日別アーカイブ: 2017年12月10日

年月に込められた思い入れについて

こんにちは。油絵科の関口です。ここのところ急に寒くなってきましたね。

さて、今日はいま横浜でやっている展示「アニマート展」について書きたいと思います。この展覧会は今年で20回を迎え、1回目から参加している僕としては、感慨深いものがあります。今の受験生の皆さんが生まれる前から続けていた事になりますからね。実はグループ展で20回という回数をクリアするのはかなり難しい事なんですよ。
最初は10人前後でスタートしたメンバーも、今では30人以上になりました。2回目以降の途中から参加した人は、かなりメンバーの入れ替わりがありました。しかし飾り付けの時に改めて確認してみると、初回から出品しているメンバーが、たった2人位しか辞めていませんでした。これもたいへん珍しい事なのです。

ちなみにアニマートという言葉は「生き生きとした」とか「元気な」という意味のイタリア語で、ギャラリーのオーナーが、当時若くて元気のある我々にふさわしい、と思って付けてくれた展覧会の名前です。恐らく結成当時は誰も20年もやるとは思っていなかったと思います。

20年前と今では、当然のことながら自分を取り巻く環境も大きく変わってしまいます。僕自身を振り返っても父が亡くなったり、結婚したり、地元が大きな災害にあったり… 長い年月の中で色んな人と関わる事で、人生観が大きく変わるような経験もしてきました。恐らく他のメンバーにとっても、20年という歳月はそれぞれの中で大きな変化があった事でしょう。良い時も、辛い時も、気持ちが沈んで制作どころではない時…なども経験してきたと思います。

最初から同じテンションでず?っと続けていく事は不可能ですし、同じだとマンネリ化してしまうので、結局は良い会になって行きません。そこで数年前から運営委員を設立し、どうやったら皆が楽しんで参加できるか?を皆で考えてきました。ここ数年は有志で集まり、ワークショップを開催する方向で進んでいます。
今回はあるメンバーから「今年は展覧会初日のオープニングパーティーに、皆が使っているお気に入りの筆を持ち寄り『筆サミット』を開催しよう」という提案がありました。他のメンバーも「それは面白そう」という事で、トントン拍子に話が決まり『筆サミット』が開催される事になりました。
それに先立ち、僕の方から「筆工場の見学をしたらどうか?」という提案をして、10月には有志でナムラの筆工場の見学も行ってきました。自分たちが普段使っている筆が、どのように作られているのか?初めての体験にメンバー全員が子供の様になって、職人さんから詳しく説明を受けてきました。
筆工場見学については、後日またこのブログで詳しく紹介したいと思います。

話を少し戻しますが『筆サミット』はそれぞれの筆に対する想いをお酒を飲みながら語り尽くし、大変盛り上がりました。
ちなみに僕が持って行った筆には、こんな凄いものも…。もはや筆としての機能は完全に失われてしまっています。この哀れな姿になってしまったこの子を捨てられなくて、何年もアトリエにしまってあったものです。ナムラさん、職人さんが丹精込めて作って下さった良い筆を…こんな風にしてしまってゴメンなさい(笑)。この筆はウケを狙ったり、わざと切った訳じゃないんですよ。描いている内に擦り切れて擦り切れて、中心に残っていた数本の長い毛で描いていたものが、とうとう擦り切れてしまったものなのです。まるでサザエさんの波平さんのてっぺんの毛が抜け落ちてしまった様な、ショックで悲しい気持ちになった事が昨日のことの様に思い出されます。

アニマート展もこの筆も、自分にとっては長い長?い年月を積み重ねて出来た、強い思い入れの塊です。

そして初日の最後には、ギャラリーのオーナーへ感謝の気持ちを込めて、ハガキサイズの作品をメンバー代表者お手製のオリジナル箱に入れ、プレゼントしました。

左が箱の外側。右は僕の描いたオーナーの似顔絵。皆んなガチです。

箱を開けると、粋な計らい。メンバーのサインが書いてあります。

僕は美術の世界もなかなか捨てたもんじゃない!って思ってます。
オーナーの濱田さん、20年間本当にありがとうございました。お互いに身体と気持ちの続く限り、まだまだ続けていきましょう!

ギャラリーアークHP↓
http://ark.art-sq.com