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コンテの削り方

こんにちは。油絵科の関口です。
皆さんはコンテという素材は使った事がありますか?油絵科だと、木炭デッサンの時に黒をしっかり付けたい、という時に使う人が多いかもしれませんね。
5552015年度芸大一次素描再現作品(部分的に黒コンテも使用)

さて、前回の記事でクロッキーの事を書きましたが、アトリエでは、鉛筆、ペン、水彩、木炭など様々な素材を使っている人を見掛けます。大きいクロッキー帳には、木炭が描きやすい。という人が多い様な気がしますし、僕も同感です。しかし、欠点としてフィキサチーフを掛けないと、後で裏写りしてかなり消えてしまうんですよね。それが唯一残念なところ。
そこで一度はコンテに手を伸ばすものの、使ってみると思いの外描き辛く、諦めてしまう人も多いのではないでしょうか?

 

コンテは何故使い辛いのでしょうか?理由は大きく分けて二つあります。

①調子のコントロールがし辛く、擦ると汚い調子になってしまう点。

②描いた時に意図しないこの「エッジ」ができてしまい、形になり難い点。

エッジ
このエッジが出来てしまうのは、コンテの形に原因があります。木炭とは違い、角柱の形をしているので、どうしてもこういうエッジが出来てしまいます。(パステルも同様です)

そこで今日はこのエッジ対策をお伝えします。
どうやらこのエッジができない様にするには、特殊な削り方が良いみたいです。
昔の人のデッサンに、コンテを使ったものをよく見掛けます。ほとんどエッジが出ていないので、ずっと疑問に思っていたところ、10年ほど前にとある方からこの削り方を教えてもらいました。
木炭の削り方なら教わる機会がありますが、コンテの削り方は教えてもらう事なんか、まずありませんからね…。僕にとっては、目から鱗でした。コンテの削り方
1.コンテを削る前の状態
2.削るイメージ(角の一つを頂点に斜めに削る感じ)
3.途中まで削った状態。折れやすいので大きめの紙ヤスリを使って慎重に削りましょう。
4.途中から少し左右に傾けて、AとBの2つの面が若干山なりになるように削って完成。削った状態
この削り方。一度試してみて下さい。コンテはクセがあるので、慣れは必要ですが、細い線も引けますし、腹のところを使うとソフトな線が引けます。クロッキーの時に稜線を描く時や、形のの回りこみを描くのに便利だと思います。

細い線説明付き
ソフトエッジ説明付き
写真は緑色のコンテを使っています。今はいろんな色があるんですね。右エッジ説明付き
反対にコンテを左側に傾けると、左側のエッジがシャープに、右側がソフトにできます。

シーレ
エゴン・シーレのデッサン

この削り方なら、こんな感じのシャープな線とソフトな稜線を組み合わせたクロッキーが出来そうでしょ?
あとは練習あるのみです。試験には直接関係ありませんが、油絵科の場合 何がキッカケになるか分かりませんから、是非チャレンジしてみてください。

梅雨入りも、もうすぐ。

いかがお過ごしでしょうか?渋谷校です。

先日、関口先生の回で書かれていたクロッキー。

渋谷校でも、丁度、受験科油絵コースで「線表現」について研究する週間でしたので、なんとタイムリーな話題と思いながら読んでいました。

自分も関口先生と世代が近いので、クロッキーについてはいろいろ思いがありますが、僕の武勇伝を語ってもね・・・

今回は、美術史や現代絵画など時代を問わず、絵描きの描く素描・デッサン・ドローイングに目を向けました。

受験では一般的な調子による描写が、美術の主流ではないことを認識しつつ、自分たちも線で何が表現できるかを考えてもらいました。

男性のセミヌードを囲む現役生の集中力が、普段以上に高く活気がありました。

つい僕も、参加したくなって描いてしまいました。(笑)

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無駄が多いねw

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5分しかないポーズでしたが、少しはイメージに近いかな。

たまには描かないと、錆びついてしまいますね。僕も修行しょう!!

 

クロッキーのススメ

こんにちは。油絵科の関口です。
さて、新宿校では1?2学期の毎週木曜日の夜にヌードクロッキー会(有料で主に昼間部生対象)を行っています。

ホックニー
ホックニーのデッサン

 

僕が受験生の頃、先生からクロッキーの重要性を耳にタコができるくらい聞かされていました。その先生曰く「クロッキーは1,000枚位やると、少し上手くなって、その中で数枚鑑賞に耐えられるものが出来るようになる」「その後も大体1,000枚単位で少しずつ上手くなって、10,000枚やると、どこに出しても恥ずかしく無いレベルのものになる」「感覚的な枚数の目安は、自分の身長を越えるくらい」との事でした。それを聞いて、身長の高い奴は不利だろう…とか思ってました(笑)。10,000枚というのは口で言うのは簡単ですが、実践するには毎朝8時前に来て友達同士で描きあったり、家で巨匠のデッサンを模写したりしないと、一年では達成するのは難しい枚数なんですよね…。当時の僕らはそれを当たり前の様に受け止めていましたが、これは25年前の話で、流石に今の学生には、求める事が出来ない枚数です。

ルーベンス
ルーベンスのデッサン

でもこのクロッキー、枚数と比例して上手くなる事は間違いありません。毎年様子を見ていると、年間通してほぼ同じ顔触れになっているのですが、春に見た時と冬頃に見た時では、まるで別人の様になっている事も珍しくありません。

ロダン
ロダンのデッサン

シーレ
シーレのデッサン

ポーズ時間も10分、5分、2分という風に変化があり、その時間の変化をどういう風に捉えるのか?を考える様に作ってあります。特に2分の時は短い時間で描く事になるので、普通にやっていてはまず時間が足りないと思います。その事実に直面した時に、どうやってクリアしていくのか?何故こんな時間設定なのか?皆さんもよく考えてみて下さい。

あと、実は数年前から僕がモデルさんのリクエストをしています。普通の女性モデルだけでなく、マッチョな男性モデルが来たり、面白キャラの黒人モデルが来たり、音楽付きのムービングの会もあったりして、変化に富んでいます。毎回受講している人も、次は一体どんなモデルさんが来るんだろう?と、サプライズを楽しみながら、上達してもらえたらな?と思っています。陰ながら応援していますので、是非頑張って下さい。

黒の魔術師

こんにちは。油絵科の関口です。
今日は何やら怪しげなタイトルが付いていますが、ちゃんと絵のお話ですので安心して下さい。

先日、国立新美術館でやっているルノワール展を見てきました。他科の人からすると意外に思われるかもしれませんが、油絵科の受験生にはルノワールが苦手な人も結構多いんですよね…。皆さんは如何でしょうか?
「ルノワールはどうも苦手だ」という人も、今回のルノワール展は必見ですよ。何せ代表作の「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」(日本初公開)や晩年の傑作「浴女たち」(日本初公開)そして「陽光のなかの裸婦」「草原の坂道」「田舎のダンス」「都会のダンス」など、教科書や画集で見たことのある様な名作が目白押しです。恐らく、日本では今後二度と見る事のできないクオリティーのルノワール展だと思います。田舎のダンスと都会のダンス
ルノワール「田舎のダンス」と「都会のダンス」1883年

このルノワール、巨匠と呼ばれる人の中でも抜群に黒の使い方が上手いんです。実は油絵の中で黒という色は、数ある色の中でも非常に扱いの難しい色です。(無彩色なので色と表現するのも少し変ではありますが…)ルノワール曰く「黒は全ての色の女王」だそうです。

僕の見た中で黒の魔術師として双璧をなすのが、マネとルノワールの2人。どちらも黒を陰の色には使わず、一つの色彩として完璧に使いこなしていますが、使い方が全く異なります。

フォリー・ベルジェール劇場のバー
マネ「フォリー・ベルジェール劇場のバー」1882年

ちなみにマネの黒は非常に歯切れが良く、黒があることで画面がビシッと引き締まって見えます。これを食べ物に例えるなら、皮付きウィンナーに勢いよくかぶり付いた時の「パリッ」とした食感の心地良さ…といったところでしょうか。
 

対してルノワールの黒には、豊かな階調表現の中に独特な含みがあり、まるで口溶けの良い高級チョコレートをジックリと味わっている様な感覚に陥ります。溶けて無くなった後も芳醇なカカオの風味が余韻として残っている様です。
今回の展覧会には出品されていませんでしたが、傑作の一つ「桟敷席」に使われているドレスの黒は、言葉を失ってしまう程の美しさと、巨匠の持つ圧倒的な力量を感じる事のできる作品です。これは図版や画像では絶対に伝わらない凄さだと思います。もしまた日本に来る機会があったら、是非もう一度観てみたい作品です。
桟敷席
ルノワール「桟敷席」1874年
 

今回の目玉は何と言っても「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」ですが、この作品には殆ど黒は使われていませんでした。この絵は明暗の構成が複雑で、かなりコントラストの強いドレスやタキシードを着た人達が彼方此方で踊っています。黒は明度の一番低い色ですから、沢山使ってしまうとMaxの調子が色んな場所に散らばってしまい、散漫で見辛い画面になってしまいます。木漏れ日を上手く利用する事で固有色の呪縛から解き放たれ、黒い服にも黒い絵具を殆ど使わずに、画面上の関係で色を表現しています。本物を見たら、どんな場所に黒を使っているのかを探してみるのも一興かと思います。ムーラン・ド・ラ・ギャレット
ルノワール「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」1876年
ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会の部分
作品に近寄ってみると、殆ど黒が使われていないことが分かります。

 

あと、今回は滅多に見る事の出来ない、ルノワールのデッサンが複数来ていました。これがまた素晴らしい出来栄えで、そこからは巨匠の鋭い眼差しと生々しい息遣いが感じられました。これも図版や画像では伝わりにくいものですので、是非本物を見に行ってみて下さい。
デッサン
ルノワール「水のほとりの3人の浴女」1882?1885年

オルセー美術館・オランジュリー美術館所蔵?ルノワール展 ?8/22(月)
http://renoir.exhn.jp

油絵科 展覧会のすすめ

油絵科の関口です。
日本画の佐々木先生に続き、僕も展覧会を紹介したいと思います。

①奥村土牛
・山種美術館?5/22まで
http://www.yamatane-museum.jp/exh/current.html
日本画の展覧会ですが、油絵科の生徒さんも興味がある人は是非観に行って下さい。奥村土牛の作品は暖かみのある色彩と上品で、穏やかな雰囲気が好きな人は引き込まれるのではないでしょうか?時間を忘れてずーっと見て入られますよ。
今回はまだ観ていませんが、出品リストを見ると、これは行かなくては…と思わされる展覧会です。
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中でもこの「鳴門」は絶品です。10年以上も前に山種美術館(今とは場所が違いました)で本物を見てその時は「凄げ?」って、まるで素人さんみたいな感想しか出ませんでした(笑)。

あと、国立近代美術館では安田靫彦展もやってますね。こちらは?5/15まで。日本画好きな人は、こちらも是非。
http://www.momat.go.jp/am/exhibition/yasudayukihiko/

②カラヴァッジョ
・国立西洋美術館?6/12まで
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2016caravaggio.html
以前もこのブログで紹介しましたが、このカラヴァッジョも油絵科の中では好きな人がいるかもしれませんね。
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ちなみにこのモデル、何回もカラヴァッジョの絵に登場してきます。どうやら今で言うBLって言うんですか?(笑)怪しい関係だったとか…実際はどうなんでしょうね?
カラヴァッジョの作品自体は10点ほどらしいですが、本物を見る機会は滅多に無いと思いますので、興味がある人は是非観に行って下さい。メドゥーサもちょっと笑えますよ。

③ライアン・マッギンレー
オペラシティアートギャラリー?7/10まで
http://www.operacity.jp/ag/exh187/
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いま丁度新美近くのオペラシティアートギャラリーで開催しています。写真の作家さんですが、油絵科の生徒さんには、こういう展示も是非観に行ってもらいたいですね。

油絵科を受験するには幅広い視野が必要になりますので、ジャンルを問わず色んなものを見た方が良いと思います。ゴールデンウィークを利用して、是非本物を観に行ってみて下さい。

 

※番外編
僕もゴールデンウィークに展示をやっていますので、興味がある人は是非観に来て下さい。

●現代作家美術展ーこれからの美術界を見据えてー
・ギャラリー絵夢5/3(火)?11(金)
http://www.moliere.co.jp/galerie/index.html現代作家美術展

●公募団体ベストセレクション美術2016
・東京都美術館5/4(水)?27(金)※学生以下無料
http://www.tobikan.jp/exhibition/h28_bestselection2016.html2016_bestselection2016_a