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1学期末コンクール

こんにちは。彫刻科の小川原です。1学期の最後の週末にコンクールを行いました。
1学期の集大成として優秀な作品が幾つも出てきたのでこれからの指標としていいコンクールだったと思います。
それでは作品を見て行きましょう。
木炭デッサンはガッタメラータがモチーフでした。ガッタメラータは動きの強い像ではありませんが、微妙な軸の傾きに難しさがあります。特に正面から左側45°くらいの位置(横顔位置)あたりはパースなども相当意識してかからないと説得力のない描写になってしまいます。特徴的な形を持っている像なので感覚的な作業になりがちですが、むしろこういう像こそいつも以上に構造感に対する意識を高く持って制作に当たると良いです。
1位、R.Yくんの作品。
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バランスよく全体がつかめていて、落ち度なく網羅されています。実直な探りの積み重ねが評価されました。一つ一つの形には集中して取り組めても、全体を一つのものとしてコントロールしていくことはなかなかできることではありません。しかし彫刻としてはそこが一番重要であると言えます。どれだけ視野を広げられるか、そこが受験でも大きなカギになってくるのだと思います。
決して派手なデッサンではありませんがモチーフとの丁寧な対話が感じられる秀作です。

2位、K.S君の作品。
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色幅が豊かでスケール感のある作品に仕上がりました。エンブレムも印象良く丁寧に描かれていて好感が持てます。手前の肩の断面が色で終わってしまっていて形になっていないのと、顔の反対側が想像できない(ややパースに狂いがある)事が作品の雑味になっていることが非常に惜しいところです。見落としがなくなれば誰より目を引くデッサンが描ける強さを感じます。

3位、Y.M君の作品。
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キレがあり、明快な炭使いが魅力的なデッサンです。この位置で難しいのが、像を正面から見た時に首が体の中心から出ているように見えるかということだったりするのですが、この作品は首の描写が弱いためにその辺がやや曖昧になっているように感じます。頭部の大きさに対しての肩の大きさもやや小さいかもしれません。ここまで具体的に描き切れているので後は描いている最中に「見えているつもり」になってしまうのではなく、モチーフの本質を見極めていくことがこれから一層大切になっていきます。

素描課題は手と折り紙でした。今回の素描のコンクールでは残念ながら皆力を発揮できませんでした。と言うよりまだまだ手そのものの構造の理解不足であったり、魅力ある画面構成のために狙っていくべきポイントが分かっていないということが明確に結果として出てしまっています。手はいつでも描けるし、彫刻では出来て当たり前のようなものなので一層努力を深めていって欲しいです。
1位、A.Sさんの作品。
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ただ「持つ」ということではなく、ポジティブに折り紙と手の関係を遊んだのはこの作品だけでした。折り紙の質感表現に浅さは感じるものの、迫力ある画面構成が魅力的です。素描では常に攻めの姿勢で居てほしいものです。自分なりの作品性とはなにか。それを発見するための研究を皆に深めていってもらいたいです。

塑造は自刻像でした。自分自身がモチーフであるということは、他のどんな課題に対しても特別なものがあると思います。形を合わせる。ということだけでなく、自分自身の内面や、精神性、今まで生きてきた歴史など、様々なことを考えながら制作に取り組んで欲しいです。評価する側としては形は合っていて当たり前で、実はそれ以上のものを求めているということを覚えていて下さい。形が取れない段階の人は一刻も早くそれをクリアして、形ではない部分での作品性についても深めていきたいです。
1位Y.M君の作品。
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作品として向かうべき方向をしっかり見極めて、責任をもって言い切りが出来た作品です。作品の放つ眼差しに意思の強さを感じることが出来て、作品に対する真摯な思いが伝わってきます。6時間でここまでかたちにすることができたらいうことはありません。あえて言うならこれから先さらに上達して手が早くなった時に、表面に走らないで欲しいということです。これ以上の物を目指すには相当レベルの高いやりとりが必要です。作品にとって必要なこと、不必要なことを見極めて、彫刻作品としての魅力を更に高めていって欲しいです。

2位、K.S君の作品。
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モデル首像に引き続き、生きた土づけによって生命感を引き出すことに成功しています。皮膚の内側の筋骨を含む形の構造感から得られる緊張感が素晴らしいです。ただ単純に形を捉える。ということではなく、「土の魅力」を取り込んでいくことで作品の可能性は無限大に広がっていくのだと思います。そうした感覚的なものの見方は受験期以降の大学や、将来作家になった時に必ず役に立つことでしょう。

3位、R.Y君の作品。
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彼の持つ骨格構造の強さが作品としての魅力につながっています。形の厚みに迫力を感じる部分がとても良いです。やや顔の表情に弱さがあり、髪の生え際の影に負けてしまっています。生え際はこれでよいので、さらに顔を強く見せていく工夫があると一層よくなるはずです。やはり陰を利用すること。場合によっては上向きの顔を少し戻してみても影が落ちるので良いかもしれません。すぐに出来ることなので次回が楽しみです。

以上です!どうでしたか?1学期後半に入ってレベルがグッと上がってきたのを感じます。特に上位を常に争っているメンバーは既に一定のレベルを超えたものが見えてきているので、周りより一段階高い次元で作品と向きあえていると思います。もちろん他のみんなもしっかり力をつけてきました!あとは自己推進力を高めていくことです!自分の力でどんどんどんどん突き進んで下さい!これから半年が本当に勝負になると思います。一課題ごとに少しずつでも前進できるように目的を持って制作にあたりましょう!

新美先端、夏期講習会【前期】はじまります。

先端科です。

夏期講習会「前期」のお知らせ。

新美先端科の講習会は、前期と後期に行われます。

前期は1次試験対策(素描・小論)、後期は2次試験対策(総合実技・作品制作・ファイル制作)です。

【前期】

7月20日(日曜日)?27日(日曜日)までの8日間のコース

7月22日(火曜日)?27日(日曜日)までの6日間のコース

※6日間のコースは高校生のスケジュールに合わせています。

授業時間は9:00?18:00の8時間です。

小論、素描とコースに分かれての授業です。

【小論】

「小論文」という言葉を聞いただけで、どこか身構えてしまったり、自分に書けるだろうかと不安になってしまうという人もいるかもしれませんが、心配することはありません。先端科の入試で求められる能力は、そのような心配とはもう少し別のところにあるからです。

まずは「小論文」ということにあまりとらわれずに、自分が「おもしろい」とか「なぜか気になってしまう」とか「わかりたいのにわからない」とか、少し時間をかけて考えてみたいと思える事柄を見つけ、それについてしつこく考えてみることから始めましょう。そのときに、文章にする、文章を書くという行為が考えを先に進めるための助けになってくれます。言葉や文章を使って物事を考えることは、自分のアイデアを発展させたり、さらにそれをかたちにし、他者に伝えたりするための力を鍛えることです。新美の小論文の授業では、一日一つの課題に取り組んでもらい、ひとりひとりのアイデアの種が、それを論述するなかでどのような方向に成長していったのか、ときにはその先の可能性までを、丹念に観察しつつ講評していきます。

課題文は、講師が毎回幅広い歴史や分野の中から、私たちが生きているいま現在考えるべきテーマや視点、トピックを含むようなものを出題しています。小論文を書く行為自体は個人的なものですが、他の人が同じ問題についてどのように考えたのかを知ることができるのも、授業ならではの大切な経験になるはずです。

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【素描】

素描は、1日1課題、基礎と応用を織り交ぜた課題です。

基礎課題では、デッサンの基礎からはじめますので、これまでデッサンを描いたことの無い人でも気楽に参加してください。物をしっかりと観察し、捉えたものを画用紙に鉛筆で表現することは、普段の作品制作と重ね合わせることもできます。「いかにして目の前の世界が成り立っているのか?」美術作品には欠かせない問いです。対象を捉えることと表現することを同時に試みることも素描の特徴です。この機会にじっくりと素描に取り組んでください。

※モチーフに人物モデル、動物、そして塑像(粘土での造形)も予定しています。

素描

木彫作品制作1 頭部の内ぐり作業。

こんにちは。彫刻科の小川原です。僕の制作ですが頭部も佳境に入っていきます。
毎回作品は体の中が空洞になっていて、目は空洞にしています。なんで目を空洞にするのかと言うと、目があると生身の人間の印象が出てしまいますが、僕はもっと神聖な印象の作品にしたいと思っているからです。そういった意味ではいわゆる「生命感」から出来るだけ離れたものにしたいと考えています。
という訳で頭部が大分形になってきたところで頭部の中を空洞にする作業を行いました。

いきなりですがのこぎりで顔面を切り離します。
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ここから内ぐり作業開始!
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空圧で自動で彫り込んでいける鑿や、エアーリューターで内側を削ってお面みたいな形にします。
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次は本体側の作業です。ドリルでどんどん量を削り落としていきます。
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ドリルの隙間を鑿で落とした状態。
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目や口から入った光で内側が見えないように中は黒一色で塗りつぶします。
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あとはダボ(プラモデルを組み立てる時に合わせる突起のイメージ)を差して接着剤でくっつけます。今回はゴムバンドで固定。なんかコソ泥スタイルになってしまいました(笑)
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次回は耳を彫り込んでいきます!

一学期終了!

基礎科講師の佐々木です。
ついに一学期の授業が終了しました!
基礎科最後の課題は専門課題の日本画とデザイン、デッサンは石膏と自画像でした。

 

今回の日本画のモチーフはこちら。
夏らしいけれど、ちょっとシャープな印象のモチーフにしてみました。

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出来上がった学生作品です。
まずはデッサンの段階。

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そして着彩!
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まだ拙い部分はありますが、今の時期にこの仕上がりはなかなかの安定感ではないでしょうか。
難しいガラスや水の表現がとても良く出来ています。

 

日本画以外の作品も、一学期最後に力作が出揃いました。

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一学期を通してしっかりと積み上げてきた基礎力を、夏期講習で練り上げて揺るがない実力にしていきましょう!

私立デザイン補習②

こんにちは、大島です。
というわけで補習第2回です。
前回はヨハネスイッテンの色彩論について書きました。みなさん色彩の対比について調べていただけたでしょうか。まだなら、いますぐにでも調べてみてください!

さて、デザインの基礎で大切なことは「色彩」のほかにもうひとつあります。
そうです、「構成」です。
ちょっとソレっぽくいうとComposition(コンポジション)というやつですね。

現代のビジュアルデザインにおいて色彩の考え方がヨハネス・イッテンなら、構成の考え方はワシリー・カンディンスキーという人がベースになっています。
(ここでは詳しい説明は省きますが、どちらもドイツの美術学校、バウハウスの先生でした。)

構成とは、これまた前回のようにざっくりと説明すれば、「Element(エレメント)=要素をどう組み立てるか」ということです。

みなさんはその構成する力を磨くために日々受験勉強に勤しんでいるわけですが、カンディンスキーは構成に使われるエレメントを3つに定義しました。

それは点・線・です。

色が原理的には「赤・青・黄」の3原色からできているように、いわば構成も「点・線・面」の3つの主要素をいかに扱うかが基本となるのです。

(厳密に言えば平面上に描くときは点や線もある意味では面として扱われるでしょうから、その境界は曖昧ともいえますが。)

線には直線曲線の2種類があります。
平面上のあらゆるカタチは直線と曲線の組み合わせによって作ることができます。そして曲線にはフリーハンドで描いたような自由曲線と、道具を使って描いた幾何学的曲線があります。

また、その線や面を使って描けるカタチは無限にありますが、円・三角形・四角形が基本的なカタチです。それらのカタチが人間にとって判別しやすく、古来よりなじみ深いそうです。

「構成」と聞くと難しく思ったり、よくわからないと思う受験生も多いと思います。事実、絶対的な正解というものはありません。

しかし、その基本として「構成」とは「点」と「線(直線、自由曲線、幾何学的曲線)」と「面」、そして「円」と「三角形」と「四角形」の組み合わせというシンプルな原則をおさえておけば、構成することがきっともっと楽しくなってきますよ。

 

kandinsky
《trente 》  Wassilly Kandinsky