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先端芸術表現科のワークショップ part2

こんにちは、先端コースです。

 2学期が始まって1週間が過ぎました。残暑もおさまってだいぶすごしやすい気候になってきたので、もう一度身体の状態を整えて、後半がんばっていきましょう。さて、たびたびこのブログでは先端コースが行っているワークショップ形式の授業について紹介してきましたが、今回は2学期開始とともに2週にわけて行った『写真のワークショップ』について報告します。

 先週の1回目では、まずはカメラを持って街に出ることからはじめました。といっても、携帯電話にカメラがついている現在では、カメラを携帯しているという状態も、街の中で何か気になったものを撮影するという行為も、きわめて当たり前のことになっています。むしろ生徒にとっては、そんな当たり前のことを言われても何をしていいかわからない、写真そのものが作品になるということがどういうことなのかよくわからないといった反応が多かったように見受けられました。しかし、おそらくそれは写真に限ったことではなく、「作品」をつくるということの最初にある自然な疑問だと思います。そのような消化不良な疑問を抱えつつも、シャッターを切ればイメージが獲得できてしまうのが現在のカメラ技術です。それぞれ新宿近辺で手に入れてきたイメージをスライドで上映しながら、どんなことを考えながら撮影したのかをプレゼンテーションしてもらいました。

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自分の「霊感」を頼りにして撮影する人や、あるものがなにか別のものに見えることを撮影するひと、街の中で拾ったモノをモチーフにしてポートレイトを撮る人など、それぞれに異なるアプローチの仕方がありました。見ていて発見だったのは、短時間の撮影だったこともあって、別の人が自分とほとんど同じモノや場所を撮影しているというようなことが起こるのですが、プレゼンを聞いてみると、人によってそこに何を見ようとしているのかが違っているというような場面があることでした。

ここまでが前半のセクションで、後半は前半撮ったものをセレクトするなり、また新たに撮影に行くなりして、<枚数制限は設けないけれども、最終的に「ここからここまで」を決定して「1つ」のものとして提出すること>を課題としました。

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それぞれ午前の制作からまた新しい展開を模索していました。そこで午後の講評では、最初は作者のプレゼンをなしにして、まずは他の生徒が「これはどんなことが写っている写真なのか」を自由に考えて発言するかたちにしました。

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その後こちらから作者に質問しながら、徐々にどんなことを撮ろうとしたのかを聞いていきました。かといって、ここでは答え合わせのようなことをしているわけではありません。当たり前のことですが「答え」のようなものがはっきりとあるわけではないからです。それよりもここで大切なのは、ここを見てほしいと思っている要素に対して「背景」だと思っているような要素が、はじめてその写真と出会う人にとってはむしろ気になったり目がいったりというようなことが起こることです。自分が撮ったものの中で見えていなかったものが見えるようになる経験の中にも、今後の制作のヒントを見つけられるかもしれません。

 

さて、1回目のレポートが長くなってしまいましたが、ここから2回目のレポートです。

ご存知の人も多いと思いますが、先端の入試では事前に自分の制作をファイルにまとめて紹介する「ポートフォリオ」の提出があります。先端の教授の先生方は、このポートフォリオにまとめられた写真や文章等で受験生のこれまでの制作をはじめて見ることになります。するとやはり作品そのものを見せることができるのは写真ということになります。

以前のブログで『首像のワークショップ』を紹介した際に、積極的に自分の彫刻作品を自分で写真に撮ったメダルド・ロッソとコンスタンティン・ブランクーシという2人の彫刻家を紹介しました。(興味のある人は先端科の過去の投稿「先端芸術表現科のワークショップ part1」を参照してみてください。)彼らの自作の写真がそれ自体見るべき強度を持っているのは、その作品が最も豊かに見える見え方が撮影されているからかもしれません。そのような写真は、作者は作者であると同時に、その作品にとってひとりめの鑑賞者であることをあらためて実感させてくれるものがあります。

ということで、写真のワークショップ2回目は、新宿を飛び出して上野の東京国立博物館に撮影に行きました。展示物や空間に対して自分が興味をもったポイントを、どのように撮影できるかの実践編です。

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初トーハクの生徒も多く、展示物はもちろん、それがどのように展示されているのかにまで興味が拡がっていく様子で、普段教室で作品をつくったり見せたりしていると気がつかないような部分をあらためて確認した人もいたかもしれません。

 

先端科では、昨年度から始まった二次の総合実技試験の実践的な対策と並行して、このように毎回違ったアプローチで、個人の作品制作にフィードバックがあるようなワークショップも行っています。また機会があれば他の授業も紹介したいと思います。