カテゴリー別アーカイブ: 新美


クリムトについて③風景編

こんにちは。油絵科の関口です。今年のゴールデンウィークは10連休ということで、旅行に出かけたり、家でノンビリしたり、皆さんも色々と計画を立てていることと思います。以前も書きましたが、都内では2箇所の美術館でクリムトの作品を見ることができますので、まだ連休の予定が決まっていないという人は、この機会に是非訪れてみて下さい。

さて、クリムトといえば煌びやかな人物画が有名ですが、実は風景画もたくさん描いていて名作が多いんです。クリムトの風景は彼の描く人物と同じように、平面的で装飾的な要素も絡めながら独特な世界を作り出しています。
タッチを使いながら、モザイクのように色を並べながら描いていますね。画面全体を覆う緑系統のグレーの中に、補色に当たるポピーの赤い花を散りばめ、見る人の目を楽しませてくれます。よく見ると数種類のお花が描かれていて、ボッティチェルリの「春(ラ・プリマヴェーラ)」の地面を彷彿させてくれます。


こちらの作品は細かいタッチで描かれた木の部分と、艶やかな水面の対比が美しい作品です。水面はクリムトが得意としていたモチーフの一つで、他の作品にもいくつか登場してきます。技術的な側面で捉えると、最初は上の方にある木と同じようにタッチを使って(ボカすことを前提に描いているので、少し粗めに描いている可能性大)油絵具を置いていき、乾く前に絵具のついていないハケ等で軽く撫でてボカしたのではないか?と推察されます。


こちらの作品も水面を狙って描いていますが、木のシルエットの他に映っているのは、森の奥にある夕日(朝日?)に照らされている雲でしょうか?オレンジ色の反射がとっても綺麗な作品です。前述した作品とは異なり、水面にはタッチをある程度残し、奥の方にある森を少しシットリとした表現で描いています。水面から生えている手前の植物には、少し長めのタッチを用い、抽象的でリズム感が心地よい作品に仕上がっています。


この作品はちょっと奥行き感はありますが、クリムトの作品の中ではかなり抽象的な作品と言えるのではないでしょうか?大胆なタッチでモネの有名な作品「印象・日の出」や日本画の福田平八郎の作品「漣」を彷彿させます。
左:モネ「印象・日の出」 右:福田平八郎「漣」


こうやってクリムトの風景を見ていくと、彼が意識的に正方形の作品に取り組んでいることがわかります。
僕も自分の作品で風景を描いているのですが、個人的に正方形というのは、あまり風景画に適したフォーマットでは無いように思います。ちなみにキャンバスのサイズに「Pサイズ」というものがありますが、これはフランス語の”paysage”(風景)に由来します。これは人物画に適したと言われる「Fサイズ」”figure”よりも細長く、横長に使うのが一般的です。(もちろん風景を描くのにPサイズを縦に使っても問題ありませんし、Fサイズだからと言って人物を描く必要もありません)
なお正方形は「Sサイズ」”square”で、「Mサイズ」は”marine”で海を描く用に作られ、一番細長いフォーマットになっています。
ただ、クリムトは好んで正方形というフォーマットに挑戦しているようです。平面的で装飾的なスタイルと正方形が彼の感覚の中でシックリいった…ということだと思っています。今の時代ならInstagramにピッタリなサイズ感ですね。

新宿校の6階には、クリムトの風景だけを集めた画集もありますので、他校舎の人や他科の人でも「クリムトの画集が見てみたい」という人は、是非6階の面接室を訪れてみてください。
長くなりましたので、今日はこの辺で。


彫刻科

彫刻科の新妻です。2019年度の本科授業が始まりましたね。昼間部生は基本を確認しつつ、造形についての理解をより深めてほしいし、夜間部生は課題や指導も新しいことだらけだと思うので受験生としての自覚と、なんでも柔軟に吸収していく素直さを持って日々の制作に向かってほしいと思います。

昼間部の4月はデッサン、塑像、彫刻1それぞれの出だしの考え方や捉え方をレクチャーを交えながら確認していくところから始まりました。なんでもスタートが肝心です!

いくつか生徒作品を紹介します。


模刻荒付特訓

3時間で大きな動きとバランスを合わせていくことができれば6割型完成していると言ってもいいんではないでしょうか。いい調子です!

荒付特訓後のブルータス模刻。後半での作り込みで道が逸れていくことなく仕上がりまで持っていけてると思います。上手いです。

夜間部はフォーンのトルソデッサン。

安定した描き出しからじわじわと修正と描写を積み重ねてフォーンの持ってる迫力が出せてますね。さらに形の抵抗感が感じられてくるとよりよくなると思います!

今回はこの辺で。


芸大デザイン総合コース

こんにちは。

◯奨学生面談、随時行なっています。

◯1学期授業は4/11(木)からです。

◯始まりは基礎的な課題から、要素を特化した課題を重点的に行ないます。
石膏クロッキー、3時間描き出し、細密描写、基礎色相ベタ、平面構成(コンセプト)、平面構成(レイアウト)、などを制作していきます。

◯多様性を大切に個々の魅力を伸ばしていけるよう、対話と行為で指導しています。多角的な観察から得たことを同時に表現しながら、考え、学んでいきましょう。


映像科:新学期は4/11(木)スタートです。

こんにちは。映像科講師の森田です。

タイトルの通り、映像科の一学期の授業は今週の木曜日から始まります!

映像科の授業では武蔵野美大、日本大学芸術学部、東京造形大学などの映像系の学科・専攻の実技対策を行なっています。最終的には一般入試であれば「感覚テスト」「構想表現」「小論文」などの制作、また推薦・AO入試であれば映像作品やポートフォリオファイルの作成へと進んでいきますが、一学期は美大の映像系学科に合格する上での基礎を作る重要な時期です。夏までに課題制作を通じて試みるのは、ざっくり分けると以下の3点。

1.映像について知る・・・実習での撮影や編集、また作品鑑賞を通じて「そもそも映像ってどんな表現手段なのか?」ということについて、一人一人が自分なりの考えを深めていきます。

2.絵で伝える・・・頭の中にある映像のイメージを他者に伝える上で絵は有効な手段です。デッサンやクロッキーからイラストレーションまで幅広く学びます。アニメーションやCGの制作をする人はもちろん実写や写真で表現する人にとっても、視覚的な感覚を鍛えることは大切です。

3.言葉で伝える・・・目で見た情報を言語化したり、言葉を駆使して表現することは美大の映像系学科の入試の大きな特徴です。小論文や物語を書く上では、形式にとらわれすぎず、まずは自由に自分の考えをアウトプットしてみます。

また映像科の授業は他の科と違い、
木曜日・金曜日が17:30~20:30
日曜日が9:00~16:00
の週3日の授業です。

授業開始後も無料体験入学の制度でお試しで参加してもらうことも可能です。詳しくはこちらまで。


クリムトについて②コスチュームの秘密

こんにちは。油絵科の関口です。
前回に引き続き、クリムトのお話です。今回は作品だけでなく、描かれたコスチュームの秘密にも迫っていきたいと思います。

クリムトは優れた観察力、美しい色彩、煌びやかな装飾性が作品の特徴で、上流階級の人達からも大変人気がありました。そのため豪華な肖像画を多数残しています。


モデルになった人の写真も残っているので、見比べてみるとソックリに描かれているのが分かりますね。

絵を描いている人の中には「クリムトみたいに模様を作品の中に取り入れてみたい」と、試してみた事のある人もいると思います。しかしやってみると、意外と難しくて大抵は失敗に終わってしまう筈です。その原因は「見て描いた部分」と「模様」との差があまりにも大きく、分離してしまうからです。では何故クリムトの絵は描写と模様が喧嘩せずに同居できるのでしょうか?


理由はいくつかありますが、僕なりにこの作品を利用して分析してみたいと思います。

①敢えて立体感が出ないようにモデルの正面から光を当てている。
②モデルを挟むように模様を配置しながら「手前の椅子」「奥の壁」という、平面でありながらも三次元的な空間設定を与えている。(地面のひし形も同様に三次元空間上の模様という設定になっている)
③背景の黒い色面と、モデルの髪の毛の黒がリンクしている。
④コスチュームの白っぽいグレーと、背景にある模様の白っぽいグレーがリンクして散りばめられている。
⑤コスチュームの中にある柄(この絵の場合はリボンと裾の一部など)を利用し、模様とリンクした部分がある。
⑥オレンジ色の背景とコスチュームのタッチがリンクしている。

こうやって分析してみると、模様と描写を絡めるための工夫が、至る所に散りばめられているのが分かります。

そして、これらの表現を容易にしているのが「コスチューム」である事に気付かされます。このコスチュームを担っていたのが、クリムトのモデルであり、愛人でもあったエミーリエ・フレーゲという衣装デザイナーです。

ところでクリムトのアトリエには、多い時で10数人のモデルが寝泊まりし、複数のモデルとの間に数人の子供がいた、とされています。

クリムトの映った写真には、こういうスモッグを着ている写真が多く見受けられますが、実はこの下はいつもスッポンポンだったとか(笑)。なるほど、そういう事でしたか…(笑)。そういえば顔付きもワイルドな感じですよね。


それはさておき、エミーリエの衣装が、クリムトの作品を作る上で重要な役割を果たしていたのは間違いありません。
こうやってみると確かに面白い衣装ばかりです。彼女の存在が、クリムトに多くのインスピレーションを与え続けてくれていた事でしょう。

クリムトは1918年にスペイン風邪で亡くなりますが、今際の言葉も「エミーリエを呼んでくれ…」だったとか。そのエミーリエも生涯独身を貫いたそうです。ちょっと素敵なお話ですね。それでは今日はこの辺で。