こんにちは。油絵科の関口です。
いま国立新美術館で「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」という展覧会をやっていますね。ポスターには絵画史上、最強の美少女(センター)という今時のキャッチフレーズが付いていて、街中でよく見かけますよね。印象派が苦手な受験生は別として、美術が好きな人なら、既にご覧になった方も多いと思います。
ルノワールの描いた、このイレーヌというモデルは当時8歳という事で、あどけなさが残る美少女として描かれています。僕の中で印象に残ったのは、その軽やかで繊細な髪の毛の表現。その子にとっても自慢の髪の毛だったのでしょう。身体を覆い隠すかのように身に纏っています。
この作品を見た時、ある作品を思い出しました。それはフィレンツェのピッティ宮殿にあるティツィアーノが描いた「悔悛するマグダラのマリア」というもの。現地で本物を見た時、髪の毛の美しさにビックリした記憶があります。
ルノワールの絵とは異なり、モデルが成人なので重さを感じる髪の毛ですが、美しく潤いのあるキューティクルが印象的な作品です。
調子に乗って、今日はこのまま髪の毛の話で進めていきましょう。
絵画の中で「髪の毛をどの様に扱うか?」を意識して描いたと思われる作品は、他にもいくつか見受けられます。
こちらはフェルナンド・ボテロというコロンビアの画家が描いた作品です。ボテロはどんなモチーフもポッチャリおデブちゃんに描いてしまう作家さん。これはこれで結構可愛いでしょ?キャラクターや体型に目が行きがちですが、髪の毛の表現は非常に要領よく描かれており、技術力の高さを感じます。
髪の毛の表現では、日本の美術も負けていません。
上村松園「焔」
いわゆる怖い絵ですが、髪の毛に使われているボカシが着物の模様との対比を際立てているのが分かります。髪の毛を口に咥えているのが怖いですね。こんな仕草を現実世界で見せられたら、ドン引きしますよね(笑)。
版画の世界ではこんな作品もあります。
橋口五葉「髪梳ける女」
髪の毛を櫛で梳かす仕草を絵にしていますね。画像では分かりにくいかもしれませんが、髪の毛はかなり繊細に彫られています。顔は妙に無表情なのが、逆に印象的な作品です。
川瀬巴水「髪」
こちらは桶で髪の毛を洗っている状態を絵にしているのですが、構図が大胆で非常に面白い作品です。
3点とも日本人の長く黒い髪の毛を「美しさ」と捉えているのが分かりますね。
今回は洋の東西を問わず「髪は女の命」というのが、よく分かる作品の紹介でした。ではでは。