日別アーカイブ: 2016年4月25日

彫刻科からフィギュアの原型師に  榎本さんインタビュー

彫刻科の小川原です。今回は新美彫刻科から現役で芸大に合格し、卒業後フィギュアの原型師として仕事をしている榎本さんにインタビューを行いました。予備校から大学に入学し、現在の仕事に
至るまで、何が重要になってくるのか、是非参考にして下さい。

Q.彫刻科を受験しようと思った理由は何ですか?

高校の美術科で絵画やデザイン、工芸など様々な技術を学ぶ中で彫刻で立体作品を作ることが1番自分に向いていると感じたためです。また、イタリアへ行き日常的に彫刻作品を見ることができる環境に感動したことも、彫刻科を受験する大きなきっかけとなりました。

Q.芸大彫刻科を卒業後、フィギュアの原型を制作する会社に就職されましたが、大学に入学する前からこの仕事に興味がありましたか?また、いつ頃からこの仕事に就くことを考え始めましたか?

もともと漫画やアニメに興味があり、高校時代からフィギュアを作りたいという気持ちはありましたが、道具も技法も分からずその時は諦めてしまいました。 大学へ進学し以前よりも造形力もつき、卒業したらクリエイティブな仕事に就きたいと考えるようになった頃、彫刻科を卒業した先輩や同級生の塚本さんがフィギュアの原型をつくっていると聞き、再びフィギュアをつくりたいという気持ちを強く持つようになりました。

Q.今の仕事の中で、予備校で学んだことが生かされていることはありますか?

ほとんどが予備校で学んだことの応用だと思っています。基本的なデッサン力や造形力はもちろん、原型を見てカタチの狂いを自分で発見し良い方向に直していく力など予備校と共通する部分は多くあると思います。

Q.予備校時代に努力したことや、苦労したこと、思ったことなど教えてください。また、榎本さんは現役での合格でしたが、予備校時代に努力したことや、苦労したこと、受かるために考えていたことなど、それぞれの思いを聞かせて下さい。

予備校に通っていた頃、私は現役生だったので周りの浪人生のレベルの高いデッサンなどを見て自信を失くしてしまい、受験までにどのようにモチベーションを上げていくかが大変でした。実力を上げて自信をつけるために、講評のたびに講師の方にアドバイスしてもらったこと(自分のデッサンの良いところ、悪いところ)をノートにまとめて、次のデッサンを描くときに同じことを指摘されないよう、自分の悪いところをひとつひとつ無くしていく努力をしました。

Q.芸大の彫刻科に入学して、良かったと思う所は、どんな所ですか?また、どの様な点が具体的に今の仕事に役立っていますか?

同級生や先輩後輩のレベルがとても高いことが芸大の良いところだと思います。また在学中、塑造の課題や作品制作、解剖学の授業などで人体のつくりについて学んだことがフィギュアの原型を作る上でとても役に立っています。
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芸大卒業制作

Q.浪人生時代や大学生の時にはバイトはされていましたか?生活面での工夫などがあれば、教えて下さい

実家から通学するには距離が遠かったので芸大に入ってから一人暮らしをするようにするようになり、生活費をまかなうためにアルバイトをしていました。芸大は学校が開いてる時間が限られているので、できるだけ学校が開いてる時間には作業をし、休日や平日の遅い時間にアルバイトをするようにしていました。

Q.この仕事の内容を詳しく教えて下さい。

フィギュアの商品企画を受け、デザイン画やサイズや納品期限などの規定を守りながら立体におこしていきます。原型を納品した後に工場に送られ複製や塗装をされるので、フィギュアの原型を作るところまでが私たち原型師の仕事です。

Q.この仕事の楽しいところ、大変なところを教えて下さい。

1番の楽しいところは、公式の商品として自分の好きなキャラクターを作れる可能性があることと、自分が原型を担当したフィギュアが商品化し実際にお店で売られているところが見れることだと思います。大変なことはやはり、自分の価値観だけで原型を作れないことです。最終的にクライアントの要望通りに作ることが正解なので何度もクライアントからの修正を聞き、完成に向けて仕上げていきます。

Q.この仕事を目指している人は沢山いると思います。これから受験を考えようと思っている人にアドバイスをお願いします。

漫画やアニメに興味のある人ならフィギュアの原型制作はとても楽しいと思います。実際に仕事は忙しいですが毎日楽しく作っています。しかし仕事という以上クオリティの高いものを作り続けなければいけないので、基本のデッサン力、造形力がとても重要になります。大学やその先のことなど未来のことばかりを考えがちですが、毎日全力で課題に向かい、しっかりと実力をつけていくことが何事にも繋がっていくと思います。予備校は自分の実力をつけるためにうってつけの場所なので、今、たくさんのことを吸収しどんどん前進していくことが大事です。頑張ってください!
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自主制作作品

榎本佑香
2002東京芸術大学入学 現役合格
2006東京芸術大学卒業