月別アーカイブ: 2014年3月

誰が自然を殺したのか?②「スペイン編」

こんにちは。油絵科の関口です。
芸大の合格発表も終わりましたね。皆さん本当に一年間お疲れさまでした。

さて、前回に引き続き、静物画=natura?morta(死んだ自然)という解釈を巡り、誰が自然を殺したのか?推理を働かせ、容疑者を洗ってみようと思います。

 

bodegón(ボデゴン)について
ところで、静物画というジャンルはいつから単独で描かれるようになったのでしょうか…?
17世紀のスペインでは、bodegón(ボデゴン)と呼ばれる静物画が流行します。
ボデゴンとして有名なのはファン・サンチェス・コターンですが、一般の人には馴染みのない作家名だと思います。しかし名前は知らなくても「この絵なら見た事がある」という人はいるかもしれません。コターンの作品は構図が独特で、規則的で数学的な配置が特徴です。ある意味ボデゴンらしいスタイルを確立した一人だと思います。MBAGR-bodegoncardo
コターン作「食用アザミのある静物」

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コターン作「マルメロの実、キャベツ、メロン、胡瓜」

さて、本題に戻りましょう。ボデゴンを洗ってみると、一人の容疑者に辿り着きました。

 
容疑者②スルバラン
フランチェスコ・デ・スルバランはスペインのバロック時代に活躍した画家で、カラバッジォの影響を強く受けた一人です。カラバッジォについては前回触れましたが、人間性はともかく、スペインのバロック絵画に大きな影響を与えました。特に極端に強い明暗の使い方は、陽射しの強いスペインの風土に合っていたのでしょう。スルバラン静物
スルバラン作「レモン、籠のオレンジ、茶碗」

スルバランの静物画の特徴は、漆黒の中から浮かび上がる、キッチリ整然と並んだモチーフ。動きが極端に少なく、静寂を感じさせる構成と、感情の起伏が殆ど感じられない冷たい描写にあります。
そのスルバランの描いた一点が目に止まりました。
羊が描かれているこの作品。スルバラン/羊
スルバラン作「神の子羊」

無表情で顔色一つ変えず、手足を縛り、、、まさかあんな大人しそうな人が…この男が自然を殺した犯人なのか?

しかし前述した通り、スペインではbodegónという名称で静物画を表現しています。このbodegónという言葉はスペイン語で「酒蔵」を意味するbodega(ボデガ)の増大辞(ニュアンスとしては大きいという意味)だそうです。日本ではbodegónを「厨房画」と訳し、それ自体が独立したジャンルのように扱われています。言われてみれば確かに厨房にあるものばかりです。スルバランは羊も食べ物として描いた可能性がありますね。
ちなみにスペインにもnaturaleza?muerta?というイタリア語やフランス語と同じ「死んだ自然」という解釈の言葉が存在しますが、殆ど使われていないそうです。

うーん、どうやらスルバランもどうやら犯人ではない様ですね。
という事で次回に続きます。

 

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番外編 ベラスケス
卵を調理する老婆
ベラスケス作「卵を調理する老女」

スペインを代表するバロックの巨匠、ベラスケスの描いたこの作品。単独の静物ではありませんが、当時スペインで流行していたカラバッジォとボデゴンの影響が強く表れています。ちなみにベラスケスがこの作品を描いた年齢は、何と19歳!!
ちなみに僕は19歳の時、この作品を何枚も模写しましたが、少ない色数の中で幅を出したり、一つひとつの静物の質感を描き分けたり、当時の自分にはたいへんに勉強になりました。僕にとっては非常に思い出深い一枚です。

国立校 3学期 最後の授業でした。

新宿美術学院 国立校 基礎科です。

4月に国立校として新たに開校し、そろそろ1年が経とうとしています。
最初は静かだった教室も、今では賑やかになりました。
そして3学期、1年が終了です。
皆さん、本当に力がついてきたと思います。
国立校は新宿美術学院 現役校 enart 国立として
4月から受験科ができますので、今の力を受験に向けたものに
更に高めていってください。
1年間、有難うございました。

リンゴの仕上げです。
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ベースを大胆な色にしている人もいました。
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思い通りの赤を作るのに試行錯誤です。
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どれが本物か、触らないとわかりませんでした。
皆さん、楽しんで作っていたようです。お疲れ様でした。
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3/9は1日体験講習でした。
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9時から4時まで、集中して描き上げた作品です。
先生に丁寧に講評してもらいますが、人の作品を見ることも大切です。
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国立校では3/23(日)に、1日体験講習があります。
お申し込みはこちらへ。
お申し込みはこちら
同時に、推薦入試説明会も開催いたします。
美大の推薦入試、AO入試はその難易度、出題内容も様々です。
合格者の作品や、レポート、ポートフォリオ対策から面接対策まで、
具体的にわかりやすくご説明いたします。
申し込み不要ですので、お気軽にお立ち寄りください。
推薦入試説明会 国立校 16:30~18:00
(国立校は油絵科、デザイン・工芸科のみ)

2013年度(2014年)彫刻科受験結果

今日は芸大の最終合格発表がありました。新美彫刻科は3名合格。うち2人は現役生。そのうち1人は基礎科から在籍していた生徒が合格してくれました。おめでとう!!
私立美大は武蔵野美大、多摩美大、造形大全て100パーセント全員合格!!素晴らしい結果でした。
大学に入学した後もこれまで同様努力を惜しまず、積極的に活動して行ってほしいです!

また今年の受験で結果を出せなかった人たちは今とても悔しい思いをしていることだと思います。受験の厳しさを胸に刻んで、来年こそは絶対に合格しましょう!どれだけやっても足りないし、どんなに上手くなってもそれ以上の上のレベルを目指し続けて下さい。

ほとんどの人にとって、最終的なゴールは大学に受かることなんじゃないかなと思います。受験生である以上それは当たり前のことのように思えるかもしれませんが、それだけを目標にしてしまうと肝心なことが見えずらくなってしまいます。
一番大事なのは今ここでデッサンや塑像の勉強をしていることに何の意味があるのか知ることです。描き方、つくり方を学んでも、「彫刻」を学ばねば表現の本質を知ったことにはならないのです。受験で受かるレベルと言う限界値(このくらい出来れば受かるだろう)を設定して、それに向かって取り組んでいても、それを超えるのは難しいでしょう。
いわゆる受験に於けるデッサンや塑像に関しても、求められていることは「彫刻的理解」や「美術的表現力」に他なりません。それはすでに限界値のない「美術作品」と言えるでしょう。作品としてどこまでこだわり抜けるか、研究し尽くせるか、そしてその集積が「合格」という形となり、結果として1年後自然な形で手に入るのだと思います。本来限界無く上達していける分野であるにもかかわらず、多くの人が「受験」という枠組みの中でしか答えを探す努力をしていないのではないでしょうか?皆さんは「彫刻」に興味があって、「彫刻」を学んでいるのです。それがどういうことなのかをしっかり考えながら次の1年を過ごして下さい。

皆さんに問いたいことがあります。10年後、あなたはどんな生き方を選択していますか?あるいはしていたいですか?考えてみて下さい。どんな自分の未来がイメージできたでしょうか?
常に先のことに対してヴィジョンをしっかり持って取り組むこと。僕はとても重要なことだと思います。

さて、今年度の合格者の入試再現作品は順次アップしていきますのでぜひご覧下さい。

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春のスタートイベント⑤ 春から受験対策!  各科イベント公開講座

こんにちは。
またまた春のイベント告知です。

今回は3/21(金・祝)、「各科イベント 受験対策公開講座」のご案内。
このイベントは、新美の受験指導をぜひ体験していただこうという企画です。

例えば油絵科では「芸大油画専攻一次試験にチャレンジ」と題しまして、芸大の一次試験と同じ課題に取り組んでもらいます。そしてただ授業を受けるだけでなく、実績豊富な新美の入試分析をもとに、芸大油画受験について詳しく説明していきます。
工芸科では立体指導に定評のある新美の指導で、この1年間に身につけるべきことをしっかりレクチャーします。
などなど、、、各科ごとに特徴のあるカリキュラムを設置していますので、いよいよ受験の新高3生や来年も再チャレンジという受験生はぜひご参加お待ちしています。

もちろん初心者だけど実践課題にチャレンジしたい!という方もどうぞ。
基礎デッサンからしっかり学びたい、という方は、「1日体験講習」がお勧めです。

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詳細・お申し込みはこちら→http://www.art-shinbi.com/open-s/20140321.html

 

本年度の基礎科の授業終了!

こんにちは、基礎科講師の岡田です。

昨日の日曜コースの授業で本年度の基礎科授業は無事に終了となりました。皆さん1年間お疲れさまでした!
基礎科最後の共通課題は「自画像」。
「自画像」というテーマは名立たる作家達にとっても、つくり手の皆さんにとっても大事なテーマの一つであるといえます。そういえば、東京芸大の卒業生達も必ず自画像を大学に収蔵するのでした。『モノをよく見て観察する目』『構成力』『発想力』『個性』が際立って見えてくるテーマだと思います。
基礎科生になると、節目節目で出題されてきた「自画像」。はじめてカッターを使って鉛筆を削った最初の頃のデッサン、やっと自分の専攻が決まってきた頃のデッサン、そして基礎科最後の集大成となった今回のデッサン、着実に実力と自信を身につけて、皆それぞれ良い作品が出来上がりました。

来年度受験の年を迎える皆さんも、もう一年基礎科で頑張る皆さんも、 これからも幾度となく「自画像」を描く機会が巡ってくると思います。その度により良い作品となってゆけるといいですね。

↓ 制作の様子です。
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↓ こちらはの講評の様子です。
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最後に、
何と!サプライズで生徒の皆さんから講師皆への寄せ書きブックを頂きました!!ブックに納まりきれないほどのメッセージとイラスト達。「絵が好きなんだな?」と改めて実感する様な、いきいきとしたこのブックの中の絵の数々。たまに辛いときもあるけれど根源は『絵は楽しいもの』なんですよ。是非これからもどの環境でも楽しんで表現できる皆さんであってほしいと心から思います。

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