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映像科:感覚テストにおける色彩表現

こんにちは。映像科講師の野澤です。武蔵美映像学科の感覚テストでは、鉛筆に加えて色鉛筆やパステルを使うことができます。そこで今回は、デザイン系の学科とも、ファインアートの学科とも微妙に異なる、映像科の試験対策における、色鉛筆の使い方のポイントについて解説していきたいと思います。

デザインと映像で、色彩に対する考え方はビミョーに違う

それでは、デザイン系の学科と映像科で、色彩の使い方はどのように異なっているのでしょうか。非常におおざっぱに言ってしまえば、「モチーフに対する色使いの恣意性(自由度と言い換えてもいいでしょう)が、デザイン系では高く、映像科では低い」ということです。

デザイン系の実技試験では、モチーフのシルエットをトリミングしたり、抽象的な幾何学図形を組み合わせるなど、高い画面構成能力が求められます。つまりデザイン系では、色彩は画面構成の一要素であり、モチーフにどのような色を載せるかという恣意性は高くなります。

一方、映像科の学科試験では、映像的な「シークエンス(場面と言い換えてもいいでしょう)」を表現することが求められます。つまり映像科の試験において、自分が表現したいシークエンスに対して、どの色を主調色に持ってくるのかは「その出来事が起きている場所はどこなのか、季節や時間帯はいつなのか、その出来事を見ているのは誰の視点なのか、その人物は何を思っているのか」といったシークエンスの諸条件から決まる、ということです。明度-彩度-色相という技術的な面から発想した色使いは、しばしばシークエンスを表現するという目的からズレてしまうことに注意しましょう。

たとえば、リンゴの色を決める時、デザイン系では、形態と色彩をいかに構成するかという、抽象的な関係性から考えてゆきます。このとき、リンゴの固有色を使わないという判断も十分ありえます。それに対して、映像科では、たとえばリンゴの色を敢えて青くした場合、そのシークエンスに「青いリンゴ」が登場する根拠があるかどうかが、問われてくるということです。

映像科志望も押さえておいた方がいい、色相・明度・彩度という考え方

さて、いろいろ前置きが長くなりましたが、こうした違いさえ理解しておけば、色鉛筆は感覚テストで、シークエンスの雰囲気を表現したり、シーンの焦点を際立たせるための有効なスパイスとして使用できます。色相・明度・彩度という、3つの属性で色彩を考えられるようにしておくことは、映像科の対策でも憶えておいて損はないでしょう。

色彩は、色相・明度・彩度という3つの属性で考えることができます。

fig1

・色相
色相は赤、黄、緑、青、紫といった色の違いのこと。この色相を並べたものを色相環と呼びます。色相環の反対側に位置する色同士は、反対色もしくは補色と呼ばれ、最も対比が際立つ色の組み合わせとなります。

・明度
明度は文字通り、色の明るさのことです。明度を上げていくと明るくなり、明度を下げていくと暗くなります。

・彩度
彩度は色の鮮やかさのことです。彩度を上げていけばビビッドな色になり、彩度を下げていけばカラーの無い白黒になります。絵具や色鉛筆は、異なる色を重ね合わせると、濁った色になり、彩度が下がることに注意しましょう。蛍光色は特に彩度が高い色です。

シークエンスを際立たせるために、補色を利用する

さきにのべたとおり、映像科の試験において重要なのは、たんに抽象的な関係性から色が設計されていることではなく、映像を表現するという目的に合わせて色が選ばれている、ということです。しかし、特に映像で焦点となるような人物やモチーフを表現する際、補色対比が使えることは、いざというときプラスになるでしょう。補色とは、色相環の反対色同士のことです。2つの補色を組み合わせることで、対比的な色の組み合わせを作ることができます。

fig2

色鉛筆でテクスチャを作る

色同士の組み合わせよりも重要なのが、鉛筆のタッチでつくるさまざまなテクスチャです。色鉛筆の尖り具合、描線の方向、画用紙の凹凸、ガーゼなどを生かして、いろいろな質感を表現できれば、感覚テストにおける色鉛筆の使い方はぐっとひろがるはずです。制作の中で実践していきましょう。

fig3

enart くにたち 基礎科

enart 国立 基礎科です。

制作風景1

夏期講習会が終了し、9月4日から2学期がスタートしました。

基礎科も2学期入学の学生や、これから始める無料体験入学の学生たちで
受験科に負けず、にぎわってきました。

今回は、夏期講習会での基礎科生作品を少しだけ紹介します。

◯油絵コースです。
藤原  油絵3

油絵2      油絵1

 

◯デザイン・工芸コースです。

新井      平面構成2

平面構成3  立体3

立体1 立体2

みんなこの夏に随分上達しました。

この調子で2学期も頑張りましょう。

日本画科便り9-二学期開始・日本画科レクチャー①?

日本画科です。秋色次第に濃く、朝夕はだいぶ涼しくなってきました。

今月4日より二学期が始まりました。

 

8日~13日までは、日本画科二学期始めコンクールです。もちろんこの間の指導はありません。昼間部はデッサン(鉛筆素描)、着彩(着色写生)、構成の3課題。夜間部はデッサン(鉛筆素描)課題。デッサン(鉛筆素描)は昼間部と夜間部の合同採点です。

 

今年度の夏期講習会は、特に夜間部生の意識の変化を強く感じられるものでした。それぞれの絵の成長もさることながら、講評中の眼差し、メモを取る態度、講評後の質問など制作に臨む姿勢や取り組み方が受験生らしくなってきたと思います。この良い状態を保ちながら一歩一歩前に進んでいってほしいと願っています。

 

そのコンクール講評日に、新宿美術学院校長で工芸科前主任の三上校長よりデッサンレクチャーを開催します。

①「三上校長 デッサンレクチャー」9月13日15:00?16:00

9-2?←昨年度の三上校長 デッサンレクチャーの様子。

9-1

 

二学期ではデッサン課題、着彩課題の通常課題のほか、面談による個人指導、校外授業、私大対策、さらにはAO入試対策などの課題を準備しています。

さらに、日本画科レクチャーとして新美各科主任クラスの講師を招いて体系的な実技レクチャーのほか、講師デモンストレーション&指導などを組み入れていきます。

 

― 最後に。

10月には「全国公開実力コンクール」があります。今年度は10月12日と13日。課題は「着彩写生」です。詳細はホームページよりご覧下さい。皆さんの参加を心よりお待ちしております。

 

 

ボッティチェルリの「ヴィーナスの誕生」と「春」について①

こんにちは。油絵科の関口です。最近は各地でで大雨が降ったり、東京ではデング熱が流行したり、日本も熱帯地方の仲間入りをしてしまった様なニュースが続いていますね。これから台風シーズンに突入しますし、心配している人も多いと思います。全国に穏やかな季節が訪れる事を祈っています。

 

ところで、皆さんはこの絵をご存知ですよね??ヴィーナスの誕生1
そう。ボッティチェルリの描いた「ヴィーナスの誕生」(1485年頃)です。今日はこの作品の作者、サンドロ・ボッティチェルリについて書こうと思います。
とても有名なこの作品ですが、カンバス(キャンバス)にテンペラで描かれています。油絵ではないんですよ。知っていましたか?

※テンペラとは、簡単に言うとメディウム(接着剤)に卵を使った絵具です。(実際には色んな種類がありますが、長くなりますので、ここでは割愛します)

ヴィーナスの誕生」は明るく、健康的で、優雅な雰囲気を漂わせ、ボッティチェルリらしい特徴が至る所からにじみ出てきています。嫌味のないその作品が500年以上に渡って世界中の人々を魅了してきたのも納得がいきます。ヴィーナス顔1
僕は学生時代、友人とイタリアで本物を見ましたが、その時の印象は「わ?。本物だ?。でも意外とザックリ描かれているんだな?」とまるで素人(笑)みたいな事しか浮かばなかったのです。既に画集などで図版を見ていたので、その印象との違いを比べる位しか出来なかった様な気がします。逆を言えば、それは「図版でも一度見たら忘れられない程の印象を植え付けてしまう、普遍的なデザイン性を持っている」という事なのかもしれませんね。

 

ところで、この作品のすぐ近くにボッティチェルリのもう一つの代表作「春(ラ・プリマヴェーラ)」(1477?1478年頃)が展示されています。この作品は板にテンペラで描かれています。春
こちらも旅行前に図版でよく見ていたものですが、この作品の方が実物を見た時の印象は強く残っています。・・・と言っても「すげ〜。無茶苦茶綺麗だな〜」という、やはり素人丸出し(笑)の感想しか出てきませんでした。

「ヴィーナスの誕生」と比べると「春」は全体のコントラストが強く、それでいて繊細。隅々のかなり細かい所まで描き込んでいます。中でも足元に生える植物や花々は非常に美しく、タイトルの「春」を感じさせる名脇役として、文字通り花を添えています。研究者によると、ここに描かれた殆どの花々は今でもフィレンツェ周辺で見る事が出来るそうです。春の部分2
これは右端下の部分。本当に細かいところまでよく描いています。

ちなみに、この作品は1980年代に修復され、足元の暗闇の中から克明に描かれた植物が再発見されたそうです。余談ですが、油絵科の海老澤先生曰く「私が見た時には、コントラストの強い花はともかく、葉っぱなんか凹凸のマチエールだけで、色も何も見えなかった」との事です。

 

大らかな印象の「ヴィーナスの誕生」と、繊細な印象の「春」という二つの代表作。これらは同じ部屋に展示されているので、否が応でも比較してしまうのですが、同一作者の作品でありながら、この違いは一体どうして生まれたのでしょうか?

今回は長くなりそうなので、来週この続きを少し掘り下げて書こうと思います。

 

こんにちは。通信教育です。

皆さんいかがお過ごしでしょうか?

2学期9月ターム課題発送致しました。
いよいよ2学期が始まりましたね。
自分が納得のいく制作をしていけるよう、
環境づくりや制作時間を確保し、
あせらず、じっくりと取り組んでいきましょう。

これからの始める方も随時申込お待ちしています。

詳しくはこちらをご覧ください。

 

2014.9.4