カテゴリー別アーカイブ: 油絵科


明日のギャラリートーク

こんにちは、全科総合部です。
現在、20日まで新美ギャラリーにおいて「渡辺護展」を
開催しています。

今回は、映像などの媒体を通して人間の知覚に訴えかける作品を展示してくれています。

プロジェクターで投影されているノイズのような動きが、鑑賞者の足音に反応するのにもおどろきましたが、他の作品では、モニターの表面に2つのファンが回っています。思いっきり画面を遮っています。
鑑賞者が近づくと・・・・。

明日、新美ギャラリーで16:30より、作家によるギャラリートークがあります。
ゲストに映像ディレクターの宮川貴光さんをお招きして対談をしてくれます。
宮川さんは、藤元明さんというアーティストなどと作品を作っていて、美術と映像の両方で作品づくりをしているということで、今回の渡辺さんの作品の一つのテーマである「境界」という部分で色々話していただけるのではないでしょうか。

興味のある方は、是非お越しください。損はしません。
通りすがりの新美生の方、少し早めに登校して、トークを楽しんでみてはいかがでしょうか?
また、講評会の終わった昼間部生の方々も、帰る前に新しい美術の一片を覗いてみてください。

よろしくおねがいします。


画家の王、ルーベンス真の実力

こんにちは。油絵科の関口です。
西洋美術館でルーベンス展をやっていますが、皆さんはご覧になりましたか?先日僕も見てきました。ただ今回は展覧会とはちょっと離れたところのお話が中心になります。

ルーベンスは絵の実力もさることながら、非常に多才な人物でした。人文主義の学者で美術品収集家。7ヶ国語を自由に話し、外交官も務めたそうです。凄いですね。
この作品は「フランダースの犬」でネロがずっと見たがっていたルーベンスの作品。これを見たい人はネロの様にアントウェルペン大聖堂まで行かなくてはなりません。

当時ルーベンスの実力はヨーロッパ中に知れ渡り、他国からの注文も殺到しました。王族や貴族からも大人気だったんです。作品は彼がお頭を務める工房で制作し、その作品はヨーロッパ中に収蔵されています。「ルーベンス作」となっている作品はかなりの数に上りますが、実際のところはほとんどがお弟子さんとの合作です。まずは下の絵を見比べてみてください。


美術館に収蔵されると、どちらも「巨匠ルーベンスの作品」ということになりますが、実際は左がルーベンスのオリジナル。右はお弟子さんとの合作です。違いがわかりますか?ルーベンス自身が一人で描いた作品は、殆どが小さな板切れ。それを使って「今回〇〇国王から注文を受けた絵は、こんな風に仕上げるから、お前たちはこの下絵に則って、大体のところを描いておく様に」と、お弟子さんに指示を出す訳です。
実際に収める作品は、宮廷や貴族の豪邸に入る為、高さが数メートルにもなる大きな作品…ということが殆どです。お弟子さんを何人も雇って、殆どの作業を彼らに任せてしまいます。お弟子さんもそれなりに優秀な人たちを雇っているので、絵を描いていない人には「巨匠ルーベンスの作品」として享受したと思われます。


一見良くできているんですけどね…。これもお弟子さんとの合作と思われます。

25年ほど前、ヨーロッパに旅行に行ったある芸大生が「どこの美術館にもルーベンスのデカイ作品がこれでもかっ!てほど飾られててさ、もうお腹いっぱいで、見たくないな〜」と言っていました。まあ、わかりますけどね…。お弟子さんの作品を沢山見せられたら、そりゃそう思いますよ。

ここだけのお話ですが、ルーベンスの真筆を簡単に見分ける方法をお教えしましょう。
①小さな作品であること。(大抵は10号以内)
②高い絵具を使っていないこと。(当時の絵具は鮮やかな色が高い絵具です)
③意外とざっくりと描いていること。
④絵に沢山人物がいてもゴチャゴチャ見えないこと。
⑤板に描かれていること。(例外はありますが、ルーベンスは板好きです)
⑥画面全体に刷毛目が残っていること。
⑦自分の家族を描いていること。


⑥に書いた刷毛目がわかりやすい例。下塗り(インプリマトゥーラ)の刷毛目ををわざと残すのがルーベンスの大きな特徴。影のところに残っている場合が多いです。


これぞルーベンスの真骨頂。さすが画家の王!ムチャクチャ巧いです。


ナイフの魅力②(技術編)

こんにちは。油絵科の関口です。
前回に引き続き、ペインティングナイフについて書こうと思います。今回は技術編です。

まずはナイフ選びのポイントから。
①刃の長さ
ナイフの長さは平らにできる長さと関係があります。
ナイフの大きさを考えるときに、水色の部分で考えがちですが、実は①の赤い矢印で表したところが大切になります。(理由は後述します)

②幅
ナイフの幅の広さは絵具の量と関係してきます。この幅が広ければ広いほど、たくさん絵具を乗せることが可能になります。

③刃の終わり方に角があるかどうか
ナイフを選ぶ時に、ある意味大きさ以上に大切なのが、刃の終わりに角があるのか、それとも丸くなっているのか?という事です。角のあるナイフは、どんなに頑張っても筋が付いてしまうので、ナイフを使って平らに絵具を乗せたいという時には不向きです。
特殊な使い方をする人は別ですが、僕がお勧めするのは角の丸いタイプです。

さて、ナイフを吟味して手に入れたら、今度は使い方です。ナイフは筆よりも表現の幅を作り辛いという事もあり、慣れないと単調になりやすい危険な道具。文字通り「諸刃の剣」と化します。
そこで上手に使いこなすコツとして『ナイフを画面に当てる角度』に意識を持たなくてはいけません。

例えば、絵具を平らに乗せたい時には、Aの様にナイフをキャンバスに対して少し傾けて使うと上手くいきます。比較的薄く均一に絵具を乗せることが可能になります。

なるべく均一な力とスピードで、一気にやると綺麗に絵具が乗せることが可能になります。これは少し練習をすれば簡単にマスターできるでしょう。


反対に少し表情をつけて乗せたい時にはBの様にナイフを画面に対して平行に使うと、ムラを作ることが容易になります。

一見簡単そうに見えますが、綺麗に作るにはちょっとコツがいりますので、こちらはそれなりに練習が必要になります。

絵にちょっとしたアクセントが必要な時、ナイフは意外と効果的です。全ての人に必要な道具ではありませんが、色々と研究してみることをお勧めします。それでは今日はこの辺で。


2018全科合同コンクール

こにちは、全科総合部です。

只今、ご存知のように新美のギャラリーでは「全科合同コンクール」展示が行われています。

「わたし自身」を描きなさい、という課題で、新宿美術学院の学生たちが熱意を込めて描かれました。
今回は、その頂点を展示しております。

栄えある第一位は!!

おめでとうございます!!
素晴らしいデッサンですね。さわやかな光や空気を私は感じます!
同時に、工芸科主任高澤賞も受賞しています。

続いて第二位は!!

おめでとうございます!
画像がだいぶ明るくなってしまいました。(作者の方に申し訳ありません)
本物は、もっと良いです。現場に観に来れば一目瞭然!!
3位以降も、後日発表していければと思います。
1位、2位とも違う良さがあるデッサンです。楽しみにしてください!

展示は、予定より延長して今週末まで行っています。
まだ観られていない方は、ぜひこの機会に学生たちの成果を観に来ていただけると喜びます!!


ナイフの魅力

こんにちは。油絵科の関口です。
油絵科の皆さんなら「ナイフ」と言えば刃物ではなく、真っ先に思いつくのはペインティングナイフになるかと思います。きっと一度くらいは使った事はありますよね?え…?全部筆で描いていて、一度も使っと事がない?それはそれで珍しいタイプかもしれませんが、実は正統派です。というのも、油絵でペインティングナイフが一般的に使われる様になったのは、近代に入ってからです。古典絵画の大半は筆のみで描かれています。
しかし、ナイフは筆では得られないタッチと、極端な厚塗りも可能で、下の絵具が乾く前にドンドン重ねられるのも魅力です。
今日は描画材としてのペインティングナイフに焦点を当てて行きたいと思います。

ルネサンス初期に発明された油絵具ですが、当時の描画材は専ら筆になります。油絵が発明される前からあったテンペラやフレスコも筆でのみ描かれており、新しく開発された油絵具も筆で描くという行為が踏襲されました。
では、ペインティングナイフを最初に使った画家は誰でしょう?
僕は恐らくレンブラントではないか?と思っています。この「ユダヤの花嫁」という作品では、身篭った妻のお腹に手を当てる夫の腕、洋服部分にヘラの様なもので絵具が乗せているのが分かります。この時代に金属製のペインティングナイフというものは無かった筈なので、何を使ったか?までは分かりません。
同時代の巨匠であるルーベンスやベラスケスは、ナイフを使って描いた絵は一枚も残していません。レンブラントが独自に開発した技法である可能性が高いのです。レンブラントは肖像画の注文をたくさん受けていましたが、まず自分の顔=自画像で色んな実験をしていた、と言われています。

例えばこの自画像では、筆の持ち手である柄の部分で引っ掻いて髪の毛を表現しています。この技法は後に違う作品でも使われる様になりますが、それまでの絵画の歴史の中では「異端」の技法です。

近代になるとクールベ、ドガ、クレー、モロー、ルオーあたりもナイフを使って描いた作品が散見されます。マティスは絵の具を削り取る道具として使っているのをよく見かけます。

クールべ

第二次大戦後もデ・クーニング、フォートリエ、タピエス、ド・スタールなど様々な作家がナイフを使って魅力的な作品を作っています。

ド・スタール


タピエス

油絵具という物質感の強い絵の具を強調する描画材として、ナイフは大きく貢献してきました。機会があれば、技術的な側面からもナイフの事を語ってみたいと思います。

 

あと私事になりますが、10月17日〜11月8日まで銀座並木通りギャラリーで個展を開催することになりました。JR有楽町駅、地下鉄銀座駅、銀座一丁目駅から歩いても5〜6分の場所にあります。お時間のある方は是非お立ち寄りください。ちなみに土曜日は、ギャラリートークのある27日のみ開廊していますが、他の土曜日はお休みです。日曜と祝日もお休みです。お間違えのないよう、お願い致します。

http://namikidori-gallery.com