日別アーカイブ: 2018年8月12日


藤田嗣治について(下地編)

こんにちは。油絵科の関口です。台風が去って、また暑さが戻ってきましたね。そして次々と台風が発生しているようですが、皆さんも体調を壊したり夏バテしたりしないように、しっかりご飯を食べましょう!

さて先日、空き時間を利用して東京都美術館で開催されいる「没後50年 藤田嗣治展」を見てきました。今日はそのレポートです。

藤田嗣治はエコール・ド・パリ唯一の日本人画家で、おかっぱ頭、丸眼鏡、チョビ髭という出で立ちが印象的ですね。え?僕が藤田に似てるって?よく言われるんですが、別に真似てる訳ではありませんよ。チョビ髭だって生やしてないでしょ?

今回の展示では、初期の頃から晩年まで網羅しており、初来日の作品も多数ありました。非常に見応えのある展覧会だったと思います。
初期の作品では、東京美術学校時代からフランス留学し、キュビズムや当時の美術界の影響を受けた作品から風景画や静物画まで展示されています。単身フランスに渡り、見るもの全てが新鮮で、それまで日本で勉強してきた美術が、ひどく時代遅れである事を実感していたはずです。サインもフランス流にFoujitaとし、貪欲に色んなものを吸収しようともがいている姿が目に浮かびました。
初期の風景。有名になる前の絵なので、スタイルはかなり異なりますが、味わい深くて、なかなか良い作品です。本物を見て思いましたが、実は黒の使い方が上手いんです。

しかし、日本人である藤田がその名を轟かせたのは「乳白色」と称される下地に、細い線描で描いた、まるで日本画の様な作品でした。藤田はどの様に下地を作って、どの様に描いたのか?は絵描き仲間にも秘密にしていた様です。そのミステリアスさと変わった風貌も手伝って、一気にブレークする事になりました。

最近の研究では、藤田の乳白色の下地の正体が少しずつ分かってきました。体質顔料である炭酸カルシウムを油絵具のシルバーホワイトと混ぜて画面に塗布していたようです。炭酸カルシウムは油と混ざると若干黄色くなる傾向にあり、その分量を調整して乳白色を作っていたようです。そして仕上げにベビーパウダーを使って表面に浮いた油分を取り払っていたらしいのです。


ここに写真家の土門拳が、藤田のアトリエで撮った写真があります。彼は当時唯一制作の現場に立ち会うことが許された写真家と言われています。写真にはベビーパウダーが写っているのですが、藤田は肌が弱く、その為に用いられていた…と長年信じられてきたそうです。しかし近年絵の修復の際に画面からタルク(ベビーパウダー)が検出され、ベビーパウダーを使っていた事が判明しました。
写真に写っているのは、和光堂のシッカロール。昭和を感じるデザインです。

通常は、油性下地の上に水性の墨汁で描く事は出来ません。ベビーパウダーとは意外な材料ですが、油性下地に墨汁を使う事を可能にした、魔法の粉なのです。
さて、まだまだ書きたい事はありますが、長くなりそうなので、今日はこの辺で…。今度は藤田の線の秘密に迫ってみたいと思います。乞うご期待下さい。