月別アーカイブ: 2018年5月

彫刻科 近況

彫刻科昼間部講師の氷室です。
早いもので、5月も後半ですね!
6月を乗り切るとすぐに夏期講習が目前です
この時期には、積極的に方法探しや道具選びにも自分なりに研究していって欲しいですね!

彫刻家の舟越保武さんは、本の中で
「私は、毎日デッサンをしているのだが、しょっ中同じ様な失敗を重ねている。
横道に外れる時と同じ様に、はじめから細部にこだわると、全体の形が壊れてしまう。
いくら細部を描きこんでも画面全体の幹を忘れた細部は、かえってぶち壊しになる。
樹木を描くにしても、幹がしっかりしていなければならない。小枝や葉がなければ樹にはならない。」
と、デッサンについて書かれています。あの有名な作家さんであっても、みなさんが今、体感し考えていることと同じ事を考えているんですよね。
彫刻家においては、特に切っても切れないテーマだと思います。
だからこそ今の基礎が大切なんです!

さて、ここから最近の秀作を紹介します!


春期講習から取り組んでいたラオコーンの模刻です。私は初めてラオコーンの模刻を見ました!
量も大きく、動きの激しい像を模刻するのは難しかったと思いますが。作者は真摯に制作に取り組んでいました!その結果がどれほどの自信に繋がることか、感心させられます!
心棒の作り方から模索し、大きく粘土を扱える経験は、今後にも活きてくることは間違いないですね!


自主的に取り組んだ自刻像です!骨格から意識し、人間であることを問う作業。
鏡で自分を見る作業では、3次元的に形を捉える事が難しいので、思っている以上に後頭部側を意識せねばなりません。シンプルに学ぶ事が多い、この時期ならではの自刻像は非常に魅力的な作品でもあります!

ここからの3枚は自画像です。
こちらへ向けられる眼差し、洋服の色までも伝わる様な取り巻く空気。なんとも言えず、内側で無意識に感じていることが表現されてしまう。
彫刻とは何なのか、特有の何かを感じる3枚が揃いました!


頭部の印象はもう少し構造的に強さが欲しいですが、動きやねじれ、形がとても丁寧に描かれています。アムールの特徴に良く迫れた1枚です!


こちらは、現役生のデッサンです!
視点もあり、ここまでフォーンを表現出来る実力!凄いです!炭がピタット動きに張り付いており、綺麗ですね。

今回はここまでです。
上手く自分のリズムを見つけて、新しい事を探し発見する1学期にしてください!!

展示のお知らせです。
7月2日から14日まで いりや画廊にてグループ展が開催されます。
もし良かったら足を運んで頂けると嬉しいです。
http://galleryiriya.com/


どうぞ宜しくお願い致します。

通信教育:オーキャンMAP2018作りました

こんにちは、通信教育の講師の土屋です。

先日6月タームの課題を発送しました。

その際に、オマケ?として(だいたい)全国美術系大学のオープンキャンパスMAPを同封しました。

オモテはちょっとした路線図付きの主要美術大学、

ウラは東北から沖縄までの各校オープンキャンパス日程をまとめてあります。

念のため、出かける前に、各大学の発信している最新情報をチェックしてくださいね。

ターナーについて思うこと

こんにちは。油絵科の関口です。
今年の5月は気温の乱高下が激しく、体調を壊した人も多いのではないでしょうか?

さて今回は新宿の損保ジャパンで行われているターナー展についてお話しようと思います。僕もつい先日展覧会を見てきました。今回の展示では水彩を中心という構成でしたが、ターナーは水彩の扱いがとても上手なので、興味のある人は必見です。

ターナーはイギリスを代表する風景画の巨匠です。
イギリスはヨーロッパの大国の1つですが、大陸から切り離されているせいか、ルネサンス、バロック、ロココという美術界の大きな流れに取り残されてきた様な印象があります。
そんな中で、ターナーは彗星の如く現れ、19世紀イギリスロマン主義の画家として活躍しました。印象派の先駆けと言っても良いような作品を数多く残しています。
今でもイギリスは国立の美術館がターナー賞というものを設立し、50歳以下のイギリスで活躍する美術作家を表彰しています。イギリス人にとってターナーは特別な存在なんでしょうね。

このターナーも、初期の頃はかなり緻密に描いています。10代後半には既にかなりの力を身につけていた様子でした。近くでよく見ると、鉛筆ではなく、薄い茶色いインクの様なもので下描きをして、その上に水彩を使って描いているのが分かりました。
初期の頃に描かれた下描きの茶色は、セピア(イカ墨)のインクか、没食子(もっしょくし)と言われる、ブナ科の植物に出来たコブ(蜂が木の若芽に卵を産み付ける事でできる)から取れた汁を化学反応させて作られたインクだと思われます。どちらも劣化や退色などで保存や扱いが難しく、現代では殆ど描画材として使われていません。

それから、よく見ると初期の頃と晩年では、青の色味が違います。これは1824年に人工ウルトラマリンが発見された事に起因するのかもしれません。天然のラピスラズリは高価だったので、丁度この頃に安価な人工ウルトラマリンが絵具に採用されたのではないか?と僕は思っています。

1817年の作品

1827?28年の作品

あともう一つ。僕が作品を見て考えたのは、日本でターナーの人気が高い理由です。水彩画が多く、親しみやすいというのもありますが、作品の中に空気遠近法が多用されているのが原因ではないか?と思いました。湿度が高い日本人の感性と、どこかシンクロする部分があるのかもしれませんね。
これから先、鬱陶しい梅雨空になった時に、ふとターナーの事を思い出してみるのも一興かと思います。それでは今日はこの辺で。

追記:5月25日(金)?6月3日(日)
新宿のギャラリー絵夢さんでグループ展を行います。出品は2点の予定ですが、お時間のある方は是非お越しください。
http://www.moliere.co.jp/galerie/

先端芸術表現科近況

こんにちは。先端芸術表現科です。

先週の日曜日は、「身体」について考える課題を行いました。
まず午前中は、「なるべくゆっくりと歩く」、「左肘に意識を集中して歩く」といったように、歩くことを日常とは違う形で行ったり、自分の体を丸めて入れるダンボールの箱をつくり、それを新美内のどこかに設置して、時間を過ごしてもらうということを皆で行いながら、その都度どのように感じたか、考えたか、ということをディスカッションしました。

後半では、身体と場所をテーマに、20分以内でパフォーマンス作品を制作。
常に自分とともにあって生活しているメディアともいえる身体を、もう一度考えるための日曜日でした。
また、Out of Actions: Between Performance and the Object, 1949-1979という、現代美術における、広義のパフォーマンスアートを扱った展覧会のカタログを参照しながら、これまでパフォーマンスや行為、身体というものが、どのように扱われてきたのかを話しながら、自分たちが行ったパフォーマンスについて捉え直してもらいました。

今週の日曜日は、「任意のメディア(複数でもよい)を選び、一分間の作品を作りなさい」というもの。メディア/メディウムというのが、これまでどのように問題化されてきたのかを紹介した上で、何をメディアとして選択し、かつ1分という時間軸をもった作品として制作するのか、ということを試してもらいました。

朗読、iphoneとコンビニのプリンター、映像、アニメーション、ウェブサイトなどが、実際の制作においてはメディアとして規定され、各々の表現のなかにあらわれることになりました。

 

授業では紹介しきれなかったですが、UbuWebというところでは、現代美術、実験音楽、コンセプチュアル・ライティングなどなどの多くの作品や資料を見ることができます(英語です)。興味のある作家がいたら、こちらのサイトで調べてみるのもよいのではないでしょうか。

来週は、いよいよ個人制作の第一回目の講評会となります。
先端芸術表現科に興味のある方は、ぜひ見学にもいらしてください。講評は13時からとなります。

またその次の週からは、2種類の2週間課題というのを行います。
こちらも、情報はまたお知らせいたします。

先端芸術表現科でした。