月別アーカイブ: 2020年3月

先端芸術表現科春期講習のお知らせ

今年度の試験が終わり、新宿美術学院からは3名の合格者を輩出することができました。

今年度は総合実技も大きく課題内容は変化しましたが、新美での総合実技の対策は、
a) 与えられた課題に対して、自らの視点からどのように応答するか
b) 使用できる素材を、どのような仕方で用いるか
c) 制作したものをどのように文章で説明し、プレゼンテーションするか
という形で行っており、単なる枠組みにあてはめて応答するのではなく、自らの力でしっかりと考えて対応できるようなカリキュラムになっています。

さて、先端芸術表現科の春期講習は、

3/30(月) ガイダンス・メディア演習(素材)
3/31(火) タイトルのワークショップ
4/1(水) ★春のスペシャルイベント
映像・先端合同ワークショップ
4/2(木) 総合実技
4/3(金) メディア演習(場所)
4/4(土) 作品制作・講評会

という日程で行います。時間は全て9時半から16時半になっています。
お申し込みは、こちらから。

春期講習では先端がどのようなことを講評会で行い、どのような課題を行うのかを知るためのカリキュラムとなっています。すでにポートフォリオや制作を行っている方はぜひ持参してきてください。またこれから先端の受験を始めるというかたも、先端がどのような科で、試験としてはどのようなことを行うのか、しっかりとお伝えします。

最終日はいきなり制作・講評会となっていますが、自らの興味のありかを探り、表現という形でそれをどのように実現し展開するのかを探る第一歩として、講評会という場を活用できればと思っています。制作相談という形での面談も行いますので、制作はまだこれからという方でも臆すことなく参加していただければと思います。

また現在ギャラリーでは今年度合格者の再現展示も行っています。
全ての再現が揃うのにはまだ時間がかかりますが、面談も随時受け付けていますので、是非お気軽にお問い合わせください。特待生、学力特待生試験の応募もお待ちしております。

それでは、先端芸術表現科でした。

 

全ては君の笑顔のために

お久しぶりです。油絵科の関口です。

さて、突然のお知らせになってしまいますが、僕は今月一杯で新美を辞める事になりました。
こういう事をブログでお知らせするのも如何なものか?とも思いましたが、コロナの影響で、今まで関わって来た人達にお礼の挨拶もできず、去ってしまうのが申し訳なく思い、このような形をとらせて頂きました。どうかご理解下さい。

まずは28年間(受験生時代を含めると30年以上)という長い間、大変お世話になりました。関わって来た、卒業生を含む多くの学生の皆さん、保護者の方々、講師の方々、教務や受付職員の方々、トゥールズの店員の方々、アルバイトの皆さん、出会ってきた大学教員や高校教員の皆様、本当にありがとうございました。最初に僕が辞めると言った時に必死に止めてくれた皆さん、そして最後に僕のわがままを受け入れてくれた油絵科の先生方、本当に感謝しております。とても一言ではこの気持ちを言い尽くせませんが、この場を借りて深くお礼申し上げます。

実は昨年の今頃には「今年度限り」ということを決めて、この一年を関わって来ました。今年度は担当を持たず、引き継ぎや裏方でバックアップの仕事に徹して来ましたので、油絵科の学生は「関口先生っていつも何をやってるんだろう?」と漠然と思っていたかもしれませんね。もしかすると薄々辞める事に気付いていた学生もいるかもしれません。中にはショックを受ける人もいるかもしれませんね。そういう人には「申し訳ありません」と言うしかありません。

事情を知らない人がこれを見て、新美は大丈夫なの?と思うかもしれませんが、絶対に大丈夫です。一年間を通して、新美のことを間近で見て来てそう思います。どんな時も、新美は本当の意味で学生本位の予備校です。学生が希望の大学に合格できるように講師や職員は必死になって働いています。そんなの他の予備校も一緒じゃないか?と思われるかもしれませんが、違うのです。愚直とも思えるくらい、徹底して『学生ファースト』なのです。それは誰に強制されるわけでもなく、決して見返りを求めることもなく、自ら率先してやっているのです。



例えば、新宿校の6階に油絵科の図書が1000冊位はあると思いますが、これらが無くならないように管理し、講師で当番を作って授業時間以外にも学生が見られるようなシステムを作っています。多くの学生が見るので、当然そのうち画集が傷んでボロボロになって来ます。それを見つけた海老澤先生は、以前よりも頑丈になるくらいの修復をしてくれています。そしていつも冗談を言いながら、本当に上手に生徒を合格へと導いていきます。

阿部先生は新美全体を見渡し、夥しい量の仕事をこなした上で、いつもニコニコしながら学生と接しています。普通の人には理解不能で、突拍子も無い事を言う学生とも普通に会話を成り立たせていくのは、もはや魔術の領域です。

山本先生は膨大な主任の仕事をこなしながら、いつも夜遅くまで学生のクロッキーを見たり、絵の話や悩み事を当たり前の様に聞いてあげたりしています。

鷹取先生は、どんな時でも太陽の様に明るく、学生のヤル気を最大限まで引き出し、まるで我が子を見守る様な気持ちで、一人ひとりと接している様に思います。

仲間先生も推薦や留学生のポートフォリオの内容を事細かくアドバイスして、最後の最後まで完璧なものを作り上げるのを全力でサポートしています。
一つひとつをあげていたら枚挙に遑がないので割愛しますが、とにかく全員が「あなたに対して何をしてあげられるか?」を考え、「どうやったらあなたの個性を潰さずに希望の大学に入れるか?」に全てを賭けて、指導にあたっています。そんな姿を目の当たりにしてきたので、安心して任せられると確信しています。
志望校もこちらから強制することなく、本人が「受けたい」という大学であれば、全力で受からせる様に努力をします。非常に手間がかかる推薦入試だって対応しています。こちらの宣伝のための合格率操作(受からなそうな人を受けさせない)や、浪人前提のご奉仕受験(合格者数を稼ぐために受けさせ、受かっても私立に行かせない)みたいな、予備校本位の事は一切行っていません。合格者数だって、ごまかしは一切ありません。我々にとっては当たり前のことですが、他の予備校もこういうことが当たり前にできるのか?は、正直言って分かりません。

近年では、芸大を始め、私立美大も現役合格する人が増えましたので、浪人する人はめっきり少なくなりました。当然昼間部の人数も減ってしまい、予備校としては苦しい状況でもあります。でも、どんな時であっても新美は真に学生本位で、苦学生には特待生制度や奨学金制度で応援し、地方生にも授業料半額免除の特待制度を利用してもらい、皆が安心して美術を勉強できる様、環境を整える努力をしています。
これが創設以来変わる事のない、新美に流れる遺伝子だと思います。そうそう、新美は実は今年で50周年を迎えます。HPにすら載っていないところが、新美らしいといえば新美らしいのですが…。たとえ人が入れ替わっても、50年間変わらず、ズ〜〜〜っと学生のために全てを捧げる精神が、今日まで受け継がれているのです。それは何気にすごい事だと思っています。

数年前、新美の標語というか、新美を表す言葉はないか?と考えて、頭に浮かんだのが今回のタイトル『全ては君の笑顔のために』というものになります。これを表立って標語にしていこうという様なものではありませんが、全科、全校舎の講師や職員がこの想いや精神を持って仕事をしているのが、新宿美術学院だと思っています。

ところで、今年は最後の方に嬉しいことがありました。僕が以前担当していた学生が、芸大に受かってくれたのです。本当は僕が受け持っていた時に受からせてあげたかったのですが、その時は願いが叶わず、お互いに悔しい思いをしましたよね…。でも「花が咲かなかったとしても、意味がないとは思わない。根っこさえあれば、きっといつか花を咲かせてくれる」と信じ、その子たちはとうとう立派な花を咲かせてくれたのです。
今年、残念ながら花を咲かせることができなかった人達も、きっと来年には綺麗な花を咲かせてくれると信じています。落ちた直後はショックが大きいと思います。でも今年一年新美で学んだことは、しっかりと根を張っているので、決して無駄にはならない筈ですし、新美の先生はいつも全力であなたが花を咲かせる様にサポートしてくれる筈です。
晴れて大学生になったあなたも、たまには新美を訪れてみて下さい。教え子の成長を一番嬉しく思っているのは、一緒に苦労した新美の先生達です。

これから新美に通う事になったあなたに、もし悩み事が生じたら、どんなことでも相談してみて下さい。本当に親身になってあなたの事を心配し、一緒に解決策を考えて良い方向に導いてくれる筈です。

そう、全ては君の笑顔のために…。

 

 

これからも末長く新宿美術学院を宜しくお願い致します。

 

最後に…僕自身のことを少しお話しします。これからは大学の講師や絵画教室の講師をしながら、前向きな気持ちで、制作活動をより一層頑張っていきたいと思っています。昨年から細々とSNSも始めましたので、興味のある方は是非探してみて下さい。あと街で見かけたら気軽に声をかけて下さいね。それでは大変長くなりましたので、この辺で失礼致します。心から感謝の気持ちを込めて。さようなら…。

2020年3月 関口雅文

2019年度夜間部在校生の入試を終えて。

新型コロナウィルスの影響は、入試にも直撃してしまいました。まだまだ終息する気配はありません。世界的規模での問題となっています。これからの動向の様子を伺っていくしかないですね。非常に厳しい年になっています。

ですが、来年の受験が待ってくれるわけではありません。準備をしていこうと思います。

デザイン・工芸科夜間部です。

 

国公立の試験も終わり、発表がまだ残っている大学もありますが、ほぼほぼ今年度の受験は終了いたしました。受験生の方、お疲れさまでした。新美の合格実績も更新されていますが、今現在のデータとなります。合格した方おめでとうございます。残念な結果で来年再トライする方は、来年に向けてしばし休憩しましょう。

 

3月20日からは芸大を含めた展示に切り替わりますが、私大の合格再現展示、作品が全部出そろった展示風景です。

 

来年度新入生の募集も始まっています。デザ割というプランもありますので、早めに申し込みした方が特典もありますので、チェックしてください。

申し込みはこちらから↓

https://www.art-shinbi.com/pdf/2020-tokutai.pdf

 

3月22日(日)のプレ春期Ⅱのイベントは、開催されることとなっています。こちらもチェックしてください。

申し込みはこちらから↓

https://www.art-shinbi.com/event/event-spring-special/event-pre-spring/index.html

彫刻科 入試を終えて

こんにちは。彫刻科の小川原です。今年は芸大に2名の合格者を送ることができました。また2021年度入試に向けて全力で取り組んでいきたいと思います!

今年の芸大の入試課題はジョセフに始まり、彫刻Ⅰでは身体をテーマにした彫刻。彫刻Ⅱではアバタの模刻が出題されました。ということで、僕がこれまで長年指導をしてきた中で特にお気に入りの3点を紹介します。

これは前回彫刻科でジョセフが出題された時の合格者の入試再現です。何より全てにおいて印象が良いと思いました。雑味なくジョセフを感じられる作品です。

これは去年の授業作品です。テーマは「狭い・広い」※両方の要素を含むこと
作品は見た通りタンポポをモチーフに構成しています。下手をするとファンシー的になり過ぎてしまいますが、形態のデフォルメの仕方がちょうど良く、構成作品として美しく見えるところが良いです。

模刻はベースの精度が上げられた上で密度を上げていき、具体的になっていく形がその寸前の土台の形と響き合っていないと作り込むほどに似なくなるという事態に陥ります。この作品は作り切った上でアバタとしての印象が素晴らしく良いですが、それは何より作者がモチーフの「形」だけでなく、「アバタの印象」に反応できているから成せる技なのです。

彫刻の入試では基礎力が充実して初めて勝負になるところがありますが、それだけでは足りません。ミスがないこと以上に、作品としてどうなのか。ということをビジョンに入れて日々の制作に打ち込んでいきたいです。

先日twitterにも上げましたが、僕の新しい作品が完成したので紹介します。

「水中花」
ブロンズ
H80×W40×D25cm

テラコッタから木彫に素材を変えて、さらにブロンズ鋳造を始めて数年が経ちました。30年くらい前はブロンズで作品をつくる作家も多かったようですが、近年はめっきり減りました。FRP(素材はプラスチックですが、色をブロンズ調にできる。安価で手軽。)が登場したことや、ブロンズに作品を置き換えるのは外注になるので、1つの作品を作るにも高額となるためだったり、単純に塑像作品でブロンズまでやるというストイックな作家がいなくなっていきているということもあると思います。
僕は大学時代から今までずっと誰の手も借りずに自分の作品は最初から最後まで自分で責任を持ってやりきるという思いでやってきました。それは単に自分の作品を自分以外の人が手を加える事への拒否反応みたいなもので、そんなこともあり、ブロンズ鋳造は習ったことはないですが自分で鋳造炉をつくり、原型から鋳造型、鋳込み、仕上げまで全て一人で行なっています。
ブロンズを始めた頃、どうしてもうまくいかなくて仕方なく業者に鋳造を頼んだこともありました。戻ってきた作品は完璧に鋳造がうまくいってるはずなのですが、「え?こんな形だったっけ?」とどうしても馴染めず、後悔したものです。今は鋳造まで全て自前なので、納得のいく完成を迎えられています。多分自分以外の人が外から見たら全然わからない差なのかもしれませんが、自分にとってはそれが全てなのだと思います。素材だってうまく着色したらブロンズとFRPの区別だってつかないくらいにできるでしょう。でもそれは何より自分に嘘をついているという意味で、「作品」とは言えなくなってしまうのです。こういうこだわり方をすること自体が今の美術界の中ではもはや時代遅れだと言われてしまいそうですが、結局は自分がこうしたいなと思ったことを迷わずやることが結果個々の特殊性に繋がっているのではないかなと思っています。
思えば浪人時代もそうでした。小川原のデッサンは彫刻的じゃないんだよな。と先生に言われ続けながらも、自分の理想のデッサンのあり方を一切曲げずに貫きました。というより自分の見ているビジョン以外に全く興味がなかったというのが本当のところです。「こういうものだ」ということには目もくれずにひたすら理想を高め続けました。僕のデッサンは僕一人だけのものでしたが、最終的には彫刻科のデッサンはこういうもんだ。という大勢が何も言えなくなるくらいのものにしたと思います。
大事なことは、自分で価値を見出すということが独り善がりであってはいけません。全ては基本を突き抜けた先にあるのだと思います。受験生の時から自分自身の意思を明確にしていくことが大事です。