ここ数日で一気に寒さが増してきましたね。でも受験はこれからどんどん熱くなっていく!!
4月から積み重ねてきて一通りのことができるようになってきて、ここからはどんどん結果を出していきたいところです。
むしろ失敗しても良いので守りに入らずに作品と向き合い、挑戦してその作品がどのようなものにできたかを繰り返し反省していきましょう!まだまだ入試までにたくさんの課題をこなしていくので、その中で少しでも良いビジョンを手に入れられるようにしたいです。そのためにはそれぞれ意識を高く持って取り組む必要がります。

「作家としての意識」

これがあるでしょうか?ただデッサンや塑像を受験のためと思って、受験に受かるために上手くなりたい。と思ってはいませんか?それでは全く不十分です。そのような考えで大学に入って、「はい。じゃあ自由に作って。」と言われたらなにもできないんじゃないでしょうか。
たかがデッサン 。されどデッサン 。その人がどういう考えでその作品を制作したか、見る人が見ればすぐにわかってしまいます。実技作品を見て、

「お!この人は作品を制作する意識の高い人だ。この人に彫刻を教えたいぞ」

と教授に感じさせることができたら合格できます。受験生にはそのようなことも見られているということを知っていて欲しいと思います。

それではここ最近の秀作を紹介します。

昼間部生の作品

リアリティのある表現について、なかなか実感できずにいましたが、ちょっとしたことで一気に魅力的な作品に持ってくることができました。意思を感じます。

出だしから生き生きとした土付が魅力的でした。途中構造的に人間ではありえない狂いがあった状態で割と長い時間過ごしていたので、そういう時間をできるだけなくしていきましょう。

形の不一致感、印象の悪さに苦戦していましたが、ようやく波に乗ってきました。油断するとまた元に戻ってしまいます。意識を常に高く持って(全開よりあげるくらいの気持ち)いきましょう。

夜間クロッキー教室での1枚です。細部に囚われず、動きの魅力。人体としての連動が素晴らしいです。

夜間部生の作品

炭の質が明快でとても良いです。途中苦戦した顔は良くなりました。なぜそうなってしまったのかしっかり考えて次回に生かしましょう。

基礎科生の作品

陰側の表現について研究中です。徐々に光側と響き合ってきて、以前より魅力が増してきました。

迫力と臨場感のある描写が素晴らしいです。終盤にちょっとしたアドバイスをしましたが、すんなり取り入れられて、空間性や量感が増してきました。

この一枚で大きな進化を遂げたと思います。見方やテクニックをどんどん吸収していってください。自由自在に描けるようになると思います。

粘り強い描写が魅力的です。後は出だしの形や印象の精度を高めていくことに拘っていきましょう!

 

以上です。毎年合格していく人は、結局教えることはもうないから、後は自分が満足する作品ができれば良いよ。というレベルになって受かっていきます。
今年の学生も早くそのレベルまで到達できるようにしっかり支えていきたいと思います!頑張りましょう!

 

 

 

彫刻科:11月になりました

こんにちは、講師の新妻です。公開コンクールも終わり、二学期もあとひと月ほどです。

採点、講評をした感想としては、もっと席から観た時のモチーフの印象をじんわり味わって、絵の見え方が複雑化する前の要素(主に構図、比率、動き、視点)を大事に考えて欲しいなぁと感じました。6時間の制作時間の前半戦ですでに勝負がついているデッサンが多かったんじゃないかなと。モチーフの魅力に繋がる要素をどれだけ見つけられたか、どれだけ冷静に絵の状態を把握できていたかがそのまま順位に結びついている印象を受けました。

と同時に、描き手それぞれの熱量やストロングポイントが伝わってくる作品も多くありました。試験までの残り時間で何を課題として考え、どう対策して良い方向へ自分を導いていくか、そのきっかけを掴むためのイベントになっていれば幸いです。芸大受験、特に彫刻科の受験に関しては、個々人の独創性や特殊能力バトルではなく、いかに自分が気をつければできる「普通のこと」を冷静に判断して現場に置いてこれるかが勝負の分かれ目になります。是非「判断する力」を養ってください。

では最近の秀作紹介に移ります。

公開コンクール1位作品でした。シンプルに、一番ブルータスを構成する要素を正確かつ明快に捉えていたデッサンでした。頭部の描写やカッティングラインのヌルさなどまだ突っ込みどころはあります。

描写の密度と空間のスケール感が気持ちいい一枚です。手前肩の、光を受けていながらも奥の顎に対して迫り出してくる距離感がもう少し出るといいですね。

仕上げに向かう中でも固く単調な方に向かわずに自然に形を詰めていけました。首の張りと頭部の密度のテンションなどはまだ深追いできそうです。

きちっとやりきりました。その過程での「実感を伴った土付」が、基本的なバランスを合わせて以降の模刻には必要不可欠です。

今まさに落下してきたような動きのベクトルが魅力的な構成になりました。仕事の段取り、気遣いと警戒、作り込みの精度と踏み込みなど、トータルコントロールが至極真っ当なやり取りは見守っていて安心するものがありました。

シンプルな構成ですが、逆にいえば構成で余計なことをせず、作者の模刻力の高さを自然にアピールできている点で確実に評価できる作品といえます。配置でカッコ悪い見え方を避けていく、それだけでも自然に良いものになるんです。

夜間部、基礎科生の作品です。

ガッタメラータらしい厳しく高潔な表情をよく捉えています。体、顔に対して、頭部全体の形態感がつかめてくると尚良いですね。

今までにない空間性とトーンを駆使した光の表現が魅力的です。顔の表情がもう一歩迫れるとさらにカッコよくなりそうです。

今回は以上です。ではまた。