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平成27年東京藝術大学建築科入試 Q&A

こんにちは、建築科講師の半田です。

 

今回は、これから東京芸術大学の建築科を受験しようと思っている方へ、いままで回答したことのある質問に答える形で、受験情報をお伝えしようと思います。

 

 

 

Q 一般大学の建築科と芸大の建築科は何が違うのか

 

A 一般大学の建築科は基本的に、構造や環境、素材、設備、都市、理論など、建築の中の様々な分野に学生を送り出します。そのため、数学の授業が続き、座学も多いです。意匠設計ももちろんやりますが、入学者全員が最後までずっとやれる訳ではありません。

一方芸大の建築科は、入学してすぐに意匠設計の課題が始まります。デザインに特化した教育プログラムがあり、実技での単位が100単位程もあります。もちろん、上記の各分野の座学もありますが、すべて意匠設計のための知識を蓄えるものとしてあります。また、一から何かを教えてくれるということはなく、いきなり専門的な教育がはじまるので、自分で勉強して行く必要があります。予備校時代が1年生、といった感じに捉えていただければ良いと思います。

 

Q 一般大と芸大とで就職先の違いはあるのか

A おおきく言えばありません。建築の世界は大学の名前より、個人の能力が問われるものです。しかしそれはあくまでも意匠設計をやって行くならば、という話で、別のジャンルに行きたければ話は別だと思います。

 

Q 絵がうまくないのだが、やれば芸大合格レベルに到達できるか

A できます。

まず、絵がうまい人というのは、何が優れているのでしょうか?

答えは、目です。客観的に対象物を見つめることのできる人が、絵のうまい人です。

しかし、デッサンというのは皆さんが思い描いている絵とは違います。デッサンに感情移入はまったく必要ありませんし、デッサンのすべては数学的、あるいは工学的に、頭で理解すれば誰にでもできるものです。それは目を養う行為であり、成果物は紙の凹凸に応じた黒鉛の集合なのです。もちろん、もともと絵に自信のある人は、感覚が優れているので上達も早いのですが、デッサンは筋トレです!やれば確実にだれでも出来るようになるものです。ただし、一人でひたすら描いても上達しません。正しい目を持っている人に見てもらう必要があるからです。そのために、アトリエに通うのです。同級生の絵を見ることも大切なことです。新美では徹底してデッサンの技術を叩き込みます。

いったいどんなデッサンを描くのか、空間構成の参考作品をいくつか挙げます。

 

参考作品11 参考作品10 参考作品

 

Q センター試験はどれくらいの点数が必要なのですか

A  センター試験は5教科6科目(新課程、理科基礎を選択する場合は7科目)で、平均点が8割は必要です。しかし、8割5分を目安と考えた方が良いと思います。合格者には9割以上点を取っている子もざらにいますので、デッサンに相当な自信がない限りは、8割5分がとれるくらいの対策は必要と言えます。受験は一生で一番頑張るときです。やれば、かならずできます。

 

 

Q アトリエはどこも週末だけしか授業がないと思いますが、それ以外の時間で、勉強のほかに何か個人的にするべきことはありますか?

 

A自分が良いと思う空間や嫌いだと思う空間についてエスキス帳などにスケッチや文章で記述し考察すること。また、あらゆる幾何形態をあらゆる大きさを想定し、あらゆる角度で正確に描く練習をすること。ひととおり出来るようになったら、次はその幾何形態同士を貫入させた図を描くこと。どんなに角度がふれていても、どんな貫入度合いでも描けるようになれば、ライバルに大きく差を付けることが出来ます。あとは、幾何形態を切断した図も描く練習をしたほうがいいです。新美ではそういったことを生徒に課していて、プレゼンテーションさせたりもします。芸大に受かる為にはすぐれた対処能力が必要ですが、こういった訓練がそのひきだしを増やすことになるのです。

しかし現役生は、今やっている部活や行事などを、まずは思いっきり楽しんでください。そういった経験が将来必ず活きます。

 

 

 

入試→卒制

こんにちはデザイン科の大島です。
芸大デザインの合格者は2名(うち内部生1名)と残念な結果となってしまいました。
1年間この予備校を信じてついてきてくださった学生と保護者の皆様には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。

自分自身は私立の担当といえども、もはや他人事ではなく、この結果をデザイン科講師一同しっかりと受け止めて次年度に繋げなければいけません。

先週末、多摩美術大学グラフィックデザイン学科の卒業制作展に行ってきました。

この3月で多摩グラを卒業する学生は、デッサンが「ふろしきでものを包む両手」、色彩構成が「2匹の蝶とちょうちょうの文字」の年に合格しました。

せっかくなのでその年に新美から合格した人の作品と、卒業制作展にあった作品を合わせてみてみましょう。

まずこれ。

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実物と色がちょっと違っていますが、こんな感じの作品を描いて1浪で合格した学生がいました(彼女はこのあいだまで新美の学生講師でもありました)。
色彩構成のほうは多摩美の参考作品集に掲載されており、それ以降この表現に類似した作品を毎年のように見かけます。じつはそんなに高得点ではないそうですが!(本人談)

彼女の卒業制作はこんな感じでした。

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タイポグラフィ、なんだけど紙のキワが焼かれてたりしてる。ほかにも細い線が描かれてる作品もありました。コンセプトは読みましたが失念しました!詳しくは多摩美の学内展で探し出してみてください!申し訳ない。。。

 

つぎ。

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これは現役で合格した学生です。彼女もまたこのあいだまで新美の講師でした。
彼女は当時、現役生にも関わらず浪人生を上回るほどのデッサン力をもっていました。それに比べると、グラフの色彩構成の方は最後まで安定せず、試験後に本人に作品の出来を聞いたら「2色で描いてしまいました…」「2匹の蝶がわかりにくいです…」と自信なさげにいうので、正直ダメかもな?、と思いました。

しかしデッサンと学科は安定して点数が取れており無事合格。
この色彩構成も結果的には7割程度の点数がついており、大きく足を引っ張ることはありませんでした。そんな彼女の卒業制作はこんな感じでした。

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父の写真のスケッチ。詳しいコンセプトはプライバシーにも関わってきそうなので、詳しくは学内展でキャプションを読んでみて下さい。

デザインというよりかは、個人的な体験が根底にある作品です。つまりアートよりのアプローチです。多摩美のグラフィックの卒展のように、ひたすらにポジティブな作品が並んでいるお祭りのような場にあると「損」な作品ともいえるかもしれませんが、こういうのがあっても良いと思います。

つぎ。

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これまた大胆な作品でしたねー。真似しようとしてもできない。参考作品集には掲載されていませんでしたが、多摩美の説明会で掲示されているのを見ました。なにげに高得点です。

彼はこんな写真の作品を展示していました。
(連作でもっとたくさん並んでいましたが、わたしのカメラではこれが限界でした。全貌は学内展で!)

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この分割された画面を見た瞬間、絶対これだ!と思いましたね。
受験時代から変わらぬこの感性。大切に。

この年は合格者が多かったのでまだまだあるんですが、再現作品が見つからなかったので、とりあえずこのへんで。

番外編。

同じ年、こういう作品を描いて多摩グラに合格した現役生がいました。

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想定にもかかわらずこれだけ大胆なアイデアを本番で描ききるなんて見事ですよね。
とうぜん高得点でした。

しかし彼女は倍率で言えば1番人気であるグラフを辞退して、同じ多摩美の情報デザイン学科に進学しました。もともと情報デザインに進学したいとは聞いていたものの、両方受かったらたぶんグラフに進学するんだろうな、と思っていたので、その事実を聞いたときにはびっくりしました。
(最近では高倍率の学科を蹴ることは珍しいことではなくなりましたが…)

写真 2015-03-08 15 48 33

そして先週のことですが、情報デザイン学科の卒業制作展で彼女はこういう作品を展示していました。

「ぼんやりのとき」という絵本というのか漫画というのか、まあ、とにかく本です。

本としての完成度もさることながら、繊細で私的な感性を大切にした内容は、目立つことはなくとも心に響くものがあり、やはり情報デザイン学科だからでこそ生み出すことができたような気がします。素晴らしい作品です。ぜひ学内展で手にとってみてください。

そしてもう1人、こういう作品を描いて多摩グラに合格した学生もいました。

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(田中一光にこんな曲線の作品があったような気がしなくもない。)

彼女は新美に入学した当初、とある大学の推薦入試を受験するつもりでした。
そして実際、9月頃まではその大学の推薦対策をしていました。
しかしとても感覚が良かったので、推薦入試が終わったあと、多摩美も受験することを勧め、最終的に多摩グラに合格しました。

ポテンシャルを秘めた学生だったので、大学を経てどのように成長していくのか期待していました。けれど、そのうちに大学にあまり来ていないという噂を聞き、ついには中退したという話を聞きました。

それ以来、彼女のことを心配していたのですが、ちょうど卒業制作展に訪れており、タイミングよく話すことができました。

どうやら中退したあとは、興味がある分野のアルバイトを頑張っており、この4月からはその仕事の延長で就職が決まったとのことです。心配するまでもなく立派に成長していました。すごい。安心したと同時に尊敬の念をも抱きます。

というわけでざっくりではありますが、こんな感じで紹介してみました。
こんかい参考作品が見つからなかったり、時間の関係でアニメーションはノーチェックだったので、また学内展などで気になる作品が見つかれば紹介したいと思います。では。

油絵の具について(色彩編)

こんにちは。油絵科の関口です。
少し暖かくなって、花粉症の人には辛い季節になりましたね。

 

さて今日は油絵具の色の話をしようと思います。
油絵具の色って沢山種類があって、初めての人は何を買ったら良いか分かりませんよね?長くやっている人でも、意外と色は何となく選んでいる人も多いのではないでしょうか?

10年くらい前に新美の油絵科講師陣で、基本色とは何か?という話になった事がありますが、驚くほどバラバラでビックリした覚えがあります。

「えー、これは必要でしょ?」
「いやー、それは無いよ」

議論したら、今でもそんな声が聞こえてきそうです。拘りの強い講師陣は、好みのメーカーもバラバラで、色によってメーカーを変えている人が多い、というのが特徴的でした。

僕の考える基本色というか、絵を描く上で最低限必要と思う色は以下の通りです。


・シルバーホワイト

黄系統
・カドミウムイエロー?※
・オーレオリン
・イエローオーカー

赤系統
・バーミリオン
・カドミウムレッド※
・クリムソンレーキ(又はローズマダー)

青系統
・ウルトラマリンブルー
・コバルトブルー
・セルリアンブルー

緑系統
・ヴィリジャン
・カドミウムグリーン※2
・テールベルト

紫系統
・コバルトバイオレット

茶系統
・バーントアンバー
・バーントシェンナー
・ローアンバー
・ローシェンナー


・ピーチブラック

 

※ カドミウム系の色は数色ありますが、緑以外は混ぜて作るのが難しいので、好きな色を数色揃えても良いと思います。

※2 カドミウムグリーンはカドミウムイエローとヴィリジャンの混色で作る事が可能です。

 

パーマネント?とか、コンポーズ?とか、?チントとか、?ヒューとかが名前に付いていない色である事が重要です。茶色系統や白と黒、あと数色を除いて、高い絵の具が多いですね。一度に全部揃えたら軽く1万円は超えると思います。
何で高いのかと言うと、絵の具の元になる顔料(色のついている粉)が高価なんです。

油絵の具1

 

基本色以外もありますが、オススメの色
・フレンチウルトラマリン(マツダスーパー)絶品!
・コバルトグリーンペール(マツダスーパー)
・ブルーコンポーゼNo2(マツダスーパー)
・スーパールビー(マツダスーパー)
・コバルトバイオレット(マツダスーパー)絶品!
・カドミウムグリーンペール(マツダスーパー)絶品!
・オキサイドオブクロミウム(マツダスーパー)
・オーロライエロー(マツダスーパー)
・テールヴェルト(マツダスーパー)
・ローアンバー(マツダ専門家用)絶品!
・ヴァーミリオン(マツダ専門家用)
・コバルトターコイズ(ホルベイン)
・コバルトブルー(ホルベイン、ヴェルネ)
・カドミウムレッドミドル(クサカベ)絶品!

 

 

僕は基本的に油絵具はマツダスーパー派で、カドミウムレッド系はクサカベを使っています。

使用顔料

この二つのメーカーは、ラベルの脇に使用している顔料の名称が書いてある、というところがポイントです。色の名前には様々なものが付けられていますが、使用している顔料はある程度限られています。ラベルをよく見ると、違う色の名前なのに同じ顔料を使っているものが多く存在しているのが分かります。

色数は沢山使っているのに、画面全体が似たような色になってしまうという人は、ラベルの脇をよく見て買いましょう。特に?チントとか、パーマネント?という名前が使われている絵の具は、数色の顔料を混ぜて作られた色です。

 

 

絵の具を購入する時、参考にしてもらえたら幸いです。

渋谷校開校イベント! 趙燁さん講演

こんにちは。
渋谷校も開校から2週間が経ちました。
3月体験にも多数の生徒さんに参加いただき、盛り上がっています!!

そこで開校イベントとして、趙燁さんをお招きしての講演会を実施することになりました。
趙さんは、新美で受験期を過ごし、武蔵野美大に進学。現在大学在学中ながら、様々なメディアでも取り上げられているボディペイントの作品など、幅広く活躍の場をひろげています。

受験生のころの体験談から、美大での生活のお話、そしてボディペイントのパフォーマンスも行って頂く予定です。
2015春期生、2014本科生対象。ぜひお申込みの上、ご参加ください。
http://www.art-shinbi.com/muryo-event/20150331.html

特待生試験のススメ

こんにちはブログ担当のオオシマです。
職場に行ったらアレが始まってました。合格者作品展示。

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いよいよ明日は東京芸術大学の発表ですね。

私は芸大コースの指導は担当していないのですが、前年度や1学期に指導したことある学生も多数いるので、やはり他人事とは思えません…。

さて、今日(12日)は特待生試験の第1回目だったようです。
特待生試験というのはざっくりいえば高卒生を対象にした「やる気や実力に応じて授業料安くしますよ」っていう制度です。

惜しくも今年度満足いく結果を得られなかった方は誠に残念ですが、受験を続ける以上はさらなる成長を目指して頑張りましょう。

第2回目は今月23日にあります。
まだ補欠待ちや合格発表を待っている段階の人もいるので、第1回目はそう多くの人は受けていないんじゃないかな?と思います。

こういう風に言うと「でも自分には実力もないし…」「特待生試験を受けて割引きされなかったら恥ずかしい…」と思ってしまう方もいるかと思います。というか、自分がそうでした。

でもその考え方はもったいない!です。
例えば特待生試験を受験することで3万円だけ安くなったとします。(例えばの話です。私は特待生試験については担当していないので詳しい割引率についてはわからないのです。)

年間の学費からすれば微々たるものと思うかもしれませんが、良さげな筆が10本は買えます。アクリルガッシュだったら100本買えます。鉛筆だったら200本買えます。画用紙だったら300枚は買えますよね。

ダメでもともとくらいの気持ちでも、次年度かならず志望校に合格するという意思さえ持って試験を受け、仮に通れば画材代の多少の足しにはなるんです。やる気さえあったら内部生はもとよりこれから受験を始めようとする方でも絶対受けたほうがいいです。

デザイン科の私立美大コースについては実技経験ゼロでも、学科試験で受験することができます。なので、一般大学受験からの進路変更の方も可能性があります。

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