日別アーカイブ: 2017年10月15日

モンドリアン② 試行錯誤

こんにちは。油絵科の関口です。ここのところ急にグッと寒くなりましたね。皆さんも風邪をひかない様に気を付けて下さいね。
さて、前回に引き続き、今日もモンドリアンについて書こうと思います。彼が抽象への道を歩む前、試行錯誤を繰り返していた様子を見ていきましょう。


初期にはこんな素敵なお花も沢山描いています。かなりの数を描いていますが、これがまたシビれるくらい上手いんですよね…。ちなみに、このお花シリーズだけを集めた画集もあるようです。
実は、後に完全な抽象の作品を発表する傍ら、お金を稼ぐ為にこういう一般人にも分かりやすいお花の絵を売っていた…という逸話も残っています。

あと数は少ないですが、静物にも着手しています。
1911年 ショウガ壺のある静物
この作品は、僕が受験生の時に幸運にも東京で本物を見る事が出来ました。「モチーフをあまり描いていないのに、空間がスカッと抜けていて、凄いな~」と感動したのを覚えています。


1912年 ショウガ壺のある静物
一年後に同じモチーフを描いたこの作品では、空間を浅く設定して、描写を更に抑制しているのが分かります。この作品も上の作品と同じ展覧会で展示してありましたので、二枚を比べて見ることができました。図版では中々伝わらないと思いますが、こだわりのある塗りが印象的でした。この辺りから画面の中にある具体的な形を排除し、完全な抽象に向かう事になります。


1913年の作品

1917年の作品
そしてこの頃に制作された作品では、曲線も徐々に姿を消し、最後は垂直水平の線のみになりました。画面の外側に向かって丸くフェードアウトしていくのが特徴で、もしかするとキュビスムの影響が残っているのかもしれませんね。


※ピカソやブラックの作品には、分析的キュビスム(左)の頃から外側に向かって弱くなる作品が多く存在します。その後、総合的キュビスム(右)の頃になると、楕円の画面に描いた作品も多く見受けられる様になります。2枚の図版はいずれもピカソの作品。

その後もモンドリアンは様々な実験を繰り返しながら、抽象への道へ突き進んで行きます。しかし、そこは当時誰も先へ進んだことのない人類未踏の地。しかも一度進んだら決して後に引き返す事のできない険しい一本道でした。


1917年の作品


1920年の作品


1921年の作品

次回は、モンドリアンが「抽象」という未知の世界を一心不乱に突き進んでいく様子を書きたいと思います。