日別アーカイブ: 2018年6月3日

人物表現と巨匠達

こんにちは。油絵科の関口です。

6月は昼間部も夜間部も人物課題が入っていますね。人物は静物と比べると色々と難しいところが多く、それなりに力がある人でも失敗する確率が高い課題です。形態が複雑な上、生身の人間はじっとしてもくれません。生きてるんですから、当然感情だってあります。そんな事を踏まえながら絵を描く訳ですから、上手く描けないのは、ある意味当然なんです。

そんな受験生の皆さんにお勧めしているのは、デッサンの模写です。特に名だたる巨匠達のデッサンを模写する事は、とても勉強になると思いますよ。

ミケランジェロ
このデッサンはシスティーナ礼拝堂天井画の為のものです。ミケランジェロ位になれば人体全体のフォルムは当然把握していたと思いますが、格パーツのディテールの一つひとつを確認するように描いているのが分かります。

上のデッサンを元に描いたと思われるフレスコ画(壁画)。

フレスコは一気に描き上げなくてはならないという制約がありますから、描く時に迷いを残したくなかったのかもしれません。巨大な壁画であり、当然足場が組んであるので、下がって見ることも難しかったでしょう。にもかかわらずこのクオリティー。レオナルドと並んで評されるルネサンスの巨人です。

ルーベンス

この人のデッサンは正しく達人の領域。自身の制作の為に描いたものも当然ありますが、多くはルーベンス工房で働くお弟子さん達に渡して、途中まで絵を描いてもらう為のものと思われます。(メインの仕上げはルーベンス自身が行っていた筈です)絵画空間の把握や強弱の的確さにおいて、この人の右に出るものはいないのではないでしょうか?異素材を組み合わせているにも拘らず、全く浮くこともなく、見事に空間の中に収まっています。

こちらも上のデッサンを元に描いたと思われる油絵。

デッサンと比べると、かなり変更も加えられているので、ルーベンス自身がほとんど描いている可能性もあります。気合が入った中期の傑作です。(本物は3枚組の祭壇画で、両脇に一枚ずつ半分の大きさの絵があります)

アングル
顔はまるで精密機械の様な正確さで、しっかり丁寧に描写しています。(このデッサンはアングルにしては顔の表情がちょっと硬いかな?でもきっとモデルさんそっくりなんでしょうね…)顔とは対照的に、服には遊びの線を用いているにも拘らず、ゴージャスな雰囲気を捉えています。この対比がアングルのデッサンの真骨頂とも言えます。この辺が油絵では決して見ることの出来ない、アングルの隠れた一面です。

シーレ
力強くシンプルな線を用い、形は大胆にデフォルメしながら描いています。クセの強さはありますが、それも含めてシーレの魅力です。受験生なら、誰しも一度はシーレの魅力に惹かれて虜になる…とも言われています。少し絵を勉強すれば見えてくる、分かりやすい上手さがその要因と思われます。

人物は奥が深いので、焦ることなく、じっくりと取り組んで勉強して行きましょう!