日別アーカイブ: 2013年9月17日

先端芸術表現科のワークショップ part2

こんにちは、先端コースです。

 2学期が始まって1週間が過ぎました。残暑もおさまってだいぶすごしやすい気候になってきたので、もう一度身体の状態を整えて、後半がんばっていきましょう。さて、たびたびこのブログでは先端コースが行っているワークショップ形式の授業について紹介してきましたが、今回は2学期開始とともに2週にわけて行った『写真のワークショップ』について報告します。

 先週の1回目では、まずはカメラを持って街に出ることからはじめました。といっても、携帯電話にカメラがついている現在では、カメラを携帯しているという状態も、街の中で何か気になったものを撮影するという行為も、きわめて当たり前のことになっています。むしろ生徒にとっては、そんな当たり前のことを言われても何をしていいかわからない、写真そのものが作品になるということがどういうことなのかよくわからないといった反応が多かったように見受けられました。しかし、おそらくそれは写真に限ったことではなく、「作品」をつくるということの最初にある自然な疑問だと思います。そのような消化不良な疑問を抱えつつも、シャッターを切ればイメージが獲得できてしまうのが現在のカメラ技術です。それぞれ新宿近辺で手に入れてきたイメージをスライドで上映しながら、どんなことを考えながら撮影したのかをプレゼンテーションしてもらいました。

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自分の「霊感」を頼りにして撮影する人や、あるものがなにか別のものに見えることを撮影するひと、街の中で拾ったモノをモチーフにしてポートレイトを撮る人など、それぞれに異なるアプローチの仕方がありました。見ていて発見だったのは、短時間の撮影だったこともあって、別の人が自分とほとんど同じモノや場所を撮影しているというようなことが起こるのですが、プレゼンを聞いてみると、人によってそこに何を見ようとしているのかが違っているというような場面があることでした。

ここまでが前半のセクションで、後半は前半撮ったものをセレクトするなり、また新たに撮影に行くなりして、<枚数制限は設けないけれども、最終的に「ここからここまで」を決定して「1つ」のものとして提出すること>を課題としました。

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それぞれ午前の制作からまた新しい展開を模索していました。そこで午後の講評では、最初は作者のプレゼンをなしにして、まずは他の生徒が「これはどんなことが写っている写真なのか」を自由に考えて発言するかたちにしました。

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その後こちらから作者に質問しながら、徐々にどんなことを撮ろうとしたのかを聞いていきました。かといって、ここでは答え合わせのようなことをしているわけではありません。当たり前のことですが「答え」のようなものがはっきりとあるわけではないからです。それよりもここで大切なのは、ここを見てほしいと思っている要素に対して「背景」だと思っているような要素が、はじめてその写真と出会う人にとってはむしろ気になったり目がいったりというようなことが起こることです。自分が撮ったものの中で見えていなかったものが見えるようになる経験の中にも、今後の制作のヒントを見つけられるかもしれません。

 

さて、1回目のレポートが長くなってしまいましたが、ここから2回目のレポートです。

ご存知の人も多いと思いますが、先端の入試では事前に自分の制作をファイルにまとめて紹介する「ポートフォリオ」の提出があります。先端の教授の先生方は、このポートフォリオにまとめられた写真や文章等で受験生のこれまでの制作をはじめて見ることになります。するとやはり作品そのものを見せることができるのは写真ということになります。

以前のブログで『首像のワークショップ』を紹介した際に、積極的に自分の彫刻作品を自分で写真に撮ったメダルド・ロッソとコンスタンティン・ブランクーシという2人の彫刻家を紹介しました。(興味のある人は先端科の過去の投稿「先端芸術表現科のワークショップ part1」を参照してみてください。)彼らの自作の写真がそれ自体見るべき強度を持っているのは、その作品が最も豊かに見える見え方が撮影されているからかもしれません。そのような写真は、作者は作者であると同時に、その作品にとってひとりめの鑑賞者であることをあらためて実感させてくれるものがあります。

ということで、写真のワークショップ2回目は、新宿を飛び出して上野の東京国立博物館に撮影に行きました。展示物や空間に対して自分が興味をもったポイントを、どのように撮影できるかの実践編です。

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初トーハクの生徒も多く、展示物はもちろん、それがどのように展示されているのかにまで興味が拡がっていく様子で、普段教室で作品をつくったり見せたりしていると気がつかないような部分をあらためて確認した人もいたかもしれません。

 

先端科では、昨年度から始まった二次の総合実技試験の実践的な対策と並行して、このように毎回違ったアプローチで、個人の作品制作にフィードバックがあるようなワークショップも行っています。また機会があれば他の授業も紹介したいと思います。

 

日本画科- 2学期開始&夏期デモスト&雑記?

日本画科講師の金子です。

 

秋色次第に濃く、朝夕はずいぶん涼しくなってきました。

 

9月は別名、長月(ながつき)。

この旧暦の由来は、「夜長月(よながつき)」の略であるとする説が最も有力だそうですが、説は多岐に渡るそうです。

昨日は、台風一過で大変な被害に遭った地域も多くありました。各地域の状況が気にかかるところではありますが、その雨が多く降る時季であることから「長雨月(ながめつき)」からとする説もあるようです。何れにせよ、由来の背景には日本の自然風土が連想されますね。

!cid_955C4650-2DF8-4B13-BDDE-4C155C062DE6←台風が過ぎた後の夕焼け。

 

― いよいよ、今月5日より二学期が始まりました。

9日~14日までは、日本画科二学期始めコンクールでした。もちろんこの間の指導はありません。昼間部はデッサン(鉛筆素描)、着彩(着色写生)、構成の3課題。夜間部はデッサン(鉛筆素描)課題。デッサン(鉛筆素描)は昼間部と夜間部の合同採点でした。

尚、今回は、講習会終了後から二学期までの休みの間、昼間部生に対し自宅課題「自画像」をコンクール形式で課し、その講評も行いました。日本画科では、Lサイズのクロッキー帳を用いた “一カ月一冊クロッキー”を全員行っていますが、その成果が一人一人形として表れるようになってきたと感じられました。

1←夜間部のデッサン(鉛筆素描)課題。石膏像はモリエール。

 

また、今回、夏期講習会を経て、特に夜間部生個々の意識の変化を強く感じられるコンクールだったと思います。石膏像はモリエールでしたが、全員が初見だったにも関わらず、その完成度たるやそれぞれの中での最高の一枚を提示することが出来ました。そして、それぞれの絵の成長もさることながら、講評中の眼差し、メモを取る態度、講評後の質問など制作に臨む姿勢や取り組み方が受験生らしくなってきたと思います。この良い状態を保ちながら一歩一歩前に進んでいってほしいと願っています。

2←描き出しの前の木炭紙大サイズでのクロッキーの様子。クロッキー力の向上は、日本画科での短期目標の一つです。

 

― その夏期講習会。今年の夏期講習会において、今春合格した東京藝大生3名(デッサン1名、デッサン2名)にデモンストレーションを行ってもらいました。彼らには集中講義や藝祭準備等の多忙な最中、頑張っていただきました。

3←Kさんの作品。

4←Tさんの作品。

 

今月は、講師がデモンストレーション〈着彩写生〉を行う予定です。

二学期ではデッサン課題、着彩課題の通常課題のほか、面談による個人指導、校外授業、大作着彩、一人一卓課題、私大対策、さらにはAO入試対策などの課題を準備しています。さらに、基礎科講師を招いた連係的、体系的な指導を目的としたカリキュラムを組み入れ、実技指導の充実を図っていきます。

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― 最後に。

10月には「全国公開実力コンクール」があります。今年度は10月13日と14日。課題は「着彩写生」です。是非奮ってご参加下さい!

 

新美日本画科では全受験生としっかり向き合うことを大切にしています。日本画科に興味ある受験生がいらっしゃいましたら是非見学にいらしてください。

尚、今年度の日本画科の講師は、社会人講師3名、現役東京藝大生の学生講師3名、私大担当講師(通信科兼任)1名の構成です。その他、基礎科日本画担当講師との連係も図っています。日本画科受験についてご質問があれば、これら講師がお答えします。お気軽にお尋ね下さい。