日別アーカイブ: 2015年9月22日

映像科:『Your Body is Yours』

こんにちは、映像科の講師の森田です。
二学期はイベントも盛りだくさんですね。前回告知した公開コンクールは受験に直結したイベントですが、先週行われた「全科合同・秋のデッサン祭」は「祭」というのにふさわしく、授業という日常を飛び越えて、なかなかの盛り上がりでした。
日程の問題もあり映像科からは参加した学生がいなかったのですが(ファイン系/デザイン系を前にして「デッサン祭」という響きにちょっとひるんでしまったのかも…)、審査の方は映像科主任として参加させていただきました。「わたしを描く」という課題へのアプローチの面白さや、それぞれの得意技を活かしたデッサン、デッサンとは言えないくらいにコンセプチュアルな作品など、映像科の実技を制作する上でも参考になることが見えてくると思います。
講師による審査は終わりましたが、webでの投票はまだできるらしいので、ぜひどうぞ!

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さて、そんな中今回は秋のオススメ展覧会情報です。シルバーウィークは新美のイベントが盛りだくさんだったため、先週自主的なシルバーウィークとして大阪の国立国際美術館にヴォルフガング・ティルマンスの『Your Body is Yours』を観に行ってきました。会期は23日までということで、お勧めしたところで今から観に行くことはできないですが…。しかしティルマンスについては映像科の人はもちろん、それ以外の専攻の人もぜひチェックしてみてください。

2012年東京都現代美術館のトーマス・デマンド展や、2013年国立新美術館のアンドレアス・グルスキー展など、ここ数年ドイツの現代写真の大規模な展覧会が開催されていますが、ティルマンスもドイツの出身。ドイツの現代写真というと教科書的には、デュッセルドルフ芸術アカデミー/ベッヒャー夫妻の影響が言われます。デマンドやグルスキーはその系譜として説明することもできると思いますが、ティルマンスの写真は一見するとそういった作品とはまた違った印象を受けます。

ティルマンスの作品の特徴としては、それが「スナップ写真」であること、あるいは「スナップ写真のように見える写真」であることが挙げられます。特に初期の頃の作品では小型のカメラで身近な風景や友人を写したものが多いですが、そうした写真がなぜ作品になるのか?というのは、それ自体が写真について考える上では本質的な問いでもあります。近年の作品では写真プリントそれ自体をオブジェクトとして意識するような作品があったり、複数の写真を重ねてひとつのイメージを構成していたり、さらに今回の展示では、プリントアウトされたテキスト(主にはニュースサイトなどの記事や図版)がインスタレーションの一部として、撮影された写真と(ある意味では同等に)扱われていたりして、全体として「イメージとは何か」ということを考えさせられる作品です。

また写真の展示の仕方も「ティルマンス以前/以降」と言われることがあるくらい、今ではそれほど新しさは感じないですが、サイズの違った写真を壁面にランダムに貼っていく方法、その貼りかたもテープやピンで留めたりなど、一見するととてもラフに思えますが、隣り合った写真同士の関係や、空間全体のレイアウトなど(当たり前ですが)実際は計算されたインスタレーションとして制作されています。今回の展示では10以上の展示室それぞれがかなり明確なテーマによって構成されていて、単に写真を写真として「見る」というよりも「(複数の写真の繋がりを)読む」ような体験ができます。

…と、少々硬めに解説してしまいましたが、実際にその展示を見てみると普通に「かっこいい」とか「写真って面白い」という感想が挙げるのもティルマンスの写真の特徴です。日本では11年ぶりの大規模な展覧会とのことでしたが、さて次はいつでしょう? 興味を持った人は海外まで出かけるか、写真集を眺めつつ気長に待ちましょう。

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図録はこんな感じ。中を開くとタイトル『Your Body is Yours』の文字が。

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