月別アーカイブ: 2015年10月

あなたはツルツルがお好き?

こんにちは。油絵科の関口です。
さて、今日のタイトルはキャンバスやパネル等の支持体の話で、決して脱毛エステのお話ではありません(笑)。

新美でも大学でも、生徒からキャンバスの下地をツルツルにしたいんですけど…という話をよく聞きます。その質問にはちゃんと答えますが、本音を言わせてもらえば、僕はあまりお勧めしません。その訳は・・・

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ダ・ヴィンチ作「リッタの聖母」 板に油彩

リッタの聖母
ダ・ヴィンチの作品は、まさにツルツルの代名詞みたいなもの。その完璧なぼかしにはスフマート(煙を意味するイタリア語、fumoから来ている)という特別な名前がついている。

 

僕も学生時代、パネルに自分で白亜地などの下地を施し、ツルツルにした経験があります。完全にピカピカにした下地は、思わず頬ずりをしたくなるほど美しく(笑)、その上に絵を描くのを躊躇ってしまう程です。

僕が当時好んでやっていたのは、炭酸カルシウムにチタニウムホワイトを少量混合し、膠水で混ぜた塗料をヘラや刷毛で塗る、白亜地と言われるものです。それを一度水で濡らして、掌で擦って磨き上げていきました。サンドペーパーで磨いたものよりもツルツルになり、まるで大理石のような半光沢のある、とても美しいものが出来上がります。磨く方法は他にも数種類ありますが、長くなるので今回は割愛します。
完璧な下地が出来た後、いざ絵を描こうとすると、何だか折角綺麗に出来た下地を汚す様な感覚に襲われ、中々描き出す事が出来ません。この感覚は、一度でも下地をちゃんと作った人なら、きっと分かってもらえると思います。

勇気を振り絞って描き始めると、今度は画面がツルツルなので、画面の上を筆が滑る様な感覚に違和感を覚えます。筆跡は激しく残り、作品が完成する頃には、最初に想像していたビジョンなど脆くも崩れ去っています。完璧な下地が出来ればできる程、そのショックの大きさは計り知れないものになってしまいます。

ルネサンスの頃の画家は、白くてツルツルの下地の上に絵を描いていました。イタリアでは石膏地、ドイツやフランドルでは、白亜地が使われています。絵の具は豪快に盛り上げるのではなく、女性がお化粧を施す様に薄く丁寧に扱って行きます。
よく考えれば、そんなストイックで繊細な作業、僕に向いている訳がありません(笑)。

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ヤン・ファン・エイク作「ルッカの聖母」 板に油彩

暗部には透明な絵の具を何回も塗り重ね、重層化された絵の具で次第に厚塗りになって行きます。明部は下地の白を透かせていくところと、白を混ぜた絵の具を不透明に乗せるところを作ります。
受胎告知X線
ダ・ヴィンチの受胎告知(部分)右は同じ絵のX線写真。
以前もこのブログに書きましたが、シルバーホワイトは鉛を主成分にしているので、X線を通しません。白く映っているところがホワイトを足しているところになります。意外と大胆に描いていますね。こんなに大胆に描いていながら、仕上がりが滑らかなのは本当に信じられません。
※ところどころ横に入っている線は、木目と思われます。

今皆さんが描いている支持体はキャンバスなので、下地をツルツルにして描くのには向いていません。白亜地や石膏地は硬くて脆い性質があるので、弾力のあるキャンバスの上に施すと、ひび割れはまず避けられません。下地をツルツルにするには、実は板の方が向いているのです。
キャンバスにはキャンバスの良さがあり、キャンバスの弾力や布の織目を利用して描く方が、効果的で自然な行為だと思っています。

日本画科 進化する現役生

こんにちは、日本画の佐々木です。

最近昼間部のことばかりだったので、久しぶりに夜間部現役生にフォーカス。
早いところでは推薦やAOなど、すでにもう入試が始まってきていて、肌で受験を感じる時期になってきました。
初めての受験に備えて、みんな着々と力をつけています。

一学期から(長い生徒は去年の基礎科から)ずっと見てきて、本当に上手になったよなあとしみじみしていましたが、実際に作品を並べてみて驚きました。

左:一学期 右:夏期講習
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思わず二度見の衝撃です。
もともと光の流れをつかむのが上手な作者ですが、石膏の立体感などの表現が追いつき、より豊かなデッサンになっています。

左:一学期 右:夏期講習
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こちらもなかなかの変わりよう。空間や光を表現するのが苦手な作者でしたが、徐々に掴み始めています。現在は形や見え方などもさらに精度を上げようと努力しています。

現役生は、高校では勉強にテスト、予備校では制作と時間的にも体力的にもかなりのハードスケジュールです。
そんな中で受験にむけて努力する熱意を無駄にしたくない!という思いから、講師たちもついつい指導に熱が入ります。現役だから来年受かればいい?現役でここまでかければ上手?
違うんです。現役生ではなくて、みんな受験生。
学校との兼ね合いも含めて、「今年の受験」にどうやって立ち向かっていくか考えていきたいですよね。
小さいことでも、ひとつづつ。わかるまでこつこつ。
一歩づつすすんでいきましょう!

“くにたち”の1日体験

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国立校です。

2学期も1ヶ月が過ぎ、大学通りも秋の雰囲気が漂い始めています。
高3生は入試に向けて徐々に緊張感が高まってきています。

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さて、これから美大受験の勉強を始める高1、2年生・中学生の皆さん。
国立校では、今週の日曜日に1日体験が行われます。

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◎制作風景DSC_1532

◎講評風景(グループ別)1体/グループ講評2

◎合格者作品展示DSC_1216

道具の使い方からデッサンの基本を1から丁寧に指導してもらえるので、初心者でも安心して受講できます。
また、個別面談では美大の専攻を相談したり入試の内容を説明してもらう事ができます。
デッサン用具も用意してありますので、気軽に参加してください。

公開実力コンクール

こんにちは。
10月の連休に公開実力コンクールを実施しました。
入試を想定した実技模試です。
今回は東京芸大日本画、東京芸大彫刻、武蔵野美大視覚伝達デザイン、工芸工業デザイン、空間演出デザイン、映像でした。
遠方からもふくめ、多数のご参加ありがとうございました!!

入試さながらの緊張感と時間対応に追われ、特に現役生には良い経験になったのではないでしょうか。思うような結果が出なかった方、試験本番までにまだまだ伸びます!(勉強も!)
これからさらに集中力をあげて頑張りましょう!!

10月末から11月にかけて、他の専攻の模試も実施します。
ぜひご参加ください。http://www.art-shinbi.com/contest/index.html

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会場

 

彫刻科 公開コンクール直前!!

こんにちは!彫刻科講師の稲田です。2学期も1ヶ月が過ぎ、はやくも公開コンクールの時期が迫ってきました!
彫刻科の公開コンクール日程は、10月11日(日)の木炭デッサン、10月12日(月・祝日)の塑造の順に開催です。

最近、生徒のみんなを見ていると少し疲れ気味にみえます。毎日制作を頑張ることは大切ですが適度に休むことはもっと大切です!自分の体調を整えて万全の態勢でコンクールに臨みましょう!!

 

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では、今回も優秀な作品を紹介していきましょう!!
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昼間部生の木炭デッサン「ヘルメス」
形の実在感が強く、形態を目で追えるところが最大の魅力です。丁寧な観察と確かな素描力を感じさせます。もう一歩、像を取り巻く空間を感じさせる意識が加わればより高いレベルに到れることでしょう。

 

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昼間部生の木炭デッサン「ジョルジョ」
像の大きさ、印象共によく捉えています。形に対する追い方が荒削りな部分も見られますが、今回はそれがかえって勢いを感じさせるように上手く働いています。像の持っている魅力に迫るという点が作者に日頃から最も持ってほしい視点なのでクールに流さず誠実に形を追いましょう!

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昼間部生の「ブルータス」模刻
高い完成度でブルータスの印象をよく掴んだ力作です。作者には高い塑造力があるのですが、作りこむ段階でついつい見る視野が小さくなっていき形がボコボコすることがあります。それさえ、自分でコントロールすることが出来れば言うことがないのですが。

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昼間部生の「造形構成」素描
プラスチック板とリボンの構成ですが折りたたんだ板をリボンで結ぶ構成も面白く、折りたたむことで出来た空間もスカッと描けています。作者には物を構成している大きな面の意識を強く持ってほしいです。

以上が今回の優秀作品紹介でした!公開コンクールでもみなさんの力作期待しています!!

次に以前ブログで告知があった、保存修復家にして作家の吉水快聞(よしみず かいもん)さんのインタビューが新宿美術学院のホームページのトップ画面にアップされています!!
学生の皆さんには、保存修復??っという人も多いかと思います。彫刻の道の中にもいろんな仕事があるのだと知る良い機会です。是非、目を通してみてください!!

最後に、私事ですが『第10回 アトリエの末裔あるいは未来』という東京藝術大学美術学部彫刻科木彫研究室主催の展覧会に作品を出品します。

【会期】2015年11月20日(金)?29日(日)※23日(月・祝日)開催、24日(火)休    館  10:00?17:00です。

【会場】東京藝術大学 大学美術館陳列館、旧平櫛田中邸

活躍されている先輩方から在学の学生まで、これだけの木彫作品を制作しているメンバーが一同に集まる機会はそうそうありません。時間があれば是非見に行ってみてください!!よろしくお願い致します。

では、今回はこの辺りで!!次回のブログは氷室先生です。宜しくお願いします!