日別アーカイブ: 2015年3月17日

入試→卒制

こんにちはデザイン科の大島です。
芸大デザインの合格者は2名(うち内部生1名)と残念な結果となってしまいました。
1年間この予備校を信じてついてきてくださった学生と保護者の皆様には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。

自分自身は私立の担当といえども、もはや他人事ではなく、この結果をデザイン科講師一同しっかりと受け止めて次年度に繋げなければいけません。

先週末、多摩美術大学グラフィックデザイン学科の卒業制作展に行ってきました。

この3月で多摩グラを卒業する学生は、デッサンが「ふろしきでものを包む両手」、色彩構成が「2匹の蝶とちょうちょうの文字」の年に合格しました。

せっかくなのでその年に新美から合格した人の作品と、卒業制作展にあった作品を合わせてみてみましょう。

まずこれ。

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実物と色がちょっと違っていますが、こんな感じの作品を描いて1浪で合格した学生がいました(彼女はこのあいだまで新美の学生講師でもありました)。
色彩構成のほうは多摩美の参考作品集に掲載されており、それ以降この表現に類似した作品を毎年のように見かけます。じつはそんなに高得点ではないそうですが!(本人談)

彼女の卒業制作はこんな感じでした。

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タイポグラフィ、なんだけど紙のキワが焼かれてたりしてる。ほかにも細い線が描かれてる作品もありました。コンセプトは読みましたが失念しました!詳しくは多摩美の学内展で探し出してみてください!申し訳ない。。。

 

つぎ。

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これは現役で合格した学生です。彼女もまたこのあいだまで新美の講師でした。
彼女は当時、現役生にも関わらず浪人生を上回るほどのデッサン力をもっていました。それに比べると、グラフの色彩構成の方は最後まで安定せず、試験後に本人に作品の出来を聞いたら「2色で描いてしまいました…」「2匹の蝶がわかりにくいです…」と自信なさげにいうので、正直ダメかもな?、と思いました。

しかしデッサンと学科は安定して点数が取れており無事合格。
この色彩構成も結果的には7割程度の点数がついており、大きく足を引っ張ることはありませんでした。そんな彼女の卒業制作はこんな感じでした。

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父の写真のスケッチ。詳しいコンセプトはプライバシーにも関わってきそうなので、詳しくは学内展でキャプションを読んでみて下さい。

デザインというよりかは、個人的な体験が根底にある作品です。つまりアートよりのアプローチです。多摩美のグラフィックの卒展のように、ひたすらにポジティブな作品が並んでいるお祭りのような場にあると「損」な作品ともいえるかもしれませんが、こういうのがあっても良いと思います。

つぎ。

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これまた大胆な作品でしたねー。真似しようとしてもできない。参考作品集には掲載されていませんでしたが、多摩美の説明会で掲示されているのを見ました。なにげに高得点です。

彼はこんな写真の作品を展示していました。
(連作でもっとたくさん並んでいましたが、わたしのカメラではこれが限界でした。全貌は学内展で!)

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この分割された画面を見た瞬間、絶対これだ!と思いましたね。
受験時代から変わらぬこの感性。大切に。

この年は合格者が多かったのでまだまだあるんですが、再現作品が見つからなかったので、とりあえずこのへんで。

番外編。

同じ年、こういう作品を描いて多摩グラに合格した現役生がいました。

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想定にもかかわらずこれだけ大胆なアイデアを本番で描ききるなんて見事ですよね。
とうぜん高得点でした。

しかし彼女は倍率で言えば1番人気であるグラフを辞退して、同じ多摩美の情報デザイン学科に進学しました。もともと情報デザインに進学したいとは聞いていたものの、両方受かったらたぶんグラフに進学するんだろうな、と思っていたので、その事実を聞いたときにはびっくりしました。
(最近では高倍率の学科を蹴ることは珍しいことではなくなりましたが…)

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そして先週のことですが、情報デザイン学科の卒業制作展で彼女はこういう作品を展示していました。

「ぼんやりのとき」という絵本というのか漫画というのか、まあ、とにかく本です。

本としての完成度もさることながら、繊細で私的な感性を大切にした内容は、目立つことはなくとも心に響くものがあり、やはり情報デザイン学科だからでこそ生み出すことができたような気がします。素晴らしい作品です。ぜひ学内展で手にとってみてください。

そしてもう1人、こういう作品を描いて多摩グラに合格した学生もいました。

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(田中一光にこんな曲線の作品があったような気がしなくもない。)

彼女は新美に入学した当初、とある大学の推薦入試を受験するつもりでした。
そして実際、9月頃まではその大学の推薦対策をしていました。
しかしとても感覚が良かったので、推薦入試が終わったあと、多摩美も受験することを勧め、最終的に多摩グラに合格しました。

ポテンシャルを秘めた学生だったので、大学を経てどのように成長していくのか期待していました。けれど、そのうちに大学にあまり来ていないという噂を聞き、ついには中退したという話を聞きました。

それ以来、彼女のことを心配していたのですが、ちょうど卒業制作展に訪れており、タイミングよく話すことができました。

どうやら中退したあとは、興味がある分野のアルバイトを頑張っており、この4月からはその仕事の延長で就職が決まったとのことです。心配するまでもなく立派に成長していました。すごい。安心したと同時に尊敬の念をも抱きます。

というわけでざっくりではありますが、こんな感じで紹介してみました。
こんかい参考作品が見つからなかったり、時間の関係でアニメーションはノーチェックだったので、また学内展などで気になる作品が見つかれば紹介したいと思います。では。